決勝では11得点止まりも、アシストとリバウンドで貢献
川崎ブレイブサンダースにとって、天皇杯の優勝はチーム名が『東芝ブレイブサンダース神奈川』だったNBL時代以来、7年ぶり4回目となる。当時から中心選手を務めるニック・ファジーカスは、Bリーグ誕生以降では初のタイトル獲得に「やっぱり優勝は最高だし、素直にうれしい」と笑顔を見せた。
これまで川崎がビッグゲームに勝つ時には、ファジーカスが多くの得点を挙げるのがお決まりだったが、今大会では準決勝で13得点、決勝でも11得点に終わった。だがそれは、エーススコアラーの彼が点を取れなくても勝てる、チームとしての総合力の高さを証明するものだ。
ファジーカスは振り返る。「僕へのマークが厳しく、後半はあまりシュートを打てませんでしたが、それだけ周りの誰かが空きます。今年のチームはフリーになる誰かがしっかりと仕事をしてくれる自信があります」
点取り屋の印象があまりにも強いが、ファジーカスは得点以外でも貢献できる。特にこのファイナルラウンドは、準決勝で9アシスト、決勝で6アシストを記録。佐藤賢次ヘッドコーチは、ファジーカスを起点とし、決勝では実に8人が7得点以上を記録したチームオフェンスへの手応えをこう語る。
「ニックで攻めるだけではなく、相手がニックに集中する部分を生かして全員で攻める。ニックも攻めるけど、そこに合わせる周りの攻めの意識を強調し続けています。その積み重ねの結果、こういうバランスになったと思います。ニックは昨日が9アシストで、今日が6アシスト。これは止められないですよ(笑)、という手応えを感じています」
また、川崎が勝負どころで使うオプションとして磨きをかけているファジーカスと外国籍2人を同時起用するビッグラインナップが大一番で機能したことは、今後の戦いに大きな意味を持つ。ファジーカスもそこには自信を見せる。
「(パブロ)アギラール選手はリバウンドの取り方やポジショニングがすごく長けている選手で、3番起用でその長所が生かせる。そして僕と(ジョーダン)ヒース、2人の7フッター(210cm)が揃うことでリバウンドに負けない布陣になります。今回ビッグラインナップの手応えはつかめましたが、まだ未完成な部分もあるので、ここから先は成長しかないと思います」
ファジーカスの確信「川崎は僕一人のチームではない」
NBL時代のタイトル獲得の数々は、辻直人とファジーカスの得点量産によってもたらされてきた。例えば前回、天皇杯を制した2014年の決勝ではファジーカスが25得点、辻が20得点を挙げているが、今回は2人合計で18得点だった。
振り返ればBリーグ開幕以降の川崎は、ベンチ層が薄く相手にとって的が絞りやすいことが大きな課題だった。辻とファジーカスのゴールデンコンビ、いわゆる『ツジーカス』の爆発なしでのタイトル獲得は、この長年の課題を克服できたことを示す。
「今後、僕が20得点、25得点を取る試合もあると思いますが、川崎は僕一人のチームではない。僕がいることは大きな強みだと思うけど、周りに勝利に貢献できる選手がたくさんいることを証明できた試合だった」
こうファジーカスが語るように、今回の優勝は新しい川崎の船出となる。