文=鈴木健一郎 写真=Getty Images

スピーディーかつ多彩な攻めで派手な打ち合いを演じた日本

リオ五輪の女子バスケットボール。日本代表はオーストラリア代表と対戦した。ここまで2勝1敗の日本に対し、FIBAランキング2位のオーストラリアは3戦全勝。そんな『世界の強豪』に対し、AKATSUKI FIVEは臆することなく挑みかかった。

先制したのは日本。司令塔の吉田亜沙美が一人でリングまで持ち込みレイアップを決めた。続いて縦へのパスが通って間宮佑圭のジャンプシュート、鋭いパスでフリーになった栗原三佳が3ポイントシュートと日本が高確率で得点を決めていく。残り5分20秒のところで本川紗奈生がレイアップを沈め、日本はスターター5人が早くも全員得点。オフェンスはともかくディフェンスではインサイドをガラ空きにするなど穴もあったが、強豪相手に一歩も引くことなく打ち合った。

第2ピリオドに入ってもハイペースの打ち合いは変わらず。外角シュートを警戒するオーストラリアの守備陣をドライブで切り裂き、町田瑠唯、髙田真希の連続得点に栗原が3ポイントシュートで続き、35-29と頭一つ抜け出す。吉田が強く当たられ序盤のようにパス一本でシュートまで持ち込むオフェンスができなくなり、逆に相手の得点源である長身センターのエリザベス・キャンベージにはダブルチームで自由を奪うなど、両チーム互いに流れの中での対応も見せたが、激しく打ち合う展開は変わらなかった。

そんな中で日本の「走るバスケ」を象徴したのが本川だ。長身揃いの相手選手の間にもぐり込むような強引なドライブでの仕掛けを連発し、ディフェンスでも出足鋭く相手のオフェンスファウルを誘発するなど、積極果敢なプレーでオーストラリアをリズムに乗せなかった。その本川が3ポイントシュートを狙う際にファウルを受け、フリースロー2本を決めて50-48として前半を終える。

後半に入っても日本の勢いは衰えず、外角シュート、ドライブインを意識させながら、インサイドでの合わせなど多彩なオフェンスを展開する。オーストラリアの軸であるキャンベージは、サイズを生かしたプレーには強いが日本の素早い攻守の切り替えに対応できずベンチへ。オーストラリアとしては、日本のスピードに対応しつつ190cm台の選手で高さのメリットは残す作戦だったが、日本の激しく粘り強いディフェンスで5秒バイオレーションを取られるなど逆にリズムを崩す。

その間にも日本は町田がテンポ良く攻撃を組み立て、自らも果敢にドライブで仕掛けて得点をもぎ取る。残り1分を切って、コートに戻って来たキャンベージが押さえようとするリバウンドを栗原がかっさらって一気に前へ。町田のドライブ&キックから栗原が3ポイントシュートを沈め、ラストプレーでも再び栗原が3ポイントシュートを決めて71-59と一気に突き放して第3ピリオドを締めくくった。

3ポイントシュートが当たっていた栗原が、一瞬の状況判断から外と見せかけてドライブイン。第3ピリオドの日本は多彩な攻めでオーストラリアを圧倒した。

運命の最終ピリオド、流れを変えた豪州のゾーンディフェンス

第4ピリオドもスタートは日本だった。このピリオド最初の得点をレイアップで決めた渡嘉敷が、直後に厳しいマークで相手のトラベリングを誘い、町田の得点へとつなげて75-59とリードを16点にまで広げる。

だが、ここからオーストラリアが世界2位の底力を発揮する。残り8分51秒の時点で取ったタイムアウトで戦術を確認、ゾーンディフェンスへと切り替える。ゾーンで日本のドライブを封じると、オフェンスに専念できるようになったキャンベージの得点力が爆発。日本は2人がかりで抑えにかかるが止められず、ファウルで止めてもフリースローを落とさない。ゴール下で7本のシュートを決め、フリースロー4本を沈めたキャンベージは、このピリオドだけで18得点を挙げた。

追い上げられる日本はドライブを封じられ、ミドルレンジから難しいシュートを打たされる。髙田が、渡嘉敷が、そして吉田が決めていくものの、確率が落ちて得点を伸ばせず、残り2分58秒で81-82と逆転を許す。吉田の得点で食らい付くも、走って合わせる攻めが出せずに吉田がタフショットを打つ時点で日本の流れではなくなっていた。最後はチームファウルが5つに達し、キャンベージにダブルチームで付いたギャップでフリーになったペニー・テイラーに3ポイントシュートを決められ万事休す。

日本は渡嘉敷が23得点8リバウンド、栗原が6本の3ポイントシュートを含む20得点、吉田が9得点11アシスト、本川は12得点、髙田は10得点3アシスト。オーストラリアはフィールドゴール22本中16本を決めたキャンベージが37得点を挙げている。

渡嘉敷と髙田の2人がかりでマークされるキャンベージ。日本のスピードへの対応に苦労するも、しっかりと結果を出してチームを勝利に導いた。

「挑戦者」である日本に下を向く必要はない

世界2位のオーストラリアを最後まで苦しめたのは大健闘と言えるが、終盤の試合運びにミスが出て勝てる試合を落としたのもまた事実だ。世界と張り合うだけの実力はあるが、勝ち切る力を欠いた。一方のオーストラリアは日本の勢いに飲み込まれながら、終盤の勝負どころを前にタイムアウト一回でしっかりと立ち直り、最後数分の余力を残して逆転に成功。そしてリードを奪った後は危なげなく勝ち切った。世界のレベルの高さを痛感させられる試合だった。

「メダルへの挑戦」を掲げる日本は、今日この時点ではオーストラリアにかなわなかった。しかし、少なくともメダルを狙うだけの価値を持つチームであることは証明できたと言える。「挑戦者」である日本に下を向く必要はない。グループ最終戦となるフランス戦は13日(日本時間14日早朝)。勝てば3位以上でのグループ突破となる一戦に向け、最善の準備が求められる。

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