昨シーズンの名古屋ダイヤモンドドルフィンズはレギュラーシーズンで34勝15敗と、Bリーグ誕生以降ではチーム最高勝率をマークした。外国籍選手の相次ぐ負傷離脱が響いてチャンピオンシップでは初戦で敗れたが、確かな進歩を感じられるシーズンとなった。そしてショーン・デニスヘッドコーチ体制2シーズン目かつ主力選手も揃って残留と、ケミストリーの高まりによるさらなるステップアップが楽しみな今シーズン。注目の新戦力として加入するのがモリス・ンドゥールだ。セネガル出身のンドゥールは高校時代、留学生として岡山学芸館で活躍。その後、アメリカの大学に進学すると、欧州屈指のトップクラブであるレアル・マドリード、NBAを経験し、今も日本各地の高校でプレーしている留学生選手の中で最も輝かしいキャリアを送っている。名古屋Dの新たな攻守の柱として大きな期待を集める彼に日本凱旋への思いなどを聞いた。
「ずっと日本に戻りたいと思っていた」中で名古屋Dからの熱心なオファー
――まずは、おかえりなさいと言わせてください。高校生以来、久しぶりの日本復帰となりますね。
ずっと日本に戻りたいと思っていたので、名古屋Dからオファーがあった時はハッピーでした。僕にとって日本は、バスケットボールにおけるすべてがスタートした場所です。そこでプレーできる機会が来たので興奮しました。若い時は日本への気持ちに加え、NBAやヨーロッパのビッグクラブでもプレーしてみたい思いも強かったです。ただ、今シーズンはプロ8年目とベテランとなりましたし、日本に戻るのに良いタイミングでもありました。その中で名古屋Dは、僕に多くの関心を寄せてくれ、どれだけ必要としてくれているのか気持ちを示してくれました。だから断る理由がなかったです。日本でプレーすることは僕にとってゴールの一つであり、僕のキャリアにとって大事なことです。
――実際に名古屋に着いて日本での暮らしを始めると、懐かしさを感じることはありますか。
とてもノスタルジーを感じています。名古屋は高校時代、フェニックスカップに出場した時に訪れた場所です。街中を歩いて看板を見たり、食事をしたりするといろいろと思い出します。(日本語で)懐かしいです。まず、日本に着いて食べたのはカレーやチャーハンです。この2つは昔から好きなんです。
日本人の皆さんは礼儀正しく、すべてがしっかりと運営されています。例えば電車はちゃんと時間通りに来ます。また、僕は大きいので車内ではみんなの視線が集まり、こういう部分でも日本に帰って来たんだなと思います。
――ンドゥール選手は高校時代、日本語がとても流暢でした。今、自身の日本語は昔に比べるとどれくらい戻っていると思いますか。
今の日本語は当時に比べると20%くらいかもしれないです。簡単な会話は日本語でもできると思います。リスニングはよくてもスピーキングが難しいかもしれないです。ただ、日本に戻って来て日本語をしゃべる環境にいるので、どんどん良くなっています。
――今回の日本復帰について、高校時代のチームメートはどんな反応でしたか。
岡山学芸館のチームメートとは、今でもとても仲が良いです。何人かは僕がアメリカの大学でプレーしている時に会いに来てくれました。僕が日本に戻ってくることを聞いて、とても喜んでくれていて、名古屋まで試合を見に来てくれる予定です。ようやく彼らはプロ選手としてプレーする僕の姿を見ることができます。また、僕も岡山を訪れるのは間違いないです。それは絶対にやらないといけないことです(笑)。
欧州での経験で、よりバスケットボールを簡単にプレーできるようになった
――高校生活における印象的な思い出を教えてください。
高校の一番の思い出はウインターカップで学校初となるベスト8に進出したことです。僕が高校2年、3年生の時、チームは県内で負けなかったと思っていて、これは素晴らしいことです。あとは寮の近くにある山に登っていたことです。よく走って行って、岡山の街並みを見たのが良い思い出です。
高校の時はよく走っていて「(日本語で)やばかったです」(笑)。ただ、それによってメンタルタフネスはつきました。また、最も感謝したいのはケガがなかったことです。当時、僕が知っている他の留学生は膝を故障していました。3年間、厳しい練習を乗り越えたことで大学、プロの練習ともに楽でした。それは高校時代に心身ともに厳しい練習に耐える準備ができていたからです。
