オリンピックの屈辱は「モチベーションと言っていい」
セルティックスのシーズン始動の会見で、ジェイレン・ブラウンは「明白な理由から、僕はやる気に満ちている」と語った。NBA優勝を果たしてもなお彼がギラギラと勝利に飢えている理由が、アメリカ代表に選ばれなかったからなのは間違いない。オリンピックのメンバーに入らず、カワイ・レナードがケガで抜けた代替メンバーの声も掛からなかった。NBA初制覇とファイナルMVPの喜びを半減させられた憤りは、数か月で消えるものではない。
では、NBA優勝とオリンピックの金メダルの両方を勝ち取ったジェイソン・テイタムはどうだろうか。彼もまた、自分の力を証明したいという意欲に満ちている。オリンピックでは2試合で出場なし。他にも豪華なメンバーが揃っていたとはいえ、優勝チームのエースがベンチを温めることになった。
「そうだね。シンプルに言えばそれはモチベーションと言っていいだろう」とテイタムは認めた。「僕のキャリアの中でもやはり特別な状況、これまでに経験したことのない状況であり、実際に大変だったけど、大会が終わってからジョー(マズーラ)とはその話をいっぱいしたよ。僕がファイナルMVPを逃し、オリンピックで2試合に出場しなかったのを世界で一番喜んでいるのは彼だ。ジョーがどういう人間か知っていれば分かるよね」
指揮官マズーラはセルティックスの選手の多くから「ブッ飛んでる」と言われ、同時にそれが理由で信頼されてもいる。勝利に執着し、その準備を決して怠らない。やることは無限にあるが、そのすべてをやり尽くそうとする。テイタムが慢心しないためなら、オリンピックで彼のプライドが傷つけられるのを微笑んで見ていられる。
そのマズーラはシーズン最初の会見で「オフを楽しんだとは言えない。パレードは楽しかったが、それだけだ」と淡々と語った。そして、勝利に対する執着心についての持論をこう語る。「このオフの課題は過去から距離を取ることだった。成功にも失敗にも執着してはならない。そこにとらわれると行き詰まってしまう。我々が取るべきバランスは、優勝の経験を活かしつつ、自己満足を払拭することだ」
テイタムはオリンピックの経験により、マズーラの望む通りのバランスでセルティックスに戻って来た。テイタムは言う。「昨シーズンのチームは信じられないほど素晴らしく、歴史を作った。今シーズンは『タイトルを守る』という意識はあまりない。ただ優勝を目指しているだけだ。この数年、僕たちは常に優勝を目指してきた。違いがあるとすれば、優勝するために必要なこと、優勝した時の気分の良さを知っていることだね」