「絶対にコートに出て、どれだけプレーできるか試す」
ナゲッツが43点差の大敗を喫した第2戦の試合後、指揮官デビッド・アデルマンはマイケル・ポーターJr.のシュートに当たりが出始めたことを唯一の収穫だと語った。このシリーズでは両チームとも主力が欠場せず戦えているが、左肩をガチガチにテーピングしているポーターJr.の姿は嫌でも目立つ。クリッパーズとの7試合とサンダーとの2試合で、彼の3ポイントシュートは79本中21本成功(26.6%)と精彩を欠いていた。
ケガをしたのはクリッパーズとのファーストラウンドの第2戦だった。自分のミスで失いかけたボールにダイブしたことで左肩を捻挫。関節を固定すれば4週間前後で治るケガだが、彼曰く「プレーしながら精神力で乗り越える」方法を選んだ。
「プレーすると決めた以上、言い訳はしない。チームは崖っぷちだから、休んでいる場合じゃない。良いプレーができなければ別の選手がプレーすることになるけど、でも僕は絶対にコートに出て、どれだけプレーできるか試す。そこに可能性はあるはずだし、プレーの選択を慎重にやれば大丈夫だと思っている」
サンダーとの第2戦では手痛い大敗を喫した。第3クォーター終盤、すでに大差が付いている状況でポーターJr.は誰よりも早くベンチに下がったのだが、この時には左肩が上がらず、ユニフォームを脱ぐのにチームメートの助けが必要だった。シュートを打つ際には「ガイドハンドがズレて不自然な感覚」であり、リバウンドも両手で取りにいけない。その彼が後半開始からベンチに下がるまでの10分弱の間に3ポイントシュートを2本決めた。ここにアデルマンは光明を見いだそうとした。
そして第3戦、ポーターJr.は期待に応えてエリートシューターの姿を取り戻す。肩のテーピングは変わらず、試合前には痛み止めの注射も打っていたが、ズレていた感覚が噛み合った。フィールドゴール10本中7本成功、3ポイントシュートは6本中5本成功。サンダーの3ポイントシュートが外れるのに対して違いを生み出した。
アデルマンは会心の笑みとともに「だから言っただろう?」と話した。「相手はセンター2人を起用して(ニコラ)ヨキッチを止めてくる。流石のヨキッチも苦戦しているが、その分だけ外が空く。ウィークサイドのMPJ(ポーターJr.)がシュートを決めてくれればウチに流れが来る」
サンダー相手にリードする要因は「クラッチ力」
ポーターJr.は「少しずつ良くなっている。そのおかげでシュートが決まってくれた。まだ全力でフィジカルなプレーやバンプはキツいけど、自分にできることはやったつもりだ」と語る。
リーグ最高勝率を挙げたサンダーが優位と思われたシリーズで2勝1敗とリードしている。「サンダーは10人ローテで誰が出て来ても力が落ちない。本当に難しい相手だ」とポーターJr.は言うが、自分たちが優位を作れている理由をプレーオフでのクラッチ力だと語る。
「僕らはシーズンを通して終盤の勝負強さを磨いてきた。AG(アーロン・ゴードン)はプレーオフで大活躍中だし、ニコラもジャマール(マレー)もクラッチな選手だよね。僕もクラッチタイムのシュートに自信を持っている。接戦を制する勝利は良いものだし、多くの選手がそういう場面で決められるのは本当に楽しいよ」
48分間ずっと接戦だったが、オーバータイムの5分間は11-2と圧倒した。「AGの得点で追い付いた時点で、僕らに流れが来ていた」とポーターJr.は語る。彼も体力的には限界に近かったが、勝利が確実になる残り20秒まで全力でプレーを続けた。そして延長でも、持ち前のクイックリリースで打点の高い3ポイントシュートを沈めている。
肩のケガが回復するにつれて、もっとパフォーマンスを上げられると彼は信じている。「プレーすることで治りが遅くなっているけど、同じケガをしない限りはプレーしているからといって悪化するものではないそうだから、負担は大きいけど危険なものではない。ディフェンスとリバウンドでできる限り貢献して、シュートのチャンスが来たら確実に決められるよう準備しておくだけさ」