
「ここから連敗したら意味がなくなります」
今年のBリーグ開幕節を代表する出来事と言えるのが、昨シーズンリーグ下位に終わった横浜ビー・コルセアーズが、4年連続ファイナル進出を果たした琉球ゴールデンキングス相手にアウェーで連勝を収めたことだ。
今オフ、横浜BCはリーグ屈指の日本人ガードである安藤誓哉を獲得。安藤は早速、2試合続けて接戦となった終盤にビッグショットを決めて勝利の立役者になった。また、相手のマークを引きつける安藤の圧倒的な引力を上手く生かして、他の選手たちが持ち味を発揮したチーム力も見事だった。
中でもゲイリー・クラークは攻守に渡るインパクトを残した。ゲーム1は、第4クォーター序盤に9点のビハインドを追いかける劣勢の場面で連続3ポイントシュートを決めて、13-0のランで逆転する流れを引き寄せた。また、ゲーム2でも引き続き効果的に得点を挙げるだけでなく、5点リードの残り1分14秒、ゴール下でアレックス・カークのシュートを食い止める値千金のブロックを決めた。
クラークは開幕節をこう振り返る。「昨シーズンの僕たちは連勝できる機会がたくさんありましたが、故障者が出たり連携が上手くいかず、チャンスを生かせなかったです。しかし今回は試合終盤で良いコンビネーションを発揮して得点できました。昨シーズンから続くハードワークの成果が出たと思います。こういったタフな試合は、より横浜らしい戦いが求められます。タフな状況を乗り越えて勝ちをつかみとれた今、前に進んでいくだけです」
琉球相手の連勝は、リーグ全体に大きな衝撃を与えた。クラークは「僕たちのように昨シーズンのリーグ下位からトップを目指すチームが、琉球のような強豪相手に勝てば多くの注目を集めます」と語るが、勝利に浮かれてはいない。
「連勝は素晴らしいですが、ここから連敗したら意味がなくなります。それに、ここからさらに連勝を伸ばしたとしても満足することはないです。僕たちは昨シーズンリーグの下位に沈み、多くの試合に敗れていることを忘れてはいないです」

「プロセスを信じた成果が出たことが素晴らしい」
安藤の補強は大きな注目を集めたが、同時に横浜BCはラッシ・トゥオビヘッドコーチ、クラークをはじめとした外国籍選手3名、アジア枠のキーファー・ラベナを含めた昨シーズンの中心メンバーを揃って残留させる継続路線を選択。この積み上げによる手応えをクラークは強調する。
「昨シーズンの僕たちはコーチ、外国籍3人がBリーグ1年目で、いろいろなことに適応する必要があり、1年を通して自分たちのやるべきオフェンス、ディフェンスを学びました。昨シーズンのプロセスを信じて、これまでやってきたことをあきらめずにチーム作りを行った成果が出たことが、この週末における最も素晴らしいことです」
そして、安藤の存在によって、自身を含め他の選手がよりプレーしやすくなっていると続ける。「誓哉が加入したことで終盤におけるオフェンスのダイナミックさが変わりました。そして、キーファーが常にポイントガードを担う必要がなくなったことでオフェンスにおけるダークホースとなっていることも大きいです。マークがゆるくなれば、キーファーはオフェンスリバウンドからプットバック、インサイドに切れ込んでフィニッシュもできます。また、僕も昨シーズンは、常にコンテストされている中でシュートを打っていたのが、誓哉やキーファーが守備を引きつけることでオープンシュートの機会が増えました」

「これから皆さんは、僕が何をできるのかもっと知ることができる」
また、クラークは「昨シーズンは学びの期間でした」と、1年の経験を経てBリーグへの適応が進んだことにも大きな手応えを感じている。
「もちろん競技者として、『もっと良いプレーができる』「自分のリズムではない』とフラストレーションを溜めることもありました。ただ、幸運なことに、どんな時もチームのみんなは僕をリスペクトしてくれていました。今、チームメートは僕がどんな選手なのかを理解してくれています。これまでのプロセスを経て、今、ゲイリー・クラークは本来のプレーができています」
この「本来のプレー」とは、3ポイントシュートだけでなく、リングへのアタックやディフェンスでも活躍することだ。「シーズン前、多くの友人たちに『Bリーグはゲイリー・クラークのことをもっと注目するようになる』と伝えていました。今日、僕はディフェンスで試合により影響を与えられました。オフェンスで相手を引きつけ、スペースを広げるだけでなく、ブロックショット、リバウンドも得意であることを示していきたい。これから皆さんは、僕が何をできるのかもっと知ることができると思います」
冒頭で紹介したように、快心のスタートを切ってもクラークは「すべてのチームは今の時点で上位候補です。今回の連勝を大きなモノととらえすぎてはいけない。昨シーズンの僕たちも開幕直後は、上位進出の可能性があるチームでした」と、早くも次戦に向けて気持ちを切り替えていた。
そして安藤や自身など個の出来・不出来に依存することなく、日替わりでヒーローが出るチームにしていきたいと語る。
「次の相手がどこであろうと関係なく、横浜BCのすべての選手が、今日よりも良くなっていくことを目指していくだけです。ヒロ(松崎裕樹)は今日活躍してくれて、次は(須藤)昂矢の番だと思います。今週末、ダミアン(イングリス)は良かったですが、来週は(兪)龍海が活躍するでしょう。グチ(谷口光貴)は新加入でシステムを学んでいる途中で、今回出番はなかったですが、しっかり準備をしてくれています。僕たちは全員で一つのチームです。出番が少なかった選手は、次の試合でつかみとるため練習でアピールする。全員でチーム力を押し上げていくことが次のチャレンジです」
今週末から横浜BCはホーム3連戦となる。今の勢いをキープし、連勝を伸ばすためにはクラークが引き続き、昨シーズンとは違う姿を見せられるかが大きなカギとなる。