NBAのスキル解説vo.1 コービー・ブライアント「センター顔負けのポストムーブ」

2016/04/21
NBA&海外
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文=岩井貞憲 構成=ゴールドスタンダードラボ 写真=Getty Images

「シグネチャースキル」(表の動き)を軸に、NBA選手の技術を解説。

バスケットボール・プレーヤーに向けてNBA選手のスキルを解説する連載。第1回目は、2015-16シーズンを最後に引退した、NBAのレジェンド、コービー・ブライアントです。

コービーの経歴はもはや説明不要。17歳でNBA入りし、20年の現役生活でNBA優勝5回、得点王2回、ファイナル・シーズンMVP各1回など、輝かしい成績を残してきました。最も特徴的なのはその得点力。NBA歴代2位の、1試合81点というとんでもない記録を残したことも記憶に新しいですね。

こうした類まれな得点能力は、マイケル・ジョーダンを彷彿とさせるような空中でのプレーや、身体能力があるからこそ成せるものと見ることができますが、実際は1on1におけるファンダメンタル(基礎)も高いレベルにあります。トリプルスレット(シュート、ドリブル、パスの選択肢があり、また即座にこれらの動きに繋げられる状態)でのボールの動かし方、ドライブもしくはポストムーブでのストップ、ターン、ステップなど、1on1においてミスにつながる(状況を妨げる)プレーが少ないも特徴です。

そこで今回は、コービーのファンダメンタルの真髄を見ることができる、ポストムーブを解説することにします。コービーのポストムーブは、ドリームシェイクと呼ばれるポストムーブを駆使した往年の名センター、アキーム・オラジュワンが「自分が指導した中で最も成功した選手」と述べるほど素晴らしい動きを見せています。

ペイントエリアを攻める方法は基本的に3つあります。①ドライブ、②ポストムーブ、③カッティング。ボールを持った選手が直接攻める方法はこのうち①と②になります。

統計的に見て、オフェンスで最も効果的なシュートシチュエーションはペイントアタック(ペイントエリア内に侵入しての攻撃)です。コービーはドライブからもポストムーブからも、ペイントエリアを攻めることができる選手。ちなみに、2016年のNCAAファイナル(全米大学選手権)で優勝したビラノバ大学のガードプレーヤーたちも、状況に応じてポストムーブを見せていました。

コービーのプレー構造を、状況に応じて分解し、考察する。

ポストムーブの一連の動きを分解すると、以下のように分けられます。
A.セットアップ:1on1が始まる前の状況
B.プライマリー:オフェンスの基本的な攻撃方法
C.アタック:シグネチャースキル(表のプレー)
D.カウンター:アタックに対する裏のプレー
E.オプション:アタック&カウンターから派生するプレー

では、それぞれを詳しく見ていきましょう。


A.セットアップ:1on1が始まる前の状況

ポストムーブの入り口としては、①ローポストでボールをもらう、②クラブドリブル(押しこむドリブル)でアウトサイドからローポストまで押しこむ、の2つに分けることができます。どちらでポストムーブが始まったとしても、ドリブルを突いた状態からスキルを発揮することが多くなります。


B.プライマリー:オフェンスの基本的な攻撃方法 「ジャンプペネトレーション」

ローポストからミドル方向(コート中央)に進むようにドリブルします。ディフェンスと自分の肩をぶつけるようにドリブルで押し込み、このとき肩がセンサーの役割を担います。まっすぐミドル側に進めるのであれば、ロングジャンプもしくはランニングステップでアタックするようにします。例えば初めからターンアラウンドではなくてプライマリーのようなアタックがあると、選択肢が生まれディフェンスとの駆け引きができるようになります。


C.アタック①:シグネチャースキル「ターンアラウンド」

ミドル方向にクラブドリブルを行いながらリングに背中を向けるようにジャンプストップ、その際に左右に刻むようなショルダーフェイクを入れます。ジャンストップをしているため、左右どちらにもターンすることができます。ディフェンスとリングから離れるようにターンを行いジャンパーを行います。


D.カウンター①-a:アタックに対する裏のプレー「ステップイン」

アタック①のターンアラウンドを行った際に、ディフェンスがブロックに飛んできたら、リング方向にステップを踏みブロックを回避します。


C'.アタック②:シグネチャースキル「スピンムーブ」

もう1つのアタックスキルはスピンムーブ。セットアップは同じ状況です。ディフェンスの力が強い場合は、ストレートにアタックできない可能性やターンしてもディフェンス優位な状況で間合いをつめられる可能性があります。その場合は力の強いディフェンスに寄り掛かるようにスピンする軸を作り、ドリブルとは逆の手でボールをむかえにいくようにしてスピンします。基本的にはベースライン側にドライブを行うことになるので、合わせてバックシュート系のスキルがあると効果的です。


今回は基本のポストムーブを紹介しましたが、コービーのポストムーブはこれ以上にもさまざまなバリエーションがあり、見ているだけで勉強になります。

NBAなどを見る際には、自分の中にスキルリストを作り、行われたプレーがどこに当てはまるかを考えてカテゴライズしていくとよいでしょう。すると、この選手はこのアタックが得意なんだなというのが少しずつ分かるようになります。

どういったスキルをよく使うのか、どのようにスキルが成立するのか、なぜそのスキルが有効なのかを考えていくと、NBAの攻防がより面白く見えてくるかと思います!

今色々な選手のスキルが紹介されています。理論的にそういった選手たちのスキルを分析することは可能になりますが、大事になってくるのは教えている対象の選手がこういったスキルを紹介してスキルアップすることに意味があります。私も試行錯誤しながら指導にあたっております。

NBAのスキル解説
vol.1 コービー・ブライアント「センター顔負けのポストムーブ」
vol.2 ジャマール・クロフォード「クロスオーバー~バックチェンジ」
vol.3 アイザイア・トーマス「スモールプレーヤーの得点スキル」
vol.4 カイリー・アービング「ペネトレイトからのフィニッシュワーク」

PROFILE 岩井貞憲(いわい・ていけん)
1987年生まれ、千葉県船橋市出身。「バスケットボールを通じて、最善をつくす喜びを知る選手を育てたい」を指導理念とする。