アメリカのホルムグレン、フランスのウェンバニャマ、セルビアのヨビッチ
アメリカの優勝で終わったU19ワールドカップでは、各国の将来性溢れる若い才能のぶつかり合いとなりました。ポジションレスの時代を象徴するように様々なプレースタイルの選手がいましたが、その中でも大会ベスト5のうち3選手は、近い将来にNBAで活躍できると期待できるパフォーマンスを見せました。
大会MVPに選ばれたアメリカのチェト・ホルムグレンは、215cmの高さと卓越したシュート力で、フィールドゴール成功率62%を記録しました。センターながらアウトサイドに出ては高い放物線の3ポイントシュートを決め、さらに自らが空けたインサイドのスペースに飛び込んでくるチームメートに的確なパスを通していく器用さも持ち合わせています。
細身の身体でフィジカルの強みがない一方で、ハンドリングスキルを生かしたドライブからディフェンスの間を抜けるのが上手く、身体の半分でも前に出れば長いストライドを使ったステップとウイングスパンで、ディフェンスの手が届かない位置にボールを運んで確実なフィニッシュに繋ぐパターンを持っています。何でもできる選手のため、ディフェンスするのが極めて困難な選手です。
19歳のホルムグレンは来年のドラフト1位の有力候補ですが、再来年のドラフト1位候補として挙げられているのがフランスの17歳ビクター・ウェンバニャマで、決勝ではホルムグレンの前で22得点8リバウンド8アシストと大活躍しました。219cmと圧倒的な高さを持つウェンバニャマも3ポイントシュートまで決める選手ですが、同じフランスのルディ・ゴベアのようにディフェンス面での貢献が大きく、7試合で33ブロックと2位に13本の差を付けてブロックリーダーとなりました。
オフェンス面でもポストアップからのフェイダウェイシュートもあれば、巧みなステップワークからスピンムーブでのフィニッシュも見せており、フィジカルの強さはなくても華麗なプレーでディフェンスを手玉に取りました。ただ、フィールドゴール成功率は46%とやや苦戦しており、1カテゴリー下の選手らしく未完成な一面もありました。
この2人ほどの評価はされていなかったものの、高い完成度を見せたのがセルビアの18歳ニコラ・ヨビッチでした。得点ランク3位となる平均18.1得点は、3ポイントシュート成功率36%を記録したシュート力と、ドライブからの多彩なフィニッシュ力から生み出されました。208cmの長身ですがインサイドではなくアウトサイドからのプレーが中心で、今シーズンのMVPとなったニコラ・ヨキッチを生み出したセルビアらしいオールラウンドタイプです。
速攻の先頭も走ることができ、得点力の高いヨビッチですが、自らのボールハンドリングで動きながら、広い視野を確保してアシストもできるため、フィニッシャーではなくプレーメーカーとしての能力が目立ちました。評価は分かれそうではあるものの、個人での強み以上に様々なタイプの選手のコンビで魅惑のチームオフェンスを作り出してくれそうです。
U19には各国に高い能力を持った選手がいましたが、この3人は能力以上に『個性』が印象に残りました。選手としてプロに進んでいく年代においては、能力の高さは当然として、アピールできる自分の武器があることも重要です。高校3年生ながら日本のリーディングスコアラーになった山﨑一渉も他の選手にはない得点の取り方をしており、それが世界大会でも通用する個性になっていました。オールラウンドなプレーが常識化してきた中で、今後は多用な個性をチームの中で活用していくことが進んでいきそうです。