
「僕は自分のプレーを突き詰めるバスケオタクなんだ」
今オフが始まってすぐ、ロケッツはジェイレン・グリーンとディロン・ブルックス、そして数多くの指名権を放出してケビン・デュラントの獲得を決めた。
サンズの『ビッグ3』は行き詰まり、移籍はもはや確定事項だった。デュラントはいまだにリーグ屈指の得点能力を持つが、ネッツとサンズでは優勝争いの中心には立てなかった。37歳という年齢もあって、彼を迎え入れるにはチームの命運を託す覚悟が必要だった。それでもロケッツはデュラント獲得の機会を前に躊躇しなかった。
ロケッツの7番のユニフォームを着てシーズン始動の会見に臨んだデュラントは、移籍を決めた理由をこう語る。「このチームの急成長を見て、イメイ・ユドカの仕事ぶりには感心していたし、このクラブにはイメイを始め以前に一緒に仕事をしたスタッフが何人かいたこともある。それで、移籍が決まってロケッツの練習場に来た時、すごく自然に受け入れられたんだ」
テキサス大出身の彼にとって、テキサス州に拠点を置くのは2007年以来のこと。「戻って来られて良かった。大学時代に築いた人間関係があって、ヒューストンに来る機会はよくあった。そのたびに『いずれ住むのも良いかもしれない』みたいな感覚はあった。テキサス大でプレーしていた頃もたくさんの愛が感じられた。ロケッツの一員となり、それがもっと感じられると思うと楽しみだよ」
そして、やはり決め手はユドカの存在だったと語る。「正直に言うと、こんなに早くサンズを離れるとは思っていなかった。でも、NBAはそういうものだ。それで僕は、どのコーチとなら自分らしくいられるか、自分がチームにもたらすものを理解してくれるかと考えた。そこで最初に浮かんだのがイメイだった。彼は常にそれを理解してくれた」
「そうして最近のロケッツを考えた。サイズとリーチ、トランジション、ドライブ&キック、ディフェンスでのスイッチ……。それらすべてが僕のやりたいバスケと合致する。そこでプレーしたいと自然に感じられたんだ」
ハーデン退団を機に再建に舵を切ったロケッツは、激戦の西カンファレンスでも十分に戦えるチームへと成長した。デュラントに期待されるのはプレーオフで勝ち進み、優勝争いの中心になることだ。それでも彼は、優勝への期待を問われると「それを語るつもりはない。僕はこれまでに所属したどのチームでも優勝について語ったことがない。毎日ただ努力することだけを考えるからだ」と答えた。
「ただし、今のNBAに勝つために必要な要素は、サイズとウイングスパンと運動能力、ペネトレイトできる選手と追加のポゼッションを生み出す選手、スイッチして複数のポジションを守れる選手がいて、あとは戦術的な規律、チームとしての一体感、継続性だと思うし、このチームにはそれらの要素が感じられる。あとは僕たちがそれを高めて、チームとして前に進むことだ。それには時間がかかるかもしれないし、努力も必要だけど、仕事に取り掛かるのを楽しみにしているよ」
住む街と着るユニフォームの色は変わるが、バスケに向き合う姿勢とモチベーションは変わらない。「僕は技術を完成させるプロセスを楽しみ、毎日自分自身と競争している。昨日よりも良くなること、それが僕にとっての喜びなんだ。これだけ長く続けて年齢を重ねると、それは細部に深く入り込む。つまりバスケオタクとして極まっていくんだけど、それが楽しいんだ。僕は何も追いかけない。自分のプレーを突き詰め、日々成長するプロセスをただ愛している」