リズムに乗ったかに見えたレイカーズ、またしても『崖っぷち』に
今シーズンのレイカーズは荒波に揉まれている。2勝10敗とどんな予想をも下回るスタートの後は少しずつチームバスケが形になって、現在は12勝16敗まで持ち直している。そしてこの数日は上昇気配が強く出ていた、セルティックス戦で突如としてすべての歯車が噛み合い、最後はオーバータイムで敗れたものの、結果を除けばシーズンベストのパフォーマンスを発揮。3日後にはそのパフォーマンスを継続し、ニコラ・ヨキッチを擁するナゲッツに圧勝した。
「さあ、ここから」と言いたいところだが、そうはいかないのがレイカーズだ。ナゲッツ戦の前半、ヨキッチとの接触で右足をひねったように見えたアンソニー・デイビスが後半はプレーできず。検査の結果、少なくとも1カ月は戦線離脱となる。
今シーズンのデイビスは27.4得点、12.1リバウンドを記録。これはいずれもレイカーズが優勝した2019-20シーズンを上回る数字で、なおかつヤニス・アデトクンボやヨキッチとのマッチアップを五分以上に持っていくディフェンスの貢献度も目立っていた。
今シーズンのレイカーズでは、レブロン・ジェームズの試合における影響力が低下している。レブロンはレイカーズでの2年目、これまでヒートやキャバリアーズでそうしてきたように自分中心のバスケで勝とうとせず、デイビスと並び立つことでNBA優勝を成し遂げた。そのパワーバランスは今シーズンになってまた変化を見せている。レブロンはさらに一歩引き、デイビスがより多くの主導権を持つようになった。またラッセル・ウェストブルックがプレーしやすいようにボールを預け、ピック&ロールを使う回数もアイソレーションの回数も減った。37歳の年齢による衰えではなく、チームを機能させるために、他の選手に今まで以上にプレーを譲るようになったのだ。
そんな試行錯誤の末に、ようやくレイカーズは今のロスターで最高のパフォーマンスを発揮する方法を見いだしたかに見えたが、ここでデイビスが長期欠場となれば、すべてはやり直しとなる。レブロンが一歩引いた今、レイカーズの軸はデイビスであり、攻守とも彼が中心となる。さらに深刻なのは、1カ月後にどれだけコンディションが回復しているかが読めないことだ。
デイビスがレイカーズに来て4シーズン目を迎えているが、彼がコンディションの不安なくプレーできたのは優勝した1年目だけで、その後は常にケガに苦しめられている。それが今後も続くとなると、レイカーズの浮上は望めなくなる。
持ち直してきたとは言え、12勝16敗は『崖っぷち』だ。プレーイン・トーナメントに回らずプレーオフにストレートインする6位までは4ゲーム差。デイビスが万全のコンディションを取り戻して復帰しても、その時にこの差が大きく開いていれば意味はなくなってしまう。
さらに言えば、デイビスが戻って来るであろう時期はトレードデッドラインに向けてシーズン最後のテコ入れ策を決断する時期でもある。デイビスという軸を失ったことで、トレードによる補強をどうするのかも非常に難しくなった。ウェストブルックに1巡目指名権を付けてのブラッドリー・ビールを獲得するような大胆な手を打つのは、これまで以上にやりづらくなる。
そして、チームの行く末の仮説を悪い方へ悪い方へと向かせないために、キャリア20年目の37歳、レブロン・ジェームズには再び試合を支配するパフォーマンスが求められる。ナゲッツ戦ではデイビスの負傷後にトーマス・ブライアントが素晴らしいプレーでその穴を埋めた。他にもオースティン・リーブス、トロイ・ブラウンJr.やマックス・クリスティーにはさらなる活躍が求められるが、デイビスに代わってレイカーズの軸を務められるのはレブロン以外にあり得ない。
レブロンとしては、今シーズンを無駄にしないためにはこの大きな負担を再び受け入れるしかない。デイビス抜きの期間を最低でも勝率5割で乗り切ることができるか。それ次第で、2月9日のトレードデッドラインのレイカーズの動きは明暗が大きく分かれることになる。