アレックス・カルーソ

10人ローテでファイナル進出、今後のトレンドに?

NBAファイナルはサンダーとペイサーズの顔合わせになりました。ともに2年前はプレーオフにも出ていませんでしたが、継続したチーム作りで独自の戦術を磨き上げ、一気にNBAファイナルの舞台へと駆け上がってきました。

オフェンスのペイサーズ、ディフェンスのサンダーというチームカラーは対照的ですが、その一方で共通点も多く、特に注目されるのは『タイムシェア』です。

トランジションの連続で運動量豊富であることが前提となり、その上でフィジカルに戦うことも求められ、しかも中1日での試合が続く現代NBAでは、選手の疲労をどうコントロールするかが非常に重要になってきます。今回のプレーオフで少人数のローテーションで勝てたのはニックスとナゲッツぐらいで、両チームも10人でローテーションを組むペイサーズとサンダーの分厚い選手層にスタミナ負けしています。

ペイサーズはタイリース・ハリバートンとアンドリュー・ネムハード、TJ・マッコネルとポイントガードを3人で回す以外は各ポジションにスターターと控えで同じ役割を担う選手がいます。シュートを決められた直後にカウンターを発動するなど、休みなく動き回ることが求められ、またイージーシュートのチャンスを多く作ることが優先される戦術のため、細かなスキルやフィジカルの強さよりも運動量とスピードを重視し、常にフレッシュな選手をベンチから送り出していくローテーションです。

特にセンターはマイルズ・ターナーの控えがシーズン中に次々とケガをしてしまい、緊急補強したトーマス・ブライアントとトニー・ブラッドリーという頼りない選手にもかかわらず、与えられたプレータイムにすべてのエネルギーを出し尽くす奮闘を見せる彼らが、チームに活力を与えてきました。試合終盤までハイペースを保つのがペイサーズの特徴になっています。

同じ10人ローテでもサンダーはベンチメンバーを使い分けてきます。このプレーオフでも試合によってセンターのジェイリン・ウィリアムズ、ウイングのアーロン・ウィギンズ、固定ポジションのないケンリッチ・ウィリアムズがローテーションから外れることがありました。またチームで唯一のシューターであるアイザイア・ジョーは20分近くプレーすることもあれば、3分しか出番がないこともあります。ただ、これは彼らの能力や調子の問題ではなく、試合展開と選手の個性を考慮した使い分けこそがサンダーのプレータイムシェアなのです。

このプレーオフではベンチメンバーがスターター以上のレーティングを記録しており、特にアレックス・カルーソとケイソン・ウォレスのディフェンスレーティングは100を切っています。サンダーの生命線は強度の高いプレッシャーディフェンスにあり、ローテーションで強度を保つことはペイサーズ同様に重要です。

ペイサーズもサンダーもシーズン中から多人数のローテーションで戦い、それをチーム戦術に落とし込んできました。それも今シーズンだけでなく、この3年間を通して実行しており、時間をかけて培ってきた戦い方です。『タイムシェア』に早くから取り組んできた両チームの激突は、今後のトレンドへと繋がっていく象徴的なファイナルになりそうです。