3年4450万ドルでキングスと契約、再建にリーダーに
昨シーズンのキングスは迷走した。前半戦に調子が上がらずにマイク・ブラウンを解任。フロントはこれがカンフル剤になることを期待したが、指揮官解任は『チームの顔』であるディアロン・フォックスを落胆させ、彼をスパーズに移籍させることになる。その後のキングスは暫定ヘッドコーチのダグ・クリスティの下で戦いを続けたものの、プレーイン・トーナメントで早期敗退となった。
この責任を問われてモンテ・マクネアGMは解任され、スコット・ペリーが新たなGMとなったが、やれることは多くない。ザック・ラビーンを筆頭に主力の多くは成績不振により評価を下げており、トレードには出しづらい。ペリーGMにとって今夏は『守りのオフ』で、低迷したチームを大きく入れ替えることなく、浮上のきっかけを見いださなければならない。
そんなペリーに許された数少ない打開策が、31歳のポイントガード、デニス・シュルーダーの獲得だ。NBAで12年のキャリアを持ち、2023年のワールドカップではドイツ代表を優勝に導いてMVPを獲得した。得点もプレーメークもディフェンスもでき、リーダーシップもあるが、どのチームにも定着できない。昨シーズンはネッツで開幕を迎えてウォリアーズに移籍し、1カ月半後にピストンズにトレードされる慌ただしい1年を過ごした。
シュルーダーはキャリアの多くで、移籍を繰り返してきた。実力がない選手がジャーニーマンとしての流浪を余儀なくされるのとは違い、活躍しながらそれに見合った評価を得られない。だが、今回は違うのではないかという期待がある。加入会見でシュルーダーを紹介する際、ペリーはこう語った。「私は就任会見でポイントガードに求める6つの要素について語った。競争心、タフさ、チーム志向、規律、責任感、プロフェッショナルだ。この要素すべてを備えた選手がフリーエージェント市場にいた。このチームに成功を築くキーマンとなる選手だ」
「どんな状況であれポジティブな面を見いだす」
昨シーズン、フォックス退団後は先発ポイントガードを3年目のキーオン・エリスが務めたが、エリスは勢いがあっても経験不足で、プレーメークという点では物足りなかった。実際は開幕までにチーム内競争はあるだろうが、シュルーダーは先発ポイントガードの座を約束されたも同然の状況でキングスに迎え入れられ、そのことに興奮している。
「GMが僕を信じてくれる、そういう機会を得られたことに感謝したい」とシュルーダーは言った。「ここに来られたことを心から喜んでいる。毎日の練習、すべての試合で持てる力のすべてを出し尽くすことで恩返ししたい」
チームを転々とした時期についても、恨み言は一切ない。「僕はどんな状況であれポジティブな面を見いだそうとする。昨シーズンは3チームでプレーしたことで、ステフィン・カリーやドレイモンド・グリーン、ケイド・カニングハムなど多くの素晴らしい選手と出会えた。移籍するたびに異なる役割にアジャストするのは大変だったけど、それを自分にとってのプラスに変えることはできる。そういう僕の姿勢をGMが見ていて、評価してくれたのは本当にありがたい」
その評価は3年4450万ドル(約67億円)という好条件の契約として形になった。キングスの信頼に応えることは、彼自身の評価を高め、腰を落ち着けてプレーできることに繋がる。そのためにも彼は、キングス再建を中心選手として引っ張るつもりだ。
「NBAで先発ポイントガードを任されることは、これ以上望めないぐらいのことだと思う。自分たちがどうプレーすべきかの文化を確立し、試合でそれを遂行するリーダーになり、ロッカールームでチームを代表して声を出す。ペリーGMはそれを求めると言ったけど、それは僕の望むことでもあるんだ」
デマー・デローザンとザック・ラビーン、ドマンタス・サボニス、キーガン・マレー。みんな昨シーズンの迷走で評価を下げたが、それぞれ実力も経験もある選手たちだ。彼らの才能をシュルーダーが繋ぎ合わせ、チーム一丸のバスケを展開できれば、キングスは昨シーズンとは全く違った姿を見せられるはずだ。