任せられた役割をハードワークで全うする安定感
NBAファイナル進出を果たしたサンダーは、エースのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーを筆頭に多くのタレントを擁している。その多くはチーム再建の過程で獲得し、育て上げた若手だ。シェイがMVPを受賞して注目を集める中でも、毎試合のように結果を積み重ねていれば、いずれ人々はその存在に気付く。2023年の1巡目10指名を受けたキャリア2年目のケイソン・ウォレスは、ここに来て『発見』されつつある。
昨シーズンはルーキーにしてレギュラーシーズン82試合、プレーオフの10試合すべてに出場。今シーズンもレギュラーシーズン68試合、プレーオフでは16試合すべてに出場し、サンダーのセカンドユニットになくてはならない存在となっている。粘り強いディフェンスとトランジションの起点となるパス、キャリア通算38.9%の3ポイントシュートが彼の武器。好不調の波が少なく任せられた時間帯に任せられた役割をハードワークで全うする安定感が最大の特長だが、それと同時にスティールからワンマン速攻に持ち込み、トップスピードで突き刺すトマホークダンクは、ファンを沸かせるハイライトとなっている。
ナゲッツとの戦いは『GAME7』までもつれたが、ファーストラウンドではグリズリーズをスウィープし、ティンバーウルブズとのカンファレンスファイナルは5試合でケリを付けた。サンダーはしばしの休息を挟んで、NBAファイナルに向けて始動している。ウォレスは「ゆっくりできたけど、また全力でバスケができるのがうれしいよ」と明るい表情で語る。
ペイサーズのマイルズ・ターナーは「継続性を重視し、若くてエネルギーのある選手がディフェンスに走り回る。そしてチームは友情という信頼関係で結ばれている」という言葉でペイサーズの強さを説明し、それはサンダーも共通していると語った。これを聞いたウォレスは同意し、次のように語る。
「チームの成長が僕たちを結び付け、情熱と謙虚さを与えてくれる。毎日この練習場に来て、チームメートと会うのが楽しみなんだ。それは普通の職場の環境とは違うと思う。これまでのチームでもみんな仲が良かったけど、ここでは本物の兄弟みたいな感じなんだ」
「これまでと同じように、毎試合を全力でプレーする」
プレーオフでのサンダーは突出したスタッツを残しているが、選手がコートにいる時間帯とベンチにいる時間帯の得失点の差を表す『オンオフレーティング』でウォレスは+18.3と、アレックス・カルーソの+9.3、チェット・ホルムグレンの+6.6、シェイの+6.2を大きく引き離してチームトップに立っている。
プレーオフで彼がマークしたのはジャ・モラントであり、ジャマール・マレーであり、アンソニー・エドワーズだ。そこでルーゲンツ・ドートに匹敵するほど激しく、そして賢く守り、オフェンスでも手堅く結果を出す彼は、セルティックスのドリュー・ホリデーと比較される存在になりつつある。そもそも今シーズン、同じ役割のカルーソが加入したことでウォレスの出番は限られたものになると予想されていたが、今の彼はカルーソ以上に注目される存在になっている。
ドートは「とんでもないヤツだよ」とウォレスを評価する。「毎試合で成長している。重要な選手をマークし、リバウンドにもアグレッシブだ。オフェンスでも常に正しいポジションを取り、チャンスが来た時に備えている」
しかし、ウォレスは自分の成果にほとんど関心を寄せない。これまでと同じマインドセットで、NBAファイナルでもベストを尽くすことを誓う。「ここまで上手くやってきたかもしれないけど、NBAファイナルは0-0から始まる。その心構えを忘れちゃいけないと思っている。これまでと同じように、毎試合を全力でプレーするよ」