文・写真=鈴木栄一

第2戦、第3戦と続けて勝負どころで痛快な逆転勝利

5月13日、琉球ゴールデンキングスがチャンピオンシップのクォーターファイナルで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。前日の第1戦を落としている中、第2戦を66-62、第3戦を17-12とそれぞれ制し、セミファイナル進出を決めている。

まずは第2戦、琉球は第1クォーターこそリードしたが、第2クォーターで9得点と攻めが不発となり前半を29-31で折り返す。さらに第3クォーター中盤には名古屋Dのジャスティン・バーレルにセカンドチャンスからシュートをねじ込まれ38-45と苦しい展開が続く。ここから須田侑太郎の奮闘などで盛り返していくが、終了間際に安藤周人の3ポイントシュートで突き放され、46-50とビハインドを背負ったまま第4クォーターを迎えた。

後がない琉球だが、大差がついていたわけではなく、食らい付いてチャンスをうかがっていた。残り約7分、ヒルトン・アームストロングの連続ダンクシュートで53-52と逆転。ここから一進一退の攻防が続くが、残り約1分半、第4クォーターに入ってずっとベンチに下がっていた岸本隆一が、投入された直後に値千金の3ポイントシュートを沈め、土壇場で琉球が62-60と勝ち越した。

勝負どころでの起用に完璧な形で応えた岸本。「その前の段階でかなり休ませてもらっており、シュートを決めるよりも、とにかく機動力を使って引っ掻き回し、何かしらシュートチャンスを作れらたらという思いで入っていました。結果としてシュートを決められて良かったです。それまでずっと当たりが来なくて、チームと一緒で僕自身もずっと我慢して、それが実った感覚でした。何よりもその後にヒルトンがオフェンスリバウンドを取るなど、チームとして良い雰囲気に押し戻せたことは充実感があります」

岸本の一撃で勢いを得た琉球は、さらにアームストロングの加点でリードを4点にすると、そのまま逃げ切った。

百戦錬磨の石崎巧、ゲームメークで勝利を呼び込む

運命の第3戦、前半の5分は琉球の2-5と息詰まるロースコアの展開に。それでも後半残り3分に石崎巧の3ポイントシュートで逆転。ここから第1戦と第2戦では絶不調だった古川孝敏が、この勝負どころで連続シュートを沈めてリードをキープ。粘る名古屋を振り切った。

琉球の佐々宜央ヘッドコーチは、「これが今年の琉球なのかもしれないです。危機的状況になった時、遅いですけどそこから火事場の馬鹿力で耐え、こういう結果を出せる強さはあると思います。第1戦、第2戦と連続でフィールドゴールの確率が30%台でも、まだまだ先がある。こういう一つひとつを大事にして、また来週に向けて戦っていきたい」と総括。そして「本当に厳しい展開ですけど、乗り越えてくれました」と安堵感を見せた。

第2戦と第3戦ともに要所での活躍が光った石崎は、「自分の仕事は単純にボールを数多くの選手にタッチさせることに尽きます。みんなすごくプレーオフモードで気合が入っている、入りすぎていた選手もいたので、僕が何かやるというよりは、他の選手にやらせて。次の選手がボールをどんどんつなげていく組み立てをしただけです」とコメント。百戦錬磨のベテランらしい安定したゲームメークで『火事場の馬鹿力』を正しい方向に導き、チームの危機を救った。

1年目の梶山ドルフィンズ、ひたむきな挑戦の終わり

アップセットを惜しくも逃した名古屋Dの梶山信吾ヘッドコーチは「琉球さんが素晴らしいバスケットをしました。ただ、僕たちも琉球さんとここまで試合ができたこと、1つ勝てたこと。今までシーズンを通して選手たちがあきらめず頑張ってくれたことに感謝したいです。負けたのは僕の責任です」と、レギュラーシーズン60試合でそうだったのと同じように、選手を称えて責めは自分が背負い、なおかつ敗れても前向きにシーズンを締めくくった。

そんなヘッドコーチ1年目について「正直、ダメだと思います。ダメだと分かっていて選手たちが僕についてくれた。僕のダメな部分を選手たちがカバーしてくれました。選手に助けられたことが大きいです。僕ができるのは選手を信じること。それはシーズンを通してブレずにやれました」と、選手たちへの感謝を再び強調していた。

これで琉球はセミファイナルで敵地に乗り込み、千葉ジェッツと対戦する。「これからもっとタフなゲームが待っている中で、今日みたいなゲームを乗り越えられたのは大きなこと。よりチームが一つになるきっかけ、ステップアップにつながる。本当に大きな勝ち方だったなと思います」と岸本は語った。名古屋Dとの激闘をさらなる成長の糧とし、難敵の千葉を倒すチャンスを狙う。

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