次々にパスが回り、多くの選手が活躍できるチームに
デマー・デローザンをエースに置いた3年間に別れを告げることになったブルズは、再建へと向かうシーズンを迎えましたが、ジョシュ・ギディーを加えた以外はロスターに大きな変更はなく、ヘッドコーチ交代も行いませんでした。それだけに昨シーズンと似たようなバスケをするものかと思われましたが、全く異なるチームスタイルへと変化しています。
最大の違いは試合のペースが見違えるほど早くなったことで、リーグ28位と極めて遅いペースだった昨シーズンから一転して、リーグで最もペースが早いチームになりました。個人技スタートのオフェンスから脱却し、1試合当たりのパスの本数は287本から321本と激増し、アシストも3.3本増えるなど、チームオフェンスの意識が高まっています。
32.1本だった3ポイントシュートのアテンプトは、リーグ3位の41.9本へと増えましたが、シューターが強気に打っているわけではなく、ドライブとキックアウトの連続で崩した結果、ワイドオープンでのアテンプトが8.2本も増えています。ニコラ・ブーチェビッチとジェイレン・スミスのビッグマンがともに40%を超える成功率を記録するなど、パッシングオフェンスは各選手のシュート成功率の向上に繋がっています。
ボールを持って自分で仕掛けてクリエイトする仕事が減ったザック・ラビーンは、得点とアシストが減っていますが、フィールドゴール成功率51%、3ポイントシュート成功率43%と効率の良さが際立つようになりました。これまでよりも強引にシュートに行くシーンが減り、ドライブからのキックアウトでパスを散らし、オフボールで動きなおしてキャッチ&シュートでのフィニッシュが増えるなど、このオフェンスへの高い適性を見せています。
ギディーは7.0アシストでオフェンスを構築するだけでなく、リバウンドでも6.5を記録してブルズの課題を埋めています。そこからトランジションの起点になることで、チーム全体の走る意識を高め、その結果として速攻での得点も3.5増えています。本来はロンゾ・ボールに期待されていた役割をギディーが実行していますが、そのロンゾが本格的に戻ってくればチームスタイルの確立がさらに進むと期待されます。
ブルズのベンチメンバーはガードの選手が多く、またフィジカルに戦えるハードワーカーでもあるため、早いペースの戦い方にフィットしています。これまでロールプレーヤーの役割はデローザンやラビーンからの展開を待つことでしたが、次々にパスが回る今シーズンは各選手がアタックする機会が増え、多くの選手が活躍できるチームになってきました。
ギディーが速い展開を作り上げ、ラビーンやコビー・ホワイトのフィニッシュ力、ビッグマンのシュート力、そしてベンチメンバーのハードワークと、各選手の持ち味が目立つようになったブルズ。デローザンという絶対的なエースがいなくなり、オフェンスの構築に困るかと思われましたが、前向きな変化で新たなスタイルが作られています。