勝ち切る姿勢を見せ、世界4位のフランスを終始圧倒
リオ五輪予選ラウンドの最終戦は、世界ランキング4位のフランスが相手。予選ラウンドを2位通過するためには15点差以上の勝利が必要で、13点もしくは14点差の勝利なら3位通過、それ以下での勝利か負けると4位通過という計算が絡んでくる複雑な一戦となった。
結果、勝利は収めるも点差は8止まり。足が止まる時間帯、ファウルトラブル、手痛いターンオーバーとネガティブなポイントもあったが、勝っていながらファウルゲームを仕掛けたり、3ポイントシュートを得意とする選手を最終盤に投入するなど、勝敗だけでなく、最後まで得失点差でも諦めなかった姿勢はチームとして評価できる。
吉田亜沙美
試合前の円陣で「勝つぞ!」と声を張り、チームを鼓舞した姿勢がフランス戦の勝利に結び付いた。プレーでも、前半はチームメートを生かしながら、チャンスがあればシュートを狙って9得点。後半になってチームメートに疲れが見え始めると、得意のディフェンスから速攻につなげたり、ドライブ、ジャンプシュート、3ポイントシュート(ブザービーター!)など、様々な攻撃で得点を量産した。
チームトップの24得点(うち第3ピリオドだけで11得点)。あえて厳しい注文をつけると、その攻め気を逆手に取られたターンオーバーが悔やまれる。勝ったのは吉田のおかげ、得失点差で届かなかったのは吉田のミスと言われても仕方がない(もちろんそれだけではないが……)。世界ナンバーワンの司令塔になるために、決勝トーナメントでその課題に挑んでもらいたい。
本川紗奈生
序盤の勢いを生み出したのは、間違いなく本川のドライブ。フランスとしては栗原の3ポイントシュートとあわせて警戒していたはずだが、それを凌駕するスピードはまさに世界トップクラスと言っていい。多少のコンタクトを受けてもねじ込む強さも戻ってきた。
フリースローも確実に沈めて、前半だけで17得点をマーク。しかし後半はプレータイムが少なかったこともあって無得点に終わっている。欲を言えばこの試合では1本のみだった3ポイントシュートの確率をもう少し上げたい。
渡嘉敷来夢
思い切りのよいドライブや、ハイポストからのミドルシュート、そしてゴール下でのディフェンスやリバウンドで、本川とともに前半を引っ張った(前半は9得点7リバウンド)。
ただ、疲労からか徐々に動きが重くなり、4つのファウルを犯した点は次戦以降の課題。それでも第4ピリオド残り6分49秒の場面で登場すると、町田のジャンプシュートを引き出すスクリーンをかけるなど、自分のできるところでチームに貢献。エースとして、ファウルアウトをせずに最後までコートに立ち続けた点は評価できる。
栗原三佳
シューターの宿命か、今日も厳しいマークを受けてシュートを3本しか打てなかった(うち3ポイントシュートは1本のみ)。無得点に終わったが、強いて言えば、1本は決めたかった。それでもシュートチャンスを求めて最後まで動き回ったことは、一方でシューターとしての意地が垣間見られた。
またミスもあったが体を張ったディフェンスやボックスアウト、そしてリバウンドに飛び込む姿勢など、直接得点につながらないところでチームに貢献している。
間宮佑圭
間宮にとっても試練の予選ラウンドとなった。早くリズムをつかみたかったからか、最初のステップスルーが強引すぎて、逆にリズムを失ったようにも見えた。その後も何度かあったチャンスも決められなかった。それでもオフェンスファウルを取るなど、ディフェンスで体を張り続けている点は評価できる。サイズのないセンターとしては、準々決勝でも我慢が求められる。
町田瑠唯
約10分の出場で3ポイントシュート1本を含む8得点を挙げたことは、バックアップのポイントガードとして合格点。ボールもよくプッシュし、ゲームのテンポを上げていった。しかし第2ピリオドの終盤、相手がうまかったとはいえボールを奪われ、ブザービーターを決められた点は今後の課題だろう。個人的には、もう少し出場時間を与えてもいいと思える働きをしている。
髙田真希
6得点に終わったものの、シックスマンとしての役割は果たしたと言っていい。持ち味でもあるミドルシュートとドライブを駆使して、積極的にフランスゴールに迫った。ディフェンス、リバウンドでも自らの持ち味を発揮したが、最終盤の追い上げの場面で犯したファウル(スクリーンプレーで腰を使ったと判定された)が痛かった。
近藤楓
安定した積極性を見せて、第3ピリオドの中盤に連続3ポイントシュートを沈めた点は、日本に欠かせないバックアップとしての役割を十分に果たした。また体を張ったディフェンスで相手のターンオーバーを誘った点も評価できる。不用意なファウルを犯したところは反省点だが、この働きを継続してもらいたい。
三好南穂
第4ピリオド残り25秒からの出場だったが、得失点差を考えたベンチの思惑をしっかりと理解し、ステップバックから3ポイントシュートを沈めた点は高評価(その時点でリードを11点差にした)。一瞬ではあったが、チームを始め、多くの人々に期待を持たせる3ポイントシュートだった。
長岡萌映子
プレータイムが伸びずに苦しんでいることは想像できる。バックアップの難しさを痛感しているところだろう。その意味で言えば、外れたとはいえ、速攻から3ポイントシュートを放った点、リバウンドに絡んだ点は、今の彼女にできる最大限の働きだろう。
結果的に得失点差で予選ラウンド4位通過となり、準々決勝で世界ランキング1位のアメリカと対戦する可能性が濃厚になった。反省点もあるが、これまでの女子日本代表の世界での戦い方(世界選手権を含む)を考えると、フランスに勝利したこと自体が評価に値する。フランスも得失点差を考慮して、最後は「負けても13点以下ならよい」と考えていたはずだから、つまりは日本がそこまで追い詰めた証拠でもある。「アジアを勝ち抜いて、世界の舞台に立つバスケット」から、次は「世界で上位に食い込むためのバスケット」を求める必要がある。個人としても、チームとしても、それを痛感できるゲームだったはずだ。
準々決勝でも、単に経験を積むためのゲームでなく、アメリカを今の日本のバスケットで倒しにいってもらいたい。
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