昨オフ、チャンピオンを経験した琉球ゴールデンキングスを離れ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズへ移籍した今村佳太。期待のシーズンとなったが、結果的にチームは35勝25敗の中地区4位に終わり、チャンピオンシップ進出を逃した。悔しさを胸に抱きつつも一定の手応えを得たシーズンを経て、前を向く今村に新シーズンの展望を聞いた。
「『本当に勝たなきゃ意味がない』というメンタリティになれた」
──まずは昨シーズンの振り返りをお願いします。
望んでいた結果にはなりませんでした。ドルフィンズは前のシーズンにチャンピオンシップのセミファイナルに進出して、あと1勝でファイナルという悔しい思いをしましたし、みなこのシーズンの手応えを得てシーズンに臨んでいたと思います。ただ、結果的に前のシーズンをなぞってしまった印象が強かったです。改めて、選手や状況が変わる中でも、1シーズンごとに勝つメンタリティやカルチャーを大事にしていかないと勝てないと実感しました。言い訳をしようと思えばできる要因はいくつもありますが、ドルフィンズの良さをもっともっと突き詰めていく必要があったと感じています。
────結果的にチャンピオンシップ進出に至らなかったものの、シーズン終盤の4月に9連勝を果たしました。直前にアルバルク東京、滋賀レイクス、広島ドラゴンフライズに4連敗していた中で連勝できた要因は何だったのでしょうか。
終盤にかけて、「それぞれの良さを出して行こう」というリスペクトが生まれた感じはありました。コミュニケーションを取る・取らないにかからわず「あの選手はこれが得意だから、こういうプレーをしよう」という共通認識が生まれたことで、みんなで戦える我慢強さが生まれ、連勝に繋がったと思います。
──戦術ではなく、チームとしての結束力が終盤の追い上げに繋がったということですね。
どんな試合も負けられないのは前提ですが、連敗していた時は自分たちで勝つチャンスを手放してしまった感覚がありました。その危機感をもとに「本当に勝たなきゃ意味がない」というメンタリティになれたのが大きいですね。
──戦い方に目を向けると、3ポイントシュートが例年より効果的に使えなかった印象があります。
オープンシュートを打てていないのが大きな要因だと思います。ボールをシェアして、1つのズレをどんどん大きくしていき、グレートショットを打つのが本来のドルフィンズです。ただ、それがうまくいかずに個人で打開しようとして、いいセレクションではないシュートを打たされてしまうこともありました。試投数は多くても、確率が上がらないのはクリエイトに課題があったからだと思います。
「より高いレベルで戦っていかなければいけない」
──では、ディフェンスはどうでしょうか?多彩なディフェンスシステムを使用する難しさはありましたか?
個人的なことを言うと、チェンジングディフェンスなど状況判断が重要なシステムなので、 すごく面白かったです。自分のバスケットボール人生において、ディフェンスの考え方の幅をすごく広げてくれました。以前所属していたクラブよりもウイングの選手の判断が重要になるシステムだったので、学びは多かったです。チームとしては、インサイドを固く守る選手よりも頑張って足を動かして守るタイプの選手が多かったので、1つのよくない判断で大きくズレを作られてしまい、簡単なオープンシュートに繋がってしまうこともありました。5人全員が連動しないといけない難しさも感じました。
──チーム全体で守ることは大前提ですが、1オン1など今村選手個人のディフェンス強度は高かったと感じています。
1人で止める意識はもっと持たないといけないと思っています。もちろん自分たちのシステムを信じることは重要ですが、「抜かれてもあそこにヘルプがいるから…」と考えすぎていた部分があったと今は思います。本来1人で止めればいいところをシステムに頼ってしまうことは、チームとしての課題ですね。1人ひとりが相手のやりたいことを止められる力を持たないと、今後のBリーグで上位に進むのは厳しいです。
──個人としてのオフェンスはどう評価していますか?
オフボールの動きが成長できた部分かなと思っています。流動的に人とボールが動くシステムなので、早い判断が求められました。あと、個人でのパフォーマンスは良かったですが、もっとチームメートを巻き込めたかなと思うので、今シーズンはさらに連携を図っていきます。
──オフには、Bリーグ選抜「B.LEAGUE UNITED」のキャプテンとして、NBL選抜やサマーリーグ参戦中のNBAチームと対戦しました。
まず第一に「参加してよかったな」と感じています。あの強度で、この時期に海外の選手と対戦できる機会はなかなかないので、自分のスタンダードをもっと上げなきゃいけないと思えたオフシーズンでした。参加した選手たちが、この経験を経てBリーグで活躍することで、このプロジェクトの意味が上がって行くと思います。今後もこの輪をもっと広げていきたいですね。
──実際に対戦してみての印象を聞かせてください。
まず相手のハングリーさが全然違いました。ファンダメンタルの重要性も痛感しましたし、あの強度とサイズ、スピードの中で、自分がどう生きていくのかが見えてきました。そこには手応えがありましたし、より高いレベルで戦っていかなきゃいけないと改めて感じさせられた期間でした。