日本バスケの歴史を変えるアップセット、比江島慎「未来につながる1勝だった」

2018/06/30
日本代表
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文=丸山素行 写真=野口岳彦

指揮官ラマスも絶賛するオールラウンドな活躍

『崖っぷち』に立たされた男子日本代表が世紀のアップセットを成し遂げた。ワールドカップアジア1次予選Window3、格上のオーストラリアを79-78で破ったのだ。

ニック・ファジーカスが25得点、八村塁が24得点と新戦力の2人が期待通りの活躍を見せた。そして、これまで『日本のエース』としてチームを牽引してきた比江島は、6得点8リバウンド6アシストとオールラウンドなプレーでチームに勝利をもたらした。

普段あまり表情を変えない比江島が、ミックスゾーンでは「素直にめちゃくちゃうれしいです」と笑顔を見せた。「日本代表としても初勝利ですし、しかも相手はオーストラリアなので。アジアで初めて土をつけたのもそうですし、崖っぷちの状態で勝てたっていうのもうれしいです」

スタッツは決して突出しているわけではない。だがフリオ・ラマスヘッドコーチが試合後の会見で比江島の名前をわざわざ挙げて称賛したように、その働きには数字以上のインパクトがあった。「マコは得点とクリエイトができ、そして8リバウンドと勝利の大きな要素となった。6アシストとチームメートのシュート機会を創造した」

ラマスコーチが絶賛するように、比江島は得意のヘジテーション(リズムの変化と左右へのフェイントを駆使したドリブル技術)でオーストラリア守備陣を翻弄し、オフェンス優位な状況を数多く作り出した。

比江島も「オフェンス面ではアシストもできましたし、ニックだったり塁だったりを生かせられました」と自身のオフェンスを振り返る。中でも、第4クォーター残り2分18秒、1点差リードの場面で見せた、ゴール下に走り込みリバースレイアップを成功させた馬場雄大へのアシストを印象に残っているプレーに挙げている。

「リバウンドも泥臭いところも頑張ることができた」

ラマスコーチはリバウンドとディフェンスを勝因に挙げたが、多用した2-3のゾーンディフェンスがよく機能していた。特に『2』を担う比江島のフィジカルかつ運動量の多いディフェンスは目を見張るものがあった。オフェンスに目が行きがちな比江島だが、ディフェンスの能力も高い。これまでの日本はどうしても比江島のオフェンス力に頼らざるを得ない状況が多かったが、八村とファジーカスの存在が比江島のオフェンス面での負担を軽くした。

「オフェンスで今まで体力を使っていた分、あの2人が入ってきてくれたおかげでディフェンス面で余裕ができました。ディフェンスで珍しくじゃないですけど(笑)、リバウンドでもそういった泥臭いところでも今日は頑張ることができたので、最低限はできたと思います」

ファジーカスと八村の加入がもたらしたものは数字をみれば明らかだが、比江島も2人の恩恵を強調した。

「あの2人が入ってくれたおかげでオフェンスも慌てることはなく、40分間集中し続けられました。ピック&ロールを使って、チームがしっかり連動して動いてノーマークで打てたシュートもあります。ディフェンスもゾーンで守れたというか、オフェンスリバウンドは結構取られましたけど、良い守り方ができたのかなと」

「チーム全員が勝利を信じてプレーしてました」

試合は終始、日本のペースで進んだが、第3クォーターに追いつかれ、逆転を許した。これまでの日本はリードしていても安定感に欠けたり、一度崩れたら立て直すことができないことが多々あった。それでも昨日の試合では40分間のうち57秒間しかリードを許さなかった。

「チーム全員が本当に勝利を信じてプレーしてましたし、終始僕らの流れで試合が運べたので。なんですかね、ホームというのもあると思いますし、落ち着いてやればというか、あの2人も調子が良かったので安心感もあったとは思います」

「焦りはなかったです」と語る言葉は頼もしい。

今回のワールドカップ予選からレギュレーションが変わり、ホーム&アウェー形式が採用された。日本は他国と比べ、バスケットボールへの関心が高くないのが現状で、これまではホームアドバンテージを活用できたとは言えない。だが昨日の試合では選手の一挙手一投足にファンが声援を送り、本当の意味でのホームを作り上げた。

比江島はそうした状況を受け、「未来につながる1勝だったと思います」とあらためて勝利を噛み締めた。劇的な勝利とファンの一体感、日本のバスケ界は6月29日を境に変わっていく。