松井啓十郎が語るバスケ部時代vol.2「アメリカで揉まれて身に着けたスタイル」

2016/06/29
日本代表
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文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

『バスケット・グラフィティ』は、今バスケットボールを頑張っている若い選手たちに向けて、トップレベルの選手たちが部活生時代の思い出を語るインタビュー連載。華やかな舞台で活躍するプロ選手にも、かつては知られざる努力を積み重ねる部活生時代があった。当時の努力やバスケに打ち込んだ気持ち、上達のコツを知ることは、きっと今のバスケットボール・プレーヤーにもプラスになるはずだ。

PROFILE 松井啓十郎(まつい・けいじゅうろう)
1985年10月16日生まれ、東京都出身のシューティングガード。クイックリリースで放つアメリカ仕込みの3ポイントシュートでチームを勢い付けるシューター。2015-16シーズンのNBLでの3ポイントシュート成功率は2位以下に圧倒的大差を付ける44.8%だった。

アメリカでバスケを続けるにはその道を極めるしかなかった

14歳でアメリカに渡り、そのまま大学まであちらの学校でした。最初はとにかく大変でした。アメリカのバスケットボールは黒人のスポーツですから、「アジア人にやれるのか」みたいな感じで、とにかく舐められましたね。

ファッションから話す言葉まで、とにかくカルチャーショックがすごかったです。インターナショナルスクールで学んだ英語は通用するんですが、黒人英語って口をあまり動かさずにモゴモゴと話すので、相手が何を言っているのかが聞き取れないんです。

バスケも大変でしたね。僕が行ったモントローズ・クリスチャン高校はすごく強いところで、後輩にはケビン・デュラントとグレイヴィス・ヴァスケスがいて、先輩にもNBA選手がたくさんいる。全米から有望な選手が集まるチームでプレータイムを獲得するのはすごく厳しくて。最初はずっと2軍でプレーしていました。高校2年でシックスマン、セブンスマンになって、高校最後の年でようやくスタメンです。

そこまで行くには、自分なりにすごく試行錯誤しました。自分に何ができるのか、何が通用して何が通用しないのか。そういったことをずっと考え続けた結果が、クイックリリースだったりスクリーンを使ってのシュート、という今のプレースタイルに繋がっているんだと思います。

僕の得意なプレーは3ポイントシュートで、ボールをもらってから打つまでの時間が短い、クイックリリースと呼ばれるシュートには自信があります。それはアメリカで揉まれる中で身に着けたものです。

「日本人だから3ポイントシュートがうまい」ということはありません。ですが、僕の場合は考えに考えた結果として、勝てるところがそこしかなかった。スピードだったら絶対にあっちのほうが速いし、フィジカルもあっちのほうが強い。そうなるとバスケットIQだったり、スクリーンの使い方を徹底的に丁寧にやってオープンのシュートは絶対決める、というくらいにしないと。アメリカでバスケを続けていくにはその道を極めるしかなかった、ということです。

大学に行っても同じプレースタイルでやりましたが、大学になると相手のサイズが大きくなったり、フィジカルもさらに強くなったりとレベルアップしていたので、そこはまた自分なりに考えてプレーしました。

練習はたくさんやって、努力したほうだと思うんですが、バスケはただひたすらシュートを打ってればいいとか、ただひたすら走っていればいいわけではありません。アメリカはやっぱり自己主張の強い国なので、自分が持っているものをいかにコーチやチームメートに伝えるかがすごく大事なんです。「自分はこうしたいからこう動いてくれ」みたいなコミュニケーションですね。

チームスポーツであるバスケにおいて、自分が一生懸命やっているだけで他の4人と合わないようでは、チームとしては噛み合いません。そこはコーチと連携したり、選手間でコミュニケーションを取って、自分をアピールすることも大事です。

最初からコミュニケーションが取れたわけではありませんが、2軍にいた時、そして1軍に上がった時、すべてコミュニケーションを取ってチャンスをもらっています。いきなり1軍では絶対に通用しなかったので、下からの積み重ねが、その後の1軍になったり大学に進んだり、そしてプロになって、という「今」にすべて繋がっているんだと思います。

アピールしてチャンスをもらったら、あとは自信を持ってやるだけです。別に緊張はしないですね。「自分が今まで積み重ねてきたものをコートで出すだけ」と思えばいいんです。そう思えば、失敗した時も別に後悔はしないです。

アメリカで自分の何が通用するのか、それを突き詰めた結果が今の松井のバスケットになっている。

バスケット・グラフィティ/松井啓十郎
vol.1「小学生でマイケル・ジョーダンと対決!」
vol.2「アメリカで揉まれて身に着けたスタイル」
vol.3「シュートは毎日400本から500本は打った」
vol.4「ハードワークもただこなすだけではダメ」