「大ファンのコービーが何と言ってくれるか知りたい」

現地3月10日、ヒートのバム・アデバヨはウィザーズを相手に83得点を挙げた。NBAの1試合における最多得点記録は44年前のウィルト・チェンバレンによる100得点で、それに続くのは20年前のコービー・ブライアントの81得点だった。アデバヨはこのレジェンド2人に挟まれる歴代2位の記録を作った。

「今も現実だとは思えなくて、どう受け止めていいのか分からない。ディフェンスでチームに貢献して、オフェンスはアリウープを押し込むだけの選手としてNBAに来た僕が、こうしてコービーの隣に名前を並べるなんて信じられない。僕はコービーの大ファンだから、この記録について彼が何と言ってくれるか知りたいよ。多分、『もう一回やってみせろ』と言われるだろう(笑)」

相手のウィザーズは8連敗中で、4試合連続の遠征中とあって集中しないまま試合に入った。一方のヒートはプレーオフに向けて順位を上げなければいけない立場で、ホームの観客の後押しもあった。第1クォーターでアデバヨはフィールドゴール16本中10本、フリースローも7本中6本を決めて31得点を荒稼ぎ。それでもウィザーズの守備は緩いままで、その後も最も得点効率の高いゴール下でアデバヨが得点を重ねていった。

アデバヨは前半だけで45得点。「僕自身はとにかく冷静さを保ち、集中し続けようと思っていたんだけど、ロッカールームが異常なほど盛り上がっていて、数字は意識せざるを得なかった」と言う。

この時、指揮官エリック・スポールストラも選手たちに「このペースを維持しよう」と声を掛け、数字を意識するわけではなくアデバヨの好調が続く間は彼にボールを集め続けるよう指示した。指揮官は得点記録へと突き進むアデバヨへの配慮をこう振り返る。

「50得点に達した時に『この調子なら60得点もいける』と思い、60得点に達したら『それなら70得点までいこう』と考えた。その時点で彼を下げる選択肢はなくて、行けるところまで行くだけだった。起用法について考えていたのは、最後は時計を止めて観客が彼を称える時間を作ろうということだけだった。いつも彼とは密なコミュニケーションを取るが、今日は一切近付かなかった。最高の流れに乗っていたから、流れを邪魔するようなことはしたくなかったんだ。最後は完全にファンの一人になっていたよ」

前半終了時点でヒートは76-62とリード。第3クォーターにも快調にシュートを決めるアデバヨの得点が60を超えたあたりでようやく、ウィザーズ守備陣は彼へのマークを厳しくした。すでに試合はチームの勝敗云々ではなく、アデバヨが得点記録を作るか、阻むかの戦いとなっていた。

「ダブルチームに来ないから『今日はこのまま打たせてくれるのか』と思っていたのに、いきなり4人に囲まれた。あれだけ徹底されるとはね(笑)」とアデバヨは振り返る。

これに対してヒートもアデバヨに点を取らせるバスケに徹した。81得点で迎えた第4クォーター残り1分20秒からの攻めで、アデバヨがスピンムーブからリムを攻めてフリースローを得る。コービーの記録を知っていたファンは大盛り上がり。MVPチャントが響く中、アデバヨは2本とも確実に決め、ベンチに戻ってスポールストラと固く抱き合った。

この日のカセヤ・センターには、アデバヨと交際中のエイジャ・ウィルソンが来ていた。「彼女がいない試合で通算1万得点を記録して怒られていたから、彼女の前で83得点を記録できて良かったよ」とアデバヨは語り、WNBAスターのウィルソンと一緒にいることがプロ選手としてのモチベーション向上に大きく寄与していると感謝を語った。

「エイジャだけじゃない。母と抱き合い、コーチと抱き合い、トレーナーたちと抱き合って喜んだ。そこでようやく実感が湧いてきた。僕が落ち込んでいる時に支え、引き上げてくれる人たちと今日この瞬間を共有できて最高だった。大切な人たちの前で、そしてホームのファンの前で記録を達成できたことは、本当に特別だ」