ベンチメンバーの貢献度が勝敗を分ける鍵に
3月15日、琉球ゴールデンキングスは天皇杯決勝でアルバルク東京との壮絶なロースコアゲームに60-49で勝利。記念すべき第100回大会で、チーム初、そして沖縄県勢初となる天皇杯制覇を成し遂げた。
激しいフィジカルによる強度の高いディフェンスを持ち味とするチーム同士が一発勝負の大舞台で対戦すれば、ゲーム運びは自然と慎重になるもの。試合は序盤から激しい削り合いの、ロースコアの展開となった。
そんな均衡した試合の主導権を琉球が握れたのは、ベンチメンバーの活躍が大きかった。先発メンバーの戦いは互角でも、ベンチメンバーではA東京は安藤周人が12得点と奮闘したが、彼以外に流れを変えた選手はいなかった。一方の琉球は、脇真大が積極的なドライブを見せると、ケヴェ・アルマも豪快なダンクに4つのオフェンスリバウンド、そして司令塔の平良彰吾も攻守に渡って活躍した。
桶谷大ヘッドコーチもこう語る。「こういうゲームはセカンドユニットだったりベンチメンバーがどれだけ活躍できるか。マークされている選手以外でどれだけ活躍できるかが鍵となる試合と思っていました」
特に両チームのベンチで差が生まれたのは司令塔のポジションだった。A東京はテーブス海に頼りきりだったが、琉球は「彰吾は(岸本)隆一が足をつった時に出てきてゲームを繋いでくれました」と桶谷ヘッドコーチが称えるように平良が11分22秒出場、要所で悪い流れを断ち切るシュートを決めるなど、見事な働きを見せた。
5得点1アシストのスタッツ以上のインパクトを残した平良は、「本当にうれしいです。ずっと言っていますが、信じられないことが起きてありがたいです」と語る。
平良が「信じられない」と強調するのは、琉球へ加入した経緯にある。今シーズンの琉球は、岸本と伊藤達哉のポイントガード2人体制でスタートしたが、伊藤が開幕戦で負傷離脱。それでB3の横浜エクセレンスに所属していた平良が、10月15日から11月13日までの期限付き移籍で加入した。その平良が活躍したことで、横浜EXの寛大な対応もあり、今シーズン終了まで琉球に所属することになった。
「与えられたチャンスを頑張ろうと思っているだけ」
この背景があるからこそ、今の平良は「本当にありがたいです」と感謝を強調する。「そもそも、このチャンス自体をもらえなかったかもしれない中で、優勝できたことはありがたいですし、うれしいです」
大舞台での見事なプレーについては「チームのために良いプレーをして、良い流れを持っていけるようにしなければいけないと毎日思っています。今日は少しは良い流れを作れたかなと思います」と、手応えを語る。
大舞台でロースコアの展開となれば、控えポイントガードは受け身のプレーで先発に繋ぐだけになってもおかしくない。しかし、平良は初のタイトルの懸かった試合でも臆することなく、「打てる時は打っていこうと思っていました。スペースが空いていたので、思いきりよく打ったのが入って良かったです」と、積極性なプレーを貫き、それが貴重な得点へと繋がった。
ちなみに平良の期限付き移籍の延長が決まる前、桶谷ヘッドコーチはこう語っていた。「B1、B3と場所が違うだけで、平良彰吾は平良彰吾です。彼はどのカテゴリーにいても、彼に合った役割を与えることで活躍できる選手だと思います。大事なのは、選手に適した役割を与えられるか。その上で平良のようにしっかりとチーム内の役割を理解してプレーできたら、彼以外でもB1で活躍できるB3の選手はいると思います」
平良のステップアップは少なくない選手に勇気を与えているが、彼自身は「自分は与えられたチャンスを頑張ろうと思っているだけです。それが誰かの力になってくれたら良いです」と謙虚な姿勢を崩さない。
トップチームでタイトルを争う戦いに身を投じている現状を、平良は「信じられない」と何度も繰り返す。だが、彼の活躍を目の当たりにするバスケファンの多くは、彼がシーズン開幕をB3で迎えたことを「信じらない」と感じている。