マイルズ・ターナー

「結束の強さが、このチームを特別なものにしている」

ペイサーズが25年ぶりのNBAファイナル進出を決めた試合の終盤、もはや勝利が確定しており、プレーが途切れるたびに選手たちは歓喜の雄叫びを上げ、インディアナのファンは大歓声でそれに応えた。マイルズ・ターナーはベンチで大喜びすることで、そのお祭り騒ぎに加わっていた。

キャリア10年目の彼は、ルーキーイヤーから5年連続でプレーオフに進出したものの、すべてファーストラウンド敗退。その後にプレーオフに進めない3年間の低迷期を経て、昨シーズンはカンファレンスファイナルに、そして今回はNBAファイナル進出を果たした。

彼が若手だった頃はポール・ジョージの時代。その後にエースを担ったビクター・オラディポがケガで満足にプレーできずにチームは迷走し、ターナーにも何度かトレードの噂が浮上した。彼自身、チーム内で序列を上げながら、チームを勝たせられない苦しみを長らく味わってきた。

カンファレンス優勝のセレモニーで最初にマイクを握ったのはターナーだった。黄色に染まった観客席に向かって彼は大声を張り上げ、ファンもコール&レスポンスでそれに応える。「10年間、愛とリスペクトで支えてくれて感謝している。この街のためにあと4つ勝って、トロフィーを持ち帰りたい」と彼は語った。

その後の記者会見で、勝利が決まった瞬間の感情を「まずは神への感謝の気持ち、そして興奮と、自分のやってきたことは正しかったという思いだ」とターナーは説明する。「長い年月の歓喜と苦悩が全部一つになって……自分でもよく分からないけど、ただ喜びと興奮に包まれていた」

インディアナは大きなフランチャイズではない。それでもチーム一丸となって努力を怠らない選手と、熱い応援で支えるファンがいる。「僕らは過小評価されている。それを跳ね返そうと思うと夜は眠れないし、髪も抜ける。それだけ頑張った甲斐があったよ」とターナーは言う。

「華やかじゃないけど、勝つために全員が努力する」

この試合でターナーはファウルトラブルに陥り、21分しかプレーしていない。第3クォーター序盤に2つのファウルを犯し、個人4つとなってベンチに下がった。この時はまだ10点差と、リードしていても油断はできなかったが、代役として登場したトーマス・ブライアントが素晴らしい守備とリバウンド、さらには3ポイントシュート2本成功を含む8得点をこのクォーターで挙げて、試合の流れを一気に引き寄せた。

「トーマスのおかげだ。素晴らしい活躍だった」と、ターナーはその活躍に大喜びだった。「いくつものチームを渡り歩き、シーズン途中にウチに来て、ここで完璧に自分の居場所を見つけた。彼は高校時代から対戦してきた友人でもある。当時からずっと、バスケに素晴らしい情熱を持っていて、今日それを発揮した。出場機会が少なくても文句一つ言わず、不機嫌な様子を見せたことがない。映像で確認してほしいんだけど、良いプレーが出た時に真っ先に喜びを表現しているのは彼だ。僕らに最もたくさん声を掛け、鼓舞してくれる。そのトーマスが今日チャンスをつかんで結果を出した。素晴らしいことだよ」

「華やかなチームじゃないかもしれないけど、勝つために全員が努力するチームだ。このプレーオフを通じて、例えば5得点とか6得点の選手でもスタッツに表れない貢献をしている。アンドリュー・ネムハードがそうだし、アーロン・ネスミスも足首のケガを抱えながらハッスルし続けている。みんな何かしら抱えているけど、僕らは戦うことを止めない。そこに僕らの強さの秘密がある。試合ごとに誰が活躍するかは分からない。僕たちの結束の強さが、このチームを特別なものにしているんだ」

ここまで来るのに時間はかかった。それでも、ターナーは『継続性』というペイサーズのチーム作りを大いに気に入っている。「このチームの継続性はもっと評価されるべきだ。スーパースターをかき集める方法は以前のように効果的じゃない。NBAにいる限りトレンドは変化するけど、今まさに僕たちが、あるいはサンダーがやっている方法論がトレンドになっているよね。継続性を重視し、若くてエネルギーのある選手がディフェンスに走り回る。そしてチームは友情という信頼関係で結ばれている」

NBAファイナルではサンダーと対戦する。ペイサーズもサンダーも、勝てない時期を乗り越えて、若いチームの勢いでここまで勝ち上がってきた。ターナーは相手をリスペクトしつつ、今のペイサーズのバスケに自信を持って、NBAファイナルという栄光の舞台に挑む。