八村はゲームハイの20得点を記録するも「詰めが甘い」
カイロ(エジプト)で開幕したU-19ワールドカップ、日本代表は初戦でスペインと対戦した。
トーステン・ロイブルがスタメンとしてコートに送り出したのは重冨周希、三上侑希、西田優大、増田啓介、八村塁。最初のディフェンスでしっかり抑えた後、西田の3ポイントシュートで先制した日本は、続いて八村も3ポイントシュートを決めて好スタートを切る。守備でも集中して相手にタフショットを打たせ、第1クォーターを16-15で取った。
第2クォーターに入るとスペインが立て直す。強引に攻めるのではなくピック&ロールで作ったズレをパスとドリブルで広げてイージーチャンスを作っていく。この攻めに対応できず、逆転を許すだけでなくズルズルと差を広げられ、19-29と2桁のビハインドを背負った日本だが、ここで八村がエースの働きを見せる。アイソレーションで切り込んでの強引なジャンプシュートを沈めて相手の勢いを止めると、早くもこの試合3本目の3ポイントシュートを決めて猛追。ここから西田と榎本新作も続き、33-35と2点差に詰め寄って前半を終えた。
迎えた後半、八村の豪快なブロックショットから速攻に転じ、重冨が技巧を生かしたドライブでスペインの守備網を突き破り、フローターを沈めて35-35と追い付く。次の攻めでは重冨が再びドライブと見せかけてフリーの西田にパス。西田が落ち着いて3ポイントシュートを決めて日本が逆転に成功した。
ところがこのあたりから八村が膝に手を置き、肩で息をする状況に。試合開始から攻撃でも守備でもフィジカルなプレーをずっと続けており、スタミナ的にキツくなってきた。この苦しい時間帯、シックスマンの鍵冨太雅が得点をつなぐ貴重な働きを見せるものの、3ポイントシュートに当たりの出始めたスペインの勢いが上回る。
八村に依存しないパフォーマンスで終盤まで接戦を演じる
50-56で迎えた最終クォーター、日本は勢いこそあるもののメンバーの入れ替えで意思疎通に乱れが生じ、ミスからのターンオーバーが出始める。一方でスペインには、高さと機動力を兼ね備えたエリック・ビラにゴール下でイージーシュートを打たれるシーンを何度も作られる。ビラは試合を通じて18得点を記録。八村は20得点で上回るのだが、後半だけの得点を見ればビラの14点に対して八村は4得点。勝負どころで得点源の勢いの差が出たことは否めない。
また、接戦の中では小さなミスの影響が大きく出てくる。日本はフリースローが不調。特に後半にミスが目立ち、試合を通じてフリースローは18本中8本と成功率50%を切った。八村が8本中2本、鍵冨が5本中2本と、リングにアタックする選手がきっちりとファウルをもらった一方で、フリースローのミスで相手を助けてしまった。
西田のバスケット・カウント、増田の速攻と連続得点が決まり、残り5分を切ったところで61-64と詰め寄る。残り3分21秒にも重冨がドライブからレイアップを沈めて63-66と1ポゼッション差に。それでもスペインは慌てることなく、勝負どころで攻守に質の高いプレーを見せ、チャンスを確実に得点につないでいく。日本は八村へのボールの供給を断たれ、3ポイントシュートを狙っていくがリングに嫌われる。
残り1分、八村がクイックリリースの3ポイントシュートを決め、この試合の得点を20に乗せるが、この時点でスコアは65-72。最後はファウルゲームを仕掛けるも67-78で敗れた。
スペイン相手の健闘に指揮官は「誇りを持っていい」
ヘッドコーチのトーステン・ロイブルは試合後、「スペインを倒すにはミスが多すぎた。フリースローが一番大きな差。つまらないミスもありました。それをなくさないとダメです」と反省を語った一方で、手応えも感じた様子。「下を向く必要はない。世界ランキング2位のスペインと競ることができたのは誇りを持っていい。残念だったが結果に落ち込むことなく、チーム一丸となって次また良いゲームをしたい」と語る。
八村が疲れからパフォーマンスを落としたことについても「塁を40分出すことは考えていない。クォーターごとに2分は休ませて32分の出場、それがマックスだと思う(実際、この試合のプレータイムは31分40秒)。ベンチから出た選手が活躍するのは良いチームの証明で、あまり悲観することはない」とむしろ前向きだ。
その八村はゲームハイの20得点、10リバウンドも記録しダブル・ダブルでのスタートとなったが、後半に失速したこと、フリースローの失敗から敗れたことを悔やむ。「何本か全力で短いシュートを打ったので、自分では分からない疲れが出ていたと思います」
「後半の得点の伸びが甘いと思いました。インサイドのディフェンスで消耗したのもあるのですが、それは言い訳にしかならない。ここからずっとこういう大会なので、後半どれだけ自分たちのプレーができるかが大事」と八村。
それでもスペインを相手に大健闘できたのは、前半に八村が攻守にフル回転して互角の展開に持ち込んだからだ。「出だしから勝っていくつもりでやっていたので」と八村は言う。「今までは『世界だから』というのがあったと思うんですが、最初から思い切ってやればできると話して試合に臨みました」
八村が語るエースの自覚「自分が取っていかないと」
ただ、初戦で善戦したからこそ、大会を通じてそれで終わってしまうチームにはなりたくない。「自分が取っていかないとチームの得点が上がっていかない。そういう点で後半落ちてしまいました。チームメートがその間に得点を取ってくれていたのですが、そこに僕がどれだけ乗せられるか。僕がそこに入れば得点力が伸びるのは確かなので」。そう『エースの自覚』を語る。
グループリーグで3位、4位でも決勝トーナメントに進むことのできる今大会はまだ先が長い。スペイン相手に善戦できた最大の理由であるハードワークを連戦が続く中で維持することが、今後の最重要ポイント。そこからミスを減らし、八村を中心に個人のパフォーマンスを上げることが求められる。
もっとも、敗れはしたが良い兆候はたくさん見られた。大会を通じて若いチームが成長する例は、このチームは昨年のU-18アジアカップで経験済み。八村を中心にしつつもエースに依存しないチームがどこまでレベルアップできるか。期待とともに見守りたい。