新型コロナウィルスの感染防止のため様々な制限がある中でも川崎ブレイブサンダースの篠山竜青はこのオフも様々な媒体に登場するなど、名実ともに日本バスケットボール界の看板選手として、確固たる存在を確立している。後編では、コート外やファンとのかかわり方について語ってもらった。
「今シーズンの篠山はカメラ目線が増えるかもしれないです(笑)」
――コート外の活動についても聞かせてください。今、コロナ禍でファンとの接触やサービスが制限されています。川崎は選手とファンの近さも魅力の一つですが、この状況でのファンサービスでは何を意識していますか。
これは難しいですね。試合後のお見送りのハイタッチなどは川崎が誇る大きな武器の一つだと思いますが、そういうサービスがしばらくできなくなります。僕たちもハイタッチなどを通じてファンの人たちと交流させてもらい、そこでかけてもらう言葉がモチベーションを高めるきっかけになるなど、すごくありがたいものでした。そういった活動ができないのは正直、残念な気持ちが大きいです。
ただ、お客さんはハイタッチをしに来ているのかと言えば、そうではありませんよね。今の状況でもできることはいろいろありますし、一番のサービスはコート上でしっかり良いプレーを見せること。そこへのモチベーションは僕や川崎に限らず、リーグ全体としても強まると思います。当たり前だと思っていたバスケットから離れたことで、あらためてバスケットができる有難さを選手全員が感じるシーズンになると思います。まずはコート上でやれることを本当に精一杯やっていくことですね。
あとはなんでしょうね……。いつもよりカメラを探すかもしれないです(笑)。メディアの方のカメラ、中継カメラ、ファンの方が持っているカメラをもしかしたら意識するかもしれないですね。今シーズンの篠山はカメラ目線が増えるかもしれないです(笑)。
――クラブは川崎市とのSDGs活動に関する協定を結ぶなど、より地域密着活動を推進していく考えです。川崎、そしてバスケットボールがより広がりを見せるためには、ウィズ・コロナの時代にあってもそういった活動がより大切になってくると思います。そこへの思いを教えてください。
SDGsについてはGoogleで調べるところから始まりましたけど、どんなものかイメージしやすいと感じました。今まで僕たちがやっていたことは「とどろきアリーナで試合をするので見に来てください」と、自分たちのフィールドにお客さんを引っ張って来ることがメインでした。今後はスポーツに関係ないところにも自分たちから出向いて地域貢献をすることでチームを認知してもらい、それがチーム成長に繋がっていく。ただのスポーツクラブではなく、街の文化となるためにはそういった活動が必要だと、漠然とですが感じています。
僕にも子供がいるので、例えば幼稚園に行ったりすればサッカーボールはあるけどバスケットボールはない、フロンターレは知っているけどブレイブサンダースは知らないということが当たり前にあります。Bリーグは成長しているとはいえ、バスケットボールはまだまだマイナースポーツだと思っています。チームは地域に根付いて、それこそレアルマドリードやバルセロナのように街とクラブチームが一体となっていく関係を作るにはSDGsのような活動は本当に必要だと思います。
選手としてはいろいろなことをやっていきたいです。それがバスケットボール、リーグ、チームの価値を上げることになる。結果として選手一人ひとりの価値を上げることにも繋がって行くと思うので、どんなことができるのかと楽しみにしています。
「井上先生が描いてくれた篠山竜青から離れたくない」
――直にファンと接することができないことで、さらなる人気アップには選手もSNSなどでの発信力が必要となってくるかもしれません。篠山選手は、まさにバスケ界のオピニオンリーダーとして発言を取り上げられる機会も多いですが、昔に比べると自分の影響力を考慮するようになりましたか。
自分の性格的にはよりリスクを起こさないようにする考えが強いですけど、できるだけ前向きな言葉を常に発信したいと思っています。以前よりも多くの人に届くようになってきている部分は感じますが、正直まだまだだなという思いの方が強いです。そこはプロ野球、Jリーグ、それこそNBAの選手と比べてどうなのかと考えたら、知ってくれている人は増えていますが、誰もが知っている存在では決してない。その辺りはまだまだだし、もっと積極的に発信していかないといけないです。もっともっと認知を広げるためにコート外でもやらなければいけないことは、たくさんあると感じています。
――以前に比べたら軽い冗談も言いづらくなったなど、息苦しさを感じることはりますか。
SNSでは、そういうところはあります。でも、そこは前から意識してやっているので、SNSを始めた時からずっと息苦しい面はあります。チームメートには「SNSに魂を売った男」と言われることもありますけど(笑)、気を付けてやるように最初からしているので、そこの変化に動揺するとかはあまりないです。
――振り返れば、かつてはオフになると髭を剃る、剃らない。紐をつける、つないか、などポップな話題を提供していました。最近はそういうことがないのは立場の変化が影響していますか。
そういった外見に関しては、自分のスタイルが定まったんだと思います。それこそ井上雄彦先生との対談で自分の絵を描いてもらい、その絵の自分から離れていきたくない思いがとても強いです。だから最近は髭も紐も変えない。井上(雄彦)先生が描いてくれた篠山竜青から離れたくない思いを含めて定まった感じがあるかもしれないです。
――最後にリーグ、川崎ファンへのメッセージをお願いします。
まだまだいろいろな問題はありますが、何とかお客さんを会場に入れてBリーグが開幕できるところまで来ました。会場に来られる方、映像での応援になる方もいますが、みんなに「やっぱりBリーグって良いな」と、思ってもらえるようにしていきたいです。また、コロナ禍でよりSNSが人と人を繋げる大事なツールになったと感じていて、選手だけでなくクラブ、ファンの人も含めてみんなが広告塔になって、もっとBリーグの認知度を上げていかないといけない。そしてBリーグの今シーズンの成功が東京オリンピックにも繋がると思っています。
室内競技であるバスケットを1シーズンを通して日本国内でやり遂げられるかは、東京オリンピックに少なからず影響があると思います。あえて自分でこれを言うのはちょっとむずがゆいですけど、バスケット界『日本一丸』となって『日本のバスケットここにあり』を広げていくためにもファンの皆さんにはBリーグを目一杯楽しんでほしいです。こういう状況なので会場に来るだけでなく、映像配信、『バスケット・カウント』さんをはじめとする記事など、いろいろなものでバスケットを楽しんでもらいたいです。楽しんでいる人はそれを周りの人にどんどん発信して繋げていってほしいなと思います。
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