4チーム中3チームが1次予選通過、1勝で展望が開ける
ワールドカップのアジア1次予選、日本代表は2月22日に行われたホームのチャイニーズ・タイペイ戦に69-70で惜敗。これで通算0勝3敗と早くも苦境に追い込まれた。とはいえオーストラリア、フィリピン、チャイニーズ・タイペイとの4チームのうち、3位に入れば2次予選には進出できる。厳しいのは確かだが、可能性は十分に残っている。
この4チームを見るとオーストラリアが頭一つ抜けている。そこにフィリピンが続き、日本と台湾が同列というのが客観的な評価だろう。その中でフィリピンと日本の力関係もフィリピン6、日本4といった感じで大差はない。それだけに大黒柱アンドレ・ブラッチェのコンディション不良、主力ポイントガードのテレンス・ロメオが故障欠場、ホームの利という様々な好条件が重なった昨年11月のホームゲーム(71-77で敗戦)は勝たなければいけなかった。
今回、日本は富樫勇樹、馬場雄大を欠いているが、フィリピンも引き続きロメオが欠場。さらにロメオと不動のガードコンビを組んでいる中心選手で、前回の日本戦でも20得点7リバウンド6アシストと大暴れだったジェイソン・ウィリアムが22日のオーストラリア戦を欠場している。明日の日本戦に間に合わせて来る可能性はあるが、コンディションが万全でないことは明らかだ。
もう一人の柱、NBA通算500試合以上の出場経験を誇るゴール下の要ブラッチェも、コンディションが万全とは言い難い。FIBA公式サイトでフィリピンの指揮官ビンセント・レイエスは、22日に敵地で開催され68-84で敗れたオーストラリア戦後の会見で、11月下旬に行われたWindow1以来、実戦から遠ざかっていたブラッチェを25分間プレーさせることが目的の一つだったと明かしているくらいだ。
注目の選手起用、比江島の先発復帰はあるか
日本代表で注目したいのは先発メンバーだ。チャイニーズ・タイペイ戦での先発は篠山竜青、田中大貴、古川孝敏、アイラ・ブラウン、太田敦也。エースの比江島慎はベンチスタートだった。ちなみに、Window1の比江島はフィリピン戦で控えスタート、オーストラリア戦は先発となっている。あくまで結果論ではあるが、前回のフィリピン戦は第1クォーターで得点が入らずに先手を取られ、オーストラリア戦は大敗(58-82)の中でも第1クォーターは22-23と互角だった。
それだけにチャイニーズ・タイペイ戦では比江島が先発起用されるものだと思われだが控えスタート。そして比江島がコートに入るまでの約5分間、日本が挙げた得点はわずか4点で、試合の主導権をつかみ損ねた。これらの結果を加味しても、今回のフィリピン戦では是非とも比江島の先発起用を推したい。
第一に、今の代表で最も安定して得点を計算できるのは比江島であり、出だしからエースを軸にオフェンスを組み立てるのが最も流れをつかむ確率が高い手段であること。当然、比江島はシーホース三河でも不動の先発であり、控えでの起用法に慣れてはいない。そして選手のタイプとしても、例えば辻直人のようなシューターは、3ポイントシュートが1本入ればすぐにトップギアに到達するが、比江島はそういったタイプではない。まずはじっくり入り、そこからどんどんギアを上げていく印象の方が強い。
また、どちらにせよ彼は1試合約30分出場が見込まれるエースだ。そうなるとベンチスタートで最初の5分プレーしないことにから35分の中で30分起用するより、40分の中で30分の起用となった方が、より効果的に休ませながら起用でき、勝負の第4クォーターによりフレッシュな状態で臨みやすくなるからだ。
問われる終盤のゲームマネジメント
フィリピンは格上だが、大きな差があるとは思わない。それはこの1次予選で日本とチャイニーズ・タイペイに連勝しながらも、6点差と7点差で、内容的にも第4クォーター終盤までもつれたことが示している。そして、冒頭で示したコンディションの不安もある。
一方で、日本は油断ならない相手だと指揮官が認識している点は厄介だ。オーストラリア戦の後、レイエスヘッドコーチはホームでの日本戦に勝つことを最優先としたプレータイムのシェアを行った旨の発言をしている。
本来の日本とフィリピンの力の差は、フィリピン6、日本4で、主力の故障によるマイナスは同じ。ただ、フィリピンには圧倒的なホームコートアドバンテージがある。そう考えると、明日の試合は日本3、フィリピン7くらいの力関係。10回やって3回勝つ可能性があると考えれば、勝てない相手ではない。
まず、ホームの熱狂的ファンを最初から沸かせてフィリピンに勢いを与えてしまうのは、何としても防がないといけない。そのためにも比江島はもちろんのこと、乗っている辻も先発起用するくらいの仕掛けは行ってもいい。また、終盤におけるゲームマネージメントの拙さの改善は不可欠だ。これまでのように大事に行こうとする意識が強くなることで消極的になり、そこから受け身の姿勢になってミスが増える姿は見たくない。
会場のモール・オブ・アジア・アリーナは2万人収容であり、圧倒的アウェーの雰囲気になる。熱戦の終盤にホームでも苦労した冷静なゲームメイクをすることは至難だろう。だからこそ、苦しい時こそより強気にゴール下へのアタックなど、日本代表には最後までタフに泥臭く戦う姿勢を見せてもらいたい。それこそが、フィリピン撃破への第一歩となってくるはずだ。