タウンズを明確に主軸とするスタイルへ
トレードデッドラインで大きく動いたティンバーウルブズは、念願だったディアンジェロ・ラッセルを手に入れました。成績が振るわないことから完全にチームを作り直す決断に出たわけですが、大黒柱のカール・アンソニー・タウンズを中心とした戦術のために必要な選手を集め直した印象が強いロスターとなりました。
最後のトレードとなったウォリアーズとの交渉はデッドライン当日になって話が進んだといわれており、ラッセルを獲得できなければ崩壊したであろう綱渡りの賭けでしたが、見事に成功させました。
初めに動いたのはジェフ・ティーグらの放出で、これはホークス側の事情で成立したようなトレードだととらえていましたが、次の12人が絡む大型トレードではシャバズ・ネイピアーを放出しており、実績のあるポイントガードがチームに誰もいないロスター構成となりました。この時点ではアンドリュー・ウィギンズがポイントガード役となることも考えられましたが、ここに今シーズンのウルブズで発生した問題点が詰まっています。
今シーズンはタウンズのシュート力を前面に押し出すオフェンスとなっており、ハンドオフやピック&ロールでコンビを組むポイントガードとの相性は非常に重要だったのですが、コンビとして機能している時間帯は良いものの、そこにディフェンスが集中した時に、薄くなったはずのウイングを上手く利用できない機能不全が発生していました。
本来はこのウイングとしてウィギンズが活躍してくれれば問題なかったのですが、オフボールの動きに乏しく、不安定なプレーに終始しまいました。特にタウンズがケガをするとマークが厳しくなり、チームは連敗を重ねていったのです。
一方で、ハンドラー役になるとウィギンズはその才能を見せつけることが増え、平均22.4点とキャリアハイの3.7アシストを記録しています。ところがウィギンズは突破する力はあるものの、アウトサイドのシュート力やパス能力に欠けるため、タウンズを生かすことができませんでした。かつてリッキー・ルビオがポイントガードだった頃はウィギンズとタウンズの両方を活用し、将来有望なチームと考えられていましたが、今はどちらか一方にしか有効に絡めないオフェンスに陥っていたのです。それを今回のトレードで、タウンズを主軸にしたバスケットに明確に切り替えたことになります。
タウンズは高いシュート力で3ポイントシュートを決めるだけでなく、インサイドでもファイトする優れたフィニッシャーですが、その相棒にはタウンズの意図とディフェンスの状況から的確な判断をするパサータイプが必要です。しかもタウンズにマークが寄った時には、プルアップの3ポイントシュートによるスペース構築や他の選手へのキックアウトパスなど違う選択肢を多く持っていることが求められます。スコアラータイプのウィギンズには少し苦しい役割であり、タイミングを外したプレーを得意とするラッセルは、まさにタウンズに適したタイプのポイントガードと言えます。
またウルブズには違う問題もありました。オフェンス戦術としてはそれなりに機能していたため、パスワークからリーグで最も多い28.3本のキャッチ&シュートでの3ポイントシュートを打っていたのですが、その確率が33%と低かったのが結果が出ない要因の一つでした。しかも最も多く打っているタウンズは40%を超えており、ウィギンズも含めてウイング役のアウトサイドさえ決まれば、タウンズがより生きてくる可能性も秘めていました。
ラッセルの獲得に注目が集まりますが、他に獲得した選手もネッツでラッセルとチームメートだったアレン・クラブを始めシュータータイプとなっており、現在の課題を踏まえた的確な補強です。特にマリック・ビーズリーは多くのチームが獲得を狙っていた有望株であり、二コラ・ヨキッチに合わせるオフボールでの動きも鍛えられているため、タイミングの読めないパスを出すラッセルとのコンビプレーも注目されます。フアンチョ・エルナンゴメスやオムリ・スペルマンもストレッチタイプの若手であり、わかりやすくラッセルとタウンズを中心とする戦術に合わせた選手を獲得できました。
ラッセルを獲得できていなければ崩壊していたようなロスター構成ですが、なにはともあれ複数のトレードを駆使してチームを作り直す第一歩を踏み出しました。新加入が8人と半分以上が入れ替わっただけに即座に結果を出すのは難しいかもしれませんが、面白いチームに生まれ変わることを期待したくなるウルブズの動きでした。