――Bリーグについては事前にどの程度知っていましたか。
多くのBリーグの試合を見たわけではないですが、同じ大学出身のジェローム・ティルマンなど何人かBリーグでプレーしていた選手たちが知り合いにいます。彼らからどんな状況なのか聞いていましたが、そんなに詳しくはないです。
ただ、Bリーグの会場の雰囲気は素晴らしいですね。プレシーズンゲームであそこまでお客さんがいるとは思わなかったです。レギュラーシーズンではより多くのお客さんが来てくれることが楽しみです。多くの子供がいたり、家族連れの方たちもいて、それはとても重要なことだと思います。
――ンドゥール選手は欧州での経験が豊富ですが、スタイルに関してBリーグとどんな違いを感じますか。
違いは間違いなくあると思います。ただ、Bリーグでのプレー経験が少ないので正確に話すことはできないですが、現時点での印象だとテンポはとても速いです。また、Bリーグの方がオフェンスでは自由な印象はあります。ユーロリーグではとても組織化され、ほとんどのポゼッションでしっかりチームオフェンスを組み立てます。テンポとシュートセレクションには違いがあると思います。
――欧州では特にどんな部分が成長できたと思いますか。
レアル・マドリードでプレーした時、いろいろと苦労しました。アメリカとは少しスタイルが違う中、ゲームを学んでバスケットボールIQを高めなければいけなかったです。この経験を積むことで、僕はバスケをより簡単にプレーできるようになったので感謝しています。今は年齢を重ねていくことで、さらに成長していると思います。
エナジーをチームにもたらし、攻守ともに多彩さが自分の持ち味
――名古屋Dは、リーグでも屈指のタレント集団だと思います。中でも日本人の選手層はとても厚い印象です。
日本人選手はとても能力がありますし、強い気持ちを持っています。彼らと一緒に楽しんでプレーできることは分かっているので、シーズン開幕が待ちきれないです。みんなスキルがあり、彼らの実力について何も心配する必要はないです。
――ンドゥール選手は、どんなプレーで名古屋Dに貢献していきたいと考えていますか。
僕は多くの経験を積んできました。NBAに加え、ヨーロッパを代表するトップクラブでもプレーしてきました。そして、エナジーをチームにもたらし、コミュニケーション能力が自分の持ち味なので、チームのまとめ役となれると思います。また、個人技に頼る選手ではなく、ボールをよく動かすことができる。相手が僕を抑えたかったら、この点についてアジャストしなければいけないでしょう。攻守ともに多彩さが強みだと思います。
――スタッツやプレータイムについて、目標にしている数値はありますか。
プレータイムがどれくらいなるかなど、スタッツに関しては気にしていないです。重要なのは、どれだけゲームにインパクトを与えられるかです。例えば1試合30分、40分とプレーしても、人々がそんなに長くプレーしていると感じられない様子だったらそれは良くないことです。
――今も日本では多くの留学生選手がプレーしています。ンドゥール選手のようなキャリアを歩みたいと思う選手たちはたくさんいます。
代表活動でセネガルに戻った時、僕と同じように留学生でプレーしていた選手たちと会ったことがあります。彼らが僕のことを知ってくれていた時は、「なんで知っているんだ」という驚きとともにうれしかったです。僕が日本の高校を経てアメリカに行ってプロ選手となり、今こうして日本に戻ってきてトップリーグのプロチームでプレーする。これが彼らのモチベーションや指針になってほしいと思います。僕がプロで活躍する姿を励みにしてもらいたい。僕ができるのだから、彼らもきっとできる。そういう気持ちになってもらいたいです。
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
名古屋Dでプレーできることにエキサイティングな気持ちです。皆さんチームの応援をよろしくお願いいたします。シーズン中、多くの浮き沈みはあると思いますが、チーム一体となってハードワークをして勝利のためにプレーします。そしてチャンピオンを目指すのが僕たちの目標であり、そのメンタリティで戦っていきます。