代表デビューから約2年で、エース&キャプテンへと成長
東京オリンピックという大きな目標が終わったばかりだが、女子日本代表はアジアカップに向けて再始動した。9月27日の開幕を前にチーム作りが最終段階に入っている今日、代表選手たちが会見を行った。
東京オリンピックでは日本代表の銀メダル獲得に大きな貢献を果たした林咲希は、ベテラン勢が参加しない今回のフレッシュな日本代表ではキャプテンを任されている。振り返れば2017年にはユニバーシアード日本代表、2018年はアジア競技大会の代表チームに参加していたが、日本代表での正式なデビューはわずか2年前、2019年6月のことだ。
所属するENEOSサンフラワーズでプレータイム確保に苦しんでいる状況で、迷いながらも努力を続けてメンバーに入ると、アジアカップ決勝の中国戦で、劣勢を覆す3ポイントシュート連発で優勝の立役者となった。その後、2020年2月のオリンピック予選では渡嘉敷来夢とともに大会ベスト5に選ばれた。そして迎えた2021年の東京オリンピックではエースシューターとして大活躍。日本の生命線である3ポイントシュートを担い、見事に結果を出した。
2年前はルーキーだった彼女が、キャプテンになってアジアカップに戻ってこようとしている。
「オリンピックが終わってちょっとバタバタしましたが、合宿に入って集中する環境になったことで、コンディションは上がってきています。オリンピックでは3ポイントシュートを注目されましたが、今回は3ポイントシュート以外のことも率先してやっています。3ポイントシュートを止められた時に何ができるか、というオリンピックで出た課題を元に自分で励んでいます」
恩塚ヘッドコーチ「お互いを高め合うリーダーシップに期待」
今回の日本代表は、恩塚亨がヘッドコーチを務める。トム・ホーバスとは戦い方を変え、3ポイントシュートよりもアジリティ、連携とスピードに重点を置いたバスケを目指す。その中心選手を担う林のプレースタイルも自ずと変わってくる。
「今はスリーにあまりこだわらず、ズレを作ること、速さや足を使ったプレーを意識しています。海外の選手は大きいので、パスの正確性や意思疎通を大事に今はやっています」と林は言う。
「個人の判断が本当に必要になってきます。一瞬一瞬の動き、ボールを持っている人が何を考えているのかを、コートにいる一人ひとりが考えればズレができるとコーチは言っているので、それを練習中から意識しています」
オリンピックに向けて全員が100%を出しきってバスケに取り組み、銀メダル獲得という結果を出した。その後、ほとんどオフも取らずに違うコンセプトでプレーするのは相当に厳しいはずだ。それでもどの選手も新しいスタイルを前向きに吸収しようとしている。キャプテンである林は、率先して新たなバスケ、新たな役割を理解し、実践しようとしている。
「オリンピックが終わって自分も新しいスタイルで、最初は難しいと思っていましたが、今は練習を重ねるにつれて一人ひとりが分かるようになってきました。5対5でも原則を守りつつ、『ここが攻め時』とかが分かってきた。オリンピックと同じプレーをしないことが自分としてはキーポイント。同じことをやっても相手がアジャストしてくるので、同じような気持ちを持ってみんなでやっていくのが大切だと思います」
恩塚ヘッドコーチは先日の取材で、期待を寄せる選手として林の名を挙げ、こう語っている。「シュートは世界トップレベルの力を持っています。一方で気持ちの作り方、ポジティブな気持ちで自分自身とチームメートを常に良い状態にできるところ。高圧的になることなく、相手を信頼して話ができる。お互いを高め合う言葉掛けのできるリーダーシップに期待しています」
26歳の林はチームリーダーの役割を担うことで、精神的にも大きく成長できるはず。アジアカップの戦いは決して簡単ではないが、林を筆頭に今回もよくまとまった、それでいて東京オリンピックとは少し趣の変わったバスケを展開してくれるに違いない。