横地聖真

取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

先月、横地聖真と河村勇輝はU-18日本代表として、ジャカルタでのU-18アジア選手権を戦った。オールラウンダーの横地はサイズのないチームで攻守を支え、河村は得意のドライブを駆使する切り込み隊長として、日本に流れを呼び込む役割を担った。結果としてはベスト8でオーストラリアに敗れ、来年のU-19ワールドカップ出場権を得られなかったが、ここで得た経験を次に生かすことが彼らにとっては大事なこととなる。

横地は福岡大学附属大濠、河村は福岡第一と、高校バスケの激戦区である福岡県を代表する強豪校の2年生。アジア選手権を戦うためにインターハイには出場できず、チームはそれぞれ早期敗退している。その雪辱の舞台は年末のウインターカップとなるが、そこに出場できるのは福岡で1校だけ。代表でともに戦った2人は、今度は全国への切符を懸けて対戦することになる。

バスケットボール選手としても、そして一人の人間としても急成長する時期、多感な年代の彼らが何を考えてバスケに打ち込んでいるのか。まずは横地に話を聞いた。

「ウインターカップで大濠の強さを見せ付けたい」

──まずは自己紹介をお願いします。

愛知県の岩成台中出身、福岡大学附属大濠2年の横地聖真です。オールラウンダーなので苦手なプレーはあまりなくて、フィジカルを生かしたドライブとポストプレー、3ポイントシュートが得意です。お父さんがガーナ人で、お母さんが日本人です。弟は中3でバスケをしていて、いずれ敵になると思います(笑)。

──身体能力はガーナ人のお父さん譲り? 両親から受け継いだものは何だと思いますか?

僕はおしゃべりだし独り言も多いんですが、お母さんもおしゃべりだし、お父さんも誰かと電話する時の声がかなりデカいので、そういうところは親譲りなんじゃないかと(笑)。

──ジャカルタでのアジア選手権ではどんな経験ができましたか?

海外の大会に行くと自分はそんなに背が高いわけじゃないのですが、フィジカル面で劣っているとは感じなかったです。でも、海外の選手は止められても思いっ切り来るアグレッシブさがありました。自分も相手がブロックを狙ってくる中でも打ちに行く自信と、そのブロックをかわすフィニッシュのところをもっと勉強しないといけないと感じました。

──アジア選手権のために欠場したインターハイで、福岡大学附属大濠は3回戦で開志国際に敗れました。「日本代表の自分たちがいれば勝っていた」という思いはありますか?

勝てたかもしれないですけど、現状を受け止めるしかないです。インターハイでは負けたけど、ウインターでは代表組も合わさってもっと強いチームになるので、そこで大濠の強さを見せ付けたいです。インターハイに出たいという気持ちは……それよりも、その前の九州大会が悔しかったです。福岡第一との試合で喰らい付いていて離された時に、「自分もここで戦いたい」という気持ちはすごくありました。

代表に決まって九州大会のメンバーから外れたので、上から見ていてもみんな上手くなっているのは分かりました。だから代表でプレーしながらも、チームに戻った時に「こいつらより劣っていたらどうしよう」とか「自分は必要とされるのかな」という不安はありました。今回のインターハイは愛知県での開催だったので、ウチの親も応援に行って、「みんな上手くなってたよ」と連絡が来ました。今のチームにはフォワードが多いので、インターハイは結果が出なかったですが頑張っていたと聞くと、僕ももっと頑張らなきゃいけない、という気持ちになりました。

ウインターカップの予選も近づいています。福岡からは1校しか出られないので、3年生の「最後だから」という強い思いは伝わってきますし、僕たちもそれに乗っからなくちゃいけないです。

横地聖真

「ウインターは最後の大会だし、意地の戦い」

──福岡第一の松崎裕樹選手をライバルと公言しています。

中学校の時からビッグマン(ジュニアエリートアカデミー)で一緒にやっていて、互いにプレースタイルも知っているので、僕も攻めづらいし向こうもやりにくいと思います。大濠に入ってマッチアップするようになって、代表でも一緒、国体でも一緒になるので、一番のライバルですね。福岡第一もインターハイで1回戦負けしたので、福岡県として国体では負けられないです。

──同級生でU-18でもチームメートだった河村選手はどういう存在ですか?

プライベートでも結構仲が良いし、代表でもすごくプレーしやすいです。チームメートとして一緒にやれるのはうれしいですけど、対戦するとすごく嫌な相手です。小さいことを自覚していて、それを身体の使い方やスピードでプラスに変える選手です。スピードだけじゃなくコントロールもできるし、チェンジ・オブ・ペースがうまい。前から当たるディフェンスもあります。

──チームメートになったからこそ分かる河村選手の一面は?

ちょっとしたことでも気にする細かい性格です。飲み物も人が口を付けたペットボトルでは飲めなかったり、ちょっと潔癖ですね(笑)。

──大濠のポイントガードは中田嵩基選手、福岡第一のポイントガードは河村選手と、どちらもU-18代表のチームメートですが、プレースタイルには大きな違いがありますよね。

嵩基さんはピックの使い方を含めたゲームコントロールがうまいし、勝負どころの3ポイントシュートも相手にとっては嫌だと思います。河村は、リバウンドを取った選手がスピードドリブルで行くバスケットの中で、周りを生かす能力があります。

──日本代表や国体ではチームメートですが、普段はライバルです。気持ちの整理は難しい?

そうですね。国体は福岡のチームなので一緒にやりますけど、それが終わったらウインターは最後の大会だし、意地の戦いなので、仲間意識は関係なしにぶつかりたいです。そんな中でも河村には、ウインター予選では控え目にやってほしい(笑)。すばしっこいしシュート力もあるので止められないですから。松崎はプレーが強引で、止めてもそこをえぐってくる怖さがあります。フィジカルでは負けないつもりですけど、そこでファウルを取られるのが怖いですね。

横地聖真

「自分の考えを変えたくないし、負けたくない」

──アジア選手権が終わって、少しは高校生らしい夏の過ごし方ができましたか?

帰省した時に中学校の友達と遊んだのと、8月31日がオフだったので2年生みんなで映画を見に行きました。夏休みの宿題が多いし難しいし、提出物は絶対にやるように先生から言われているので、完璧にやっているんですけど、基本的に宿題は最終日に頑張って片付けるタイプなので。夏休みは楽しむものなのにすごく大変で、31日に遊びに行けたのは「やっとこういうのが来た!」という感じでした(笑)。

──普段、オフでリラックスする時には映画を見るタイプ?

そうですね。みんなで見に行ったのは『Mr.インクレディブル』です。中学の時は映画館にもよく行ったんですけど、1年生だとあまり早く帰れなくて、2年生になってまた少し見に行くようになりました。家でもテレビで映画を見ますし、あとはスマホでゲームをしたりですね。

──ここからウインターカップまであっという間だと思います。自分のどんなプレーを見てほしいですか?

大濠は泥臭く戦うチームです。ルーズボールとリバウンドは絶対に負けない気持ちでやるので、そういう熱いところを見てほしいです。僕は自分がチームの大黒柱だと思っていて、それに恥じないプレーをするつもりなので、そういうところを見てほしいです。ビッグショットも狙っていきたいです。勝負どころで狙うのは男らしいし、決めたらカッコいいじゃないですか(笑)。