万能の活躍に加え『相手に応じたミッション』をこなす
トバイアス・ハリスは昨年オフ、6シーズン在籍したセブンティシクサーズを離れてピストンズに復帰しました。昨シーズンのスタッツは、13.7得点、5.9リバウンド、2.2アシスト。得点は過去10シーズンで最低となり、2年5200万ドル(約78億円)の大型契約からすると物足りない印象です。しかし、数字では測れない貢献度が非常に高く、ピストンズがプレーオフへと進む原動力になりました。
シクサーズ時代は常に3番手以降でありながら、高い得点力を示していたトバイアスですが、結果が出ないのはチームとしての噛み合わせの悪さであるにもかかわらず、彼が批判の槍玉に挙がることがしばしばありました。そのトバイアスが、スタッツが低調でも再評価されたのは興味深いです。
インサイドでもアウトサイドでも得点を奪うことができ、リバウンドにもしっかりと絡み、速攻にも走れるトバイアスですが、すべてが平均以上でも特別な武器はなく、チーム戦術の中核として機能するタイプでもありません。オールラウンダーとして使いやすいタイプでありながら、オプション的に活用するのが適切なタイプでもあり、使い勝手の難しい存在です。
かつてピストンズに在籍していた頃も、チームトップの得点を記録していながら、戦術の中心はアンドレ・ドラモンドとレジー・ジャクソンで、トバイアスはオールラウンドな能力で程よくチーム戦術に合わせつつ、戦術が機能しない時に個人技で突破する、『エースのようでエースではない』不思議な役割を与えられていました。
そして今回のピストンズでは、ケイド・カニングハムが絶対的な中心として君臨し、インサイドではジェイレン・デューレンが新たな核として成長中で、その周囲をシューターやディフェンダーで囲むような構成です。やはりトバイアスはオールラウンドな能力で程よくチーム戦術に合わせながら、今度は個人技での突破ではなく相手に応じたミッションを担当することとなりました。
プレーオフのニックス戦では、カール・アンソニー・タウンズとのマッチアップを受け持ちました。センターながら3ポイントシュートの上手さを併せ持つタウンズには、平面でも守れればポストアップを止める能力も必要で、デューレンよりもトバイアスが適任でした。トバイアスを活用することで、ピストンズのディフェンスは柔軟な運用が可能になっているのです。
33歳となった今、かつての得点能力は見込めなくてもオールラウンドな能力に経験値が加わったトバイアスは、チーム戦術を着実に遂行しながら若手には難しい役割を担うことで、ピストンズの勝利に貢献しています。