佐賀バルーナーズは昨シーズン、主力選手の相次ぐケガに悩まされ、22勝38敗の西地区7位と苦しんだ。しかし地元出身の角田太輝は、困難な状況だからこそ得られた経験があったと前を向いている。外国籍選手のロスターが変化し、スタイルが変わることが見込まれる新シーズンに向けての意気込みを聞いた。
「起点となってボールをシェアする意識が高くなった」
──昨シーズンの振り返りをお願いします。
チームとしてケガに悩まされたシーズンでした。特にジョシュ(・ハレルソン)が離脱した後は、リバウンドが取れず、オフェンスでもスペースが削られてバランスを欠いたことで連敗に繋がりました。僕が起点になってオフェンスをクリエイトできれば、 もう少し違った状況になったかもしれません。
──ハレルソン選手が復帰してからは11勝8敗と勝ち越しています。シーズン序盤も連勝していますし、欠場者がいなければもっと勝てる手応えはありましたか?
ジョシュがいない間に先発のメインポイントガードを経験したことで、ピック&ロールを使った展開が増え、レイナルド(ガルシア)の打開が生まれました。金丸(晃輔)選手の3ポイントも好調でしたし、自分のクリエイトが勝ちに繋がったという感触はあります。ただ、ジョシュが離脱したことで、彼はプレー以上にメンタルでチームを支えてくれていたんだなと痛感しました。
──ハレルソン選手が離脱したことで、角田選手が新しく経験できたこともありましたか?
オンザコートルールの都合で、ガードのレイナルドにもプレータイム制限がかかった結果、自分のプレータイムがより長くなりました。得点力の高いレイナルドがいない時間帯にポイントガードを務めることが多くなったことで、積極的なプレーができるようになったのは良い経験でした。レイナルドと一緒にコートに立つときは、彼に任せてしまう部分もあったんですが、1人で担うことによって責任感は大きくなりましたし、オフェンスの起点となってボールをシェアしていく意識が高くなりました。
──確かに、B2だった2022-23シーズンまではガルシア選手と併用される時間帯が長かったので、自由にプレーしているイメージがありましたが、翌シーズン以降はポイントガードを任される時間帯が増えて、試合の流れなどを考えてプレーしている印象があります。
本当にB2の時よりも考えることは増えましたし、自分のプレーの良し悪しよりもチームでセットプレーをしっかり遂行させるなど、チームをまとめる意識は強くなりました。ヘッドコーチからも強く求められていたので、それがプレーに表れていたかなと思いますね。
──こちらも私の勝手な印象ですが、ポイントガードをやることが多くなったことで、バスケットの楽しさを再発見しているように見えました。
その通りですね。以前は単にシュートを決めることが楽しかったですが、ボールを持ってコントロールすることが増えた今は、得点よりも自分が組み立てたオフェンスでうまくいった時に「楽しいな」と思える場面も増えました。
──一方で、チームとしてはもう少し3ポイントシュートをうまく使っていきたいけど、それができずに苦しんだ印象もあります。
ヨーリ(チャイルズ)のインサイドプレーに頼り、ボールシェアがうまくいかない時間帯が少なからずありました。チームとして3ポイントを打つ本数を増やしたかったですけど、ケガ人の影響もあってオフェンスの形は変わってしまいました。
「アタックをもっと増やしていきたい」
──佐賀はディフェンスが信条のチームだと思いますが、23-24シーズンは103.8だったディフェンシブレーティングが24-25シーズンには110.6になってしまいました。ケガ人以外の部分で何か課題はありましたか?
ピック&ロールに対してスイッチディフェンスをしていましたが、そこのローテーションがなかなかうまくいきませんでした。ズレが大きくなってしまったことで、3ポイントを確率よく決められてしまった。特に(40本中21本の3ポイントを沈められた1月の)宇都宮ブレックス戦は印象に残っています。
──新シーズンに向けて自身が伸ばしていきたいことはありますか?
