「楽しみな個性を持っている選手たちが揃ってきた」

琉球ゴールデンキングスは7月29日に、今シーズン初となるメディア公開の練習を実施した。新戦力の佐土原遼と小針幸也そして、故障による影響で昨シーズンのポストシーズンは無念の欠場となった岸本隆一も参加していた。

桶谷大ヘッドコーチは、「ワークアウトが始まってから雰囲気はすごく良いです。佐土原、小針、練習生の中村も加えて、良い雰囲気で進んでいます。僕自身はまだ指導をしていなくてアシスタントコーチ、ストレングスコーチが指導をしています。外から見ていても、楽しみな個性を持っている選手たちが揃ってきたなと思います」と語る。

昨シーズンまでトム・シボドーの右腕としてニックスのアシスタントコーチを務めていた吉本泰輔コーチが、先日チームを訪れた。安永淳一ゼネラルマネージャーがネッツの球団職員だった時から旧知の仲であり、これまでにも吉本のチーム訪問は何度か行われていて、今回も大きな刺激を受けたと桶谷コーチは振り返る。

「この前、NBAコーチの吉本泰輔くんに来てもらい、ワークアウトを見てもらった時にいろいろな話しをしました。その中でも『(崎濱)秀斗はめちゃくちゃ将来性がある』、サド(佐土原)にも『こんな身体が強い日本人はなかなかいない』と言ってもらったりと、すごく楽しい時間を過ごしました」

琉球は昨シーズンのチャンピオンシップで大黒柱の岸本を欠きながらも驚異的な粘りを見せたが、優勝まであと一歩及ばなかった。しかし結果としては、4年連続のファイナル進出を果たし天皇杯初優勝を含め、見事な成績を残した。今シーズンは主力メンバーがほぼ残った上で、オフにはリーグ屈指の日本人フォワードである佐土原を獲得。昨シーズンの後半から加わった期待の若手、崎濱もしっかりと準備をしてシーズンを迎えられるなど、戦力アップに成功したという見解が多い。

だが指揮官は、「今シーズンは昨シーズン以上の結果を期待されていますが、自分たちだけが成長している訳でも、良い補強ができている訳でもないです。他のチームも年々、強くなっています。だからこそ自分たちはアンダードッグという姿勢を、誰が入ろうとも忘れずに、自分たちがコントロールできることに集中してやり続けたいです」と、あくまでも挑戦者としての姿勢を崩さない。

「勝利も敗北も経験して強いチームになっていくのが自分たちのスタイルです。シーズンの最初では様々なことが起こると思いますが、いろいろな組み合わせを試してそれぞれの成長を促していきたいです」

「チームにならないと自分たちのバスケットボールはできない」

昨シーズンの開幕時、琉球は11名の契約選手でスタートを切った。各選手に試合へ出るチャンスがあることによって、不満が出にくくチームがまとまりやすいポシティブな要素も大きかった。それが今シーズンは、U22登録の平良宗龍、佐取龍之介を含め16名と大所帯で開幕を迎える。試合に出られない選手に対するメンタル面のケアがより必要となってくる。

桶谷ヘッドコーチはその対策として日頃からの連携をより重視する。「コミュニケーションの数を今まで以上に増やしていかないといけないので、コーチ陣の腕の見せ所かと思います。コーチ陣の数も増えていているので彼らをまとめる僕自身が、各ポジションのリーダーたちとコミュニケーションをしっかり取る。エゴが良い意味で自分たちのエネルギーとなるようにしていきたい」

「やはりキングスはチームにならないと自分たちのバスケットボールはできないです。ですがそれだけではなく、それぞれが自分の良さを生かさないとチームにプラスにならないです。それができるように仕向けていきたいです」

ここ数年、琉球はチームの顔であるベテランの岸本に続く沖縄出身の選手がいなかった。しかし、今シーズンは沖縄出身の崎濱、平良に加え、U15からU18と琉球ユース一筋の佐取ら、縁のある選手3名が一気に加入した。

指揮官も「彼らはキングスの未来、沖縄の未来を背負っていく選手なので、どのように成長させていくのかは大切な問題だと思っています」と語り、次のような考えを明かす。

「ただ、試合になかなか出られないと思うので、試合でプレーする環境を作りたい。お金はかかりますが、できたら遠征に連れていって土日の試合が終わった後、月曜日の朝に相手の試合に出ていないメンバーとの試合など、自分たちのできる範囲でいろいろとやっていきたいです」

新シーズン、琉球は勝利と育成の両立、そして大所帯をいかに一つにまとめるかといった難題をクリアするための厳しい戦いに臨む。