「Bリーグで活躍している選手がハードワークした結果」
アジア予選を勝ち抜いてワールドカップ出場を決めたバスケットボール日本代表は、月曜に帰国した成田空港で大勢のファンに出迎えられた。これは今までになかったこと。田中大貴も「これだけ多くのメディアやファンが出迎えてくれたのは自分も経験してなかったことです。びっくりしましたし、またうれしさがこみ上げてきました」と語る。
大学時代から27歳の今まで日本代表でコンスタントにプレーし続けている田中は、勝つ経験も負ける経験もたくさんしてきた。「スポーツには付き物ですが、負けた時はいろいろと批判されますし、逆に良い結果が出ればこういった対応をしてもらえます。あらためてはっきりしてるなと思いますけど(笑)、これも苦しい状況でも自分たちがやり続けた結果です。その中でニック(ファジーカス)や(八村)塁、(渡邊)雄太の力は大きかったですが、今回は若い2人がいなかったですし、普段からBリーグで活躍している選手たちが合宿を含めてハードワークを続けて来た結果だと思っています」
12試合の長丁場、終わってみれば8勝4敗でグループ2位という好成績だったが、やはり感覚としては『苦しかった』部分が大きかったようだ。それは4連敗スタートの出だしもあるし、大きな期待がプレッシャーとなってのし掛かったからでもある。
「苦しいところで下を向かずにやってきて良かった。最後までやり続けないと何が起こるか分からない。それを自分はこの予選を通じて学びました」
「代表のコアメンバーに入っている」という自信
12試合のうちターニングポイントとなった試合として、田中が挙げるのはやはりホームでのオーストラリア戦だ。「ニックや塁がチームに勢いを与えてくれて、それがそのまま自分たちのペースになりました。彼らの背中を見て、自分たちはもっと頑張らないといけないと思いました。僕もその一人ですが、彼らが与えてくれた自信はすごく大きなものだと思います」
とは言っても、代表を長く支えてきた実績もあるし、8連勝に貢献し続けたという自負もある。「これで次にどんなメンバーが選ばれるか分かりません。それは競争ですし、そういう合宿をまたワールドカップに向けてやらないといけないと思います。ただ現実的な話として、チームのコアメンバーはヘッドコーチの中で固まっていると思います。そのコアなメンバーに塁や雄太が入って来て、どれだけ完成度を高められるかが大事です」
「メンバーはまた新しく変わるかもしれないですが、土台は今ある程度は決まっていると思います。そこからどう変化していくか」。そう語る大貴に代表におけるコアメンバーに自分が入っていると思うかと確認すると「そう自分は思っています」と力強い一言が返ってきた。
「代表のユニフォームを着て活動できる喜び」
田中には苦い記憶がある。Bリーグのスタートを控えた2016年の夏、リオ五輪に向けた世界最終予選のメンバーから最後の最後で外されたのだ。「苦しいところで下を向かずにやってきて良かった」という言葉は、そこからBリーグができての田中の道のりにも相通じる。
「プライドが傷付いたとは思いませんが」と田中はあの夏を振り返る。「自分に力がなかったと思います。あそこで外れたことで、自分に何が足りないんだろうって考えたし、代表のユニフォームをもう一度着る難しさとか、着ることの重みを知りました。もちろん世界最終予選に出たかったし、あそこで外れたことは自分にとってはマイナスだったと思っていますが、その経験があったからこそ、代表のユニフォームを着て活動できる喜びを感じられますし、昔よりも自信を感じてプレーできていると思います」
「あの頃は自分が代表で何を求められているのか、そこが曖昧でした。自分では何でもできると思っていましたけど、試合でそれがしっかり出せないとか。今はチームにまずディフェンスでエナジーを与えることが役割だと思いますし、そこをヘッドコーチからは期待されています」
下を向かずに努力を続けることで、日本トップクラスの2ウェイプレーヤーは成長の勢いを止めず、どんな時でもチームに貢献できる頼もしい存在であり続けている。