スタイルは大きく変えず、自分でクリエイトして得点する機会を増やしていきたいなと。あとはヨーリが抜けたことでチームとして3ポイントを打つ機会が多くなるので、3ポイントを打つためのオフェンスクリエイトも求められてくると思います。
──新加入のデイビッド・ダジンスキー選手、タナー・グローヴス選手はアウトサイドシュートも得意な選手です。どのような連携のイメージを持っていますか?
彼らの良さを引き出すためにも、ガードが積極的にインサイドへアタックする必要があります。2人ともアグレッシブにスクリーンかけてくれますし、ディフェンスの機動力もあるので、チーム全体で足を使って運動量を増やすことができると思います。
──角田選手のドライブは、年を追うごとにチームの大きな武器になっている印象があります。
今まではどちらかというと3ポイントのほうが多かったですが、アタックはもう少し増やしていきたいですね。インサイドのフィニッシュはうまくできていないので、そこの数字は上げていかないとです。
──4月の滋賀レイクス戦で、3ポイントシュートがなかなか決まらない中、連続でドライブからフィニッシュを決めて流れを作っていましたが、ご自身の中では課題と感じている部分もあるんですね。
あの試合は比較的うまくいったほうではあるんですけど(笑)。フィニッシュのバリエーションもそうですし、ドライブしてから「もっと正しい判断ができたんじゃないかな」と思う場面が多かったですね。もっと判断はよくしていきたいです。
「言葉や行動でも引っ張っていかなければ」
──リーグのレベルはどんどん高くなっていく中、佐賀が勝ち星を増やすために大切なものは何だと思いますか?
やはりリバウンドかなと。昨シーズンのファイナルもリバウンドが大きなキーになっていましたし、年々フィジカルなプレーが増えてきているなと感じています。ただ佐賀は身長がものすごく大きいチームでもないので、外国籍選手に頼らずに全員でリバウンドやフィジカルな部分を表現できればいいなと思っています。多少のファウルは覚悟でガンガンに絡んでいく、リバウンドに入る前からアプローチするといったことをもっと意識する必要があります。
──「チームの中心選手」という自覚は当然あると思いますが、その自覚は年々高くなっていますか?
プレーだけでなく言葉や行動でも引っ張っていかなければ、と感じています。プレーの良し悪しでモチベーションが上がったり下がったりすることは本当にあってはならないので、気持ちを高く持ちつつ、自分のプレーもコンディションも上げていく必要があります。
──角田選手はこれまでチーム内で若手の位置づけだったかと思いますが、今季より年下の内尾聡理選手や富山仁貴選手が加入しました。チーム内の立ち位置を改めて意識することはありますか?
僕はもともとあまり喋るタイプではないですが、今まで以上にコート上でハドルを組んで話すことを心がけたいです。全員が同じ意識を持ってプレーを遂行することは重要ですし、ガードとしてコートに立っている以上不可欠なことです。ハドルを組みすぎということはないので(笑)。
──開幕節はホームの滋賀戦です。昨シーズン滋賀戦でシーズンハイの23得点を挙げていますし、良いイメージを持って臨めそうでしょうか?
自分のアタックを増やしていきたいです。ホームでの開幕ですし、僕がチームに加入してから開幕戦は一度も勝っていないので、勝ちには何よりこだわります。チャンピオンシップ出場を目標にしているので、スタートダッシュで勢いをつけられたらと。チームとしてもコンディションを仕上げていきます。
──チームの活動と並行して、多くのバルニスタが日本代表でのプレーも切望しています。
7月の強化試合は富樫勇樹選手や河村勇輝が参加していなかったのでチャンスでしたが、メンバーに絡むことができませんでした。もちろん日本代表でプレーすることは目標にしていますが、代表に合わせるというより、まずは自分のチームでリーグのトップスコアラーになるくらいの活躍をして、その上で代表に招集されるような選手になれればいいなと。そのためにも3ポイントは40%台に乗せたいですね。
──最後に応援してくださる方に向けてメッセージをお願いします。
今シーズンはチームの構成もバランスも変わるシーズンになります。これまでとは異なるスタイルのオフェンスやディフェンスを体現していきますので、ぜひSAGAアリーナに足を運んで応援してください。