チャンスがない時期にも成長にフォーカスし続けた成果
ラプターズのキャンプに参加していた渡邊雄太が、2ウェイ契約を結んだことがチームにより発表された。
渡邊はジョージ・ワシントン大を卒業した後、2018年オフにネッツの一員として参加したサマーリーグを経てグリズリーズと2年間の2ウェイ契約を結んだ。その前年から導入された2ウェイ契約は、NBAとGリーグの両方(2ウェイ)で選手をプレーさせられるもの。ただし渡邊は、結果としてグリズリーズでの2シーズンではチャンスを得られなかった。グリズリーズ傘下のGリーグチーム、メンフィス・ハッスルではエース級の活躍をコンスタントに続けていたにもかかわらず、グリズリーズの試合に招集されることはわずか。ベンチ入りを果たしても、彼の持ち味が出せるような起用法ではなく、本来であればここでのチャンスを生かして本契約を勝ち取りたかったが、逆に契約に縛られてアピールの機会が少ないという結果になった。
もどかしい状況が長く続く中でも渡邊は「GリーグとNBAで力はかけ離れていますし、Gリーグで結果を出した選手が必ずしもNBAで結果を出せるわけではないので、コートに立って証明する以外に方法はありません」とモチベーションを切らすことなく自身の成長にフォーカスし続けた。その努力の積み重ねが今回のラプターズでの評価に繋がったと言える。
渡邊の持ち味は206cmの長身ながらフットワークが良く、またアンセルフィッシュでチームプレーに貢献できること。これは大学時代からのプレースタイルではあるが、それをベースにフィジカル強化に励むとともに、シュート力も高めて攻守両面で貢献できるプレーヤーとして全体的にレベルアップしている。そういう意味でラプターズは、今のNBAでNo.1の戦術家であるニック・ナースの下で非常に複雑なスタイルを採用している。これを高いレベルで遂行できるバスケIQを持つ選手はNBAでも決して多くはなく、そこに渡邊は目を付けられた。
本契約を勝ち取れれば一番良かったが、契約が保証されている選手も多い中でトレーニングキャンプに招かれ、そこで2ウェイ契約の枠を勝ち取ったことは大きな意味がある。前回と違い、ラプターズの方針は一貫しており、2ウェイ契約ではあってもチームバスケットの理解度を高めればプレータイムも得られそうだ。また今シーズンは新型コロナウイルスの影響で、2ウェイ契約の選手がNBAチームでの活動に参加できる日数の制限が緩和されていることも、渡邊にとっては追い風となる。
現状では17人の枠には入ったが、アクティブロスター15人に定着するのが第一の関門となる。14番目、15番目の選手ではプレータイムはほとんどないので、日々の練習と試合で出場機会を与えられるたびにアピールして信頼を高めていかなければならない。渡邊は今オフに26歳となり、NBAで『若手』と呼ばれる年齢ではなくなっている。今シーズンは勝負の年。チャンスをモノにして、NBAプレーヤーとしてもう一段階上へと飛躍することを期待したい。