しつこいくらいに繰り返されるコンビプレー
ペイサーズは今シーズンも安定した強さを発揮し、39勝26敗で東カンファレンスの5位とプレーオフ進出を確実なものとしています。しかし、毎シーズンのようにプレーオフに進んでもホームコートアドバンテージがなく、ファーストラウンド敗退を繰り返してもいます。レギュラーシーズンの残る試合で1つでも順位を上げて『プレーオフに進出できるチーム』から『プレーオフで勝てるチーム』にステップアップしたいところです。
オールスターに選出されたドマンタス・サボニスなどの若手コアとなる選手を除き、新たな選手を多く加えた今シーズンでしたが、熟練されたチームが持つハードワークとチームワークの『ペイサーズらしさ』を失うことはありませんでした。戦術的にも独自性を貫いていて、3ポイントシュートはリーグ最少とコートを広く使ってフリーを作る近年のNBAの流れに乗らず、しつこいくらいに繰り返されるコンビプレーによって相手ディフェンスを崩し切ろうとします。
特にポイントガードのマルコム・ブログドンは、チームメートを操りながら試合を進めていき、勝負どころになると自ら得点を挙げる巧みなゲームメークでチームを勝利に導き、サボニスとともにペイサーズのコンビネーションオフェンスの中心的存在になりました。ディフェンスでもリムプロテクターのマイルズ・ターナーとエースキラーのTJ・ウォーレンを中心に隙のないハードなプレーで追い込んできます。つまり、メンバーが入れ替わってもペイサーズの強さは変わっていません。
個人のマッチアップを制し、カウンターに転じられるか
しかし、これだけ良い内容のバスケットを展開しながら、その『安定した強さ』という評価はポジティブなだけではありません。上位チームを倒してくれそうな『突き抜けた強さ』を感じないからでもあります。チームとしての強さはあるものの、特別なスーパースターがいないだけでなく、相手を打ちのめす強力な武器を欠く印象です。プレーオフでもペイサーズは善戦するでしょうが、勝ち上がるイメージは沸いてきません。
その点でチームのスタイルは同じでも2年前は「ひょっとしたら」という期待を抱かせてくれていました。結果的には敗退したものの、レブロン・ジェームスがいたキャブスをあと一歩まで追い詰めており、今シーズンと同じような勝率ながら強烈な武器を備えたチームでした。当時は単に『ディフェンスが良いチーム』ではなく『ディフェンスでボールを奪ってからのカウンターが強烈なチーム』であり、その武器がチームに爆発的な勢いを生み出していました。
勝った試合での失点102.2はリーグで2番目に少なく、ディフェンスが基盤となっていますが、単に守るだけでなくカウンターまで持ち込めるかどうかがプレーオフで勝つための『突き抜けた強さ』を持てるかの分岐点となってきます。
カギを握るのはウォーレンで、エースキラーとして奮闘しながらもボールを奪うと同時に走り出し、チームで最も多くの得点を奪います。プレーオフではエースが個人での勝負を仕掛ける展開も増えるため、自らのディフェンスでボールを奪い取ってのカウンターアタックを繰り出すことができれば、一気にペイサーズのペースに持ち込めるはずです。
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— Indiana Pacers (@Pacers) July 11, 2020