文=鈴木健一郎

恩師の退任について「正直、残念な気持ちもありました」

12月20日、男子日本代表の第1回重点強化合宿第2部がメディアに公開された。Bリーグ西地区で首位を快走するシーホース三河の司令塔、橋本竜馬の姿もそこにはあった。前日本代表ヘッドコーチの長谷川健志の下でリオ五輪世界最終予選を戦った橋本だが、気持ちを新たに再スタートに臨んでいた。

体制が変わったことに対しては、素直な思いをこう打ち明ける。「正直、残念な気持ちもありました。自分がこうやって代表に選んでもらったのも、それを見ていただいたり、大学の時に教えていただいた長谷川さんのおかげなので」

「しかし、そこは自分もプロですので、日本代表が良くなっていくための決断だと切り替えないといけない」。そんな強い気持ちを持って、新たな代表チームでの第一歩を踏み出した。

ルカ・パヴィチェヴィッチはテクニカルアドバイザーであり、ヘッドコーチではない。だが、来年夏に正式なヘッドコーチが着任するまでは、実質的にチームの指揮を執る。そのパヴィチェヴィッチのバスケットについて、「監督が変わるということはバスケット自体がガラッと変わると思います」と前置いた上で「ルカコーチは厳しく、細かく指示があるのでその中でどうやってアジャストしていくか、求められてきたことをしっかりやらなければならない、という新たな気持ちです」と語る。

「ルカのバスケットはディフェンスを固く守って、その中でファーストブレイクを出しながらオフェンスを組み立てていくところなので、ディフェンス中心のコーチなのかなと思います」

午前中に練習を行った第1班では、ポイントガードの橋本と鈴木達也に特に細かく指示を与えていた。「位置とかはほんとに厳しくて、ここでパスしてほしいという場合、本当にここじゃないとダメですし、タイミングも要求されます」

だが、その厳しさが橋本にとっては新たな発見であり、刺激となっている。「自分の中で癖になってる部分もあります。チームに帰って意識しながらやっていかないとなかなか抜けていかないと思うので、基本に忠実にやらなければならないということを再確認させられました」

意外にも、橋本にとって外国人コーチの指導を受けるのは初のことだそうだ。「ワクワクもしましたし、同時に厳しいというか、バスケットの細かいところにこだわるなというのを感じました。自分の中で新しい感覚、教えられる感覚もあったのですごく勉強になりました」

目指すべきスタイルは『激しさの中でスマートにやること』

代表が新体制となるにあたり一つ大事なのは、『長谷川時代』に築き上げたものを捨てる必要はないということだ。継承すべきものはしっかりと継承し、その上に新しいものを積み上げていく。そういう意味では前体制のバスケットを熟知している橋本のような選手が『橋渡し役』になる必要がある。

この『継承すべきもの』を橋本は「ハードワーク」だと言う。「ハードワークは必ず基本としてあります。ガード陣が激しいディフェスからインサイドも連動していきながらやらないので、激しさという部分は求められていました」

そして、新たに積み上げていくものとして「スマートさ」を挙げた。「激しさの中でスマートにやること。行きすぎるヘルプだったり、やりすぎることはするなということも言われました。その中でポジションを守ったり、約束事を守ったりするということをスマートにやれとすごく強調されていたのでそこは加わったところかなと思います」

『ハードかつスマートに』──。まさに橋本のプレースタイルを形容するにふさわしい言葉ではないだろうか。

「僕自身もいつも意識しています。世界でピック&ロールが主流になっているのでその幅を増やしていかなければならないです。自分の引き出しを増やすためには、そこでストップする力やパスを出す力、そういうものをプラスしていかなければならないと感じました」

来年からワールドカップの予選が始まり、その道が2020年の東京オリンピックへと繋がっていく。日本代表は実力を高めながらその道を進んでいかなければいけないし、それぞれの代表選手は常にアピールして『生存競争』を勝ち抜かなければならない。

「代表選手になることはすごく光栄ですし、目指さなければならないところです。自分がステップアップする意味でも、ワールドカップ予選や東アジア、ワールドカップにももちろん出たいです。そのためにはしっかりとレベルアップしながら、そして結果も残しながらやっていかなければならないので、そういう意識を持って毎日を過ごしていきたいです」

代表の常連となり、チームでも結果を出している橋本だが、その向上心の高さ、バスケに取り組む姿勢には脱帽だ。この意識の高さと持ち前のリーダーシップで代表生き残りレースに挑む。