船生誠也

「みんなで進んでいくことを信じてやれている」

仙台89ERSはここまでの39試合を終えて2316敗の東地区6位。昨シーズン、1149敗で東地区最下位と苦しんだが、今シーズンはロスターの半分を入れ替え、ダン・タシュニーを指揮官に招集した新体制で臨み、チャンピオンシップ進出圏内のワイルドカード4位まで3ゲーム差。クラブ初のチャンピオンシップ進出に向けて躍進している。

今シーズンからチームに加入した最年長の船生誠也は、高いバスケIQとサイズを生かして攻守にオールラウンドにプレーし、献身的にチームを支え躍進の原動力となっている。船生は「新生・仙台でスタートを切り、おそらくリーグに与えているインパクトはトップレベルだと思っています。確実にチームとしてステップアップしています」とここまでのチームを評価する。

好調の要因について、船生は次のように続ける。「組織を新しくする時って、なかなか難しいじゃないですか。でも新しく来たスタッフや選手たちと、これまで仙台のカルチャーを積み上げてきた人たちが、ぶつかり合うこともなく、けなし合うこともなく、みんなで進んでいくことを信じてやれているのが、このチームの良さです」

昨シーズン、船生はサンロッカーズ渋谷に所属したが、28試合、平均750秒の出場でベンチにいる時間が長かった。同様に前のシーズンから出場時間を落としていた杉浦佑成や井上宗一郎も今シーズン仙台に加入し、それぞれのリベンジの気持ちがチームを良い方向に向けているかと感じた。

船生にそう問うと「そういう思いを持った個人が集まっているかもしれませんが、それはあくまで個人的で間接的な理由だと思います」と前置きした上で、「求められていることをやるとか、役割をしっかり表現するとか、個人のスタッツよりもチームのためにエネルギーを費やしている感じです」と、選手それぞれがチームファーストな姿勢を見せていることが要因だと分析した。

選手たちのそのような姿勢は、チーム全体の連動を生み、勝率にも影響している。「良い感触があるのはチームディフェンスです。初めましての選手がほとんどだったので、最初の10試合くらいは良くなくてシンプルに時間が必要でした。外国籍選手もネイサン(ブース)以外は初めての日本で、コート内外の色んな環境に慣れるまで時間がかかったと思います」

船生誠也

「最初の1本は本当に集中してやっています」

仙台は開幕から52敗とスタートダッシュを決めたが、その後の連敗もあり、勝率5割を下回る時期もあった。特に上位クラブとの対戦では星を落とした。しかし、12月に入ると5連勝。さらに琉球ゴールデンキングスや宇都宮ブレックス、名古屋ダイヤモンドドルフィンズといったリーグ上位のクラブにも土をつけた。

「シーズン途中で特別に何かを変えたわけじゃなくて、ダンが求めているディフェンスのレベルをコンスタントにできるようになったのが勝てるようになってきた要因です」と船生は語り、シーズン当初からそれを継続できたのはヘッドコーチの存在が大きいと続ける。

「いろんなチームを渡り歩く中で、外国人ヘッドコーチのもとでやることが多かったです。どのコーチも良かったですが、いろんな経験をしてきた上で、今ダンのチームに来て良かったなと思っています。本当に人間性がすごく良くて、気を遣わずに喋りやすいんです。今までのヘッドコーチは『船生!こうだ!こうしろ!』というアプローチの方が多くて、スマートにやれないこともあったのですが、ダンのバスケットはすごく共感できますし、明確に役割をもらえているので感謝の気持ちが一番ですね」

役割をもらっているという言葉の通り、船生はここまで出場した34試合すべてで先発。平均出場時間も2011秒と、若手時代と変わらない出場機会を得ている。

「持てるものを全部出すのは大前提ですし、スタートかスタートじゃないかは関係ないですけど、スタートは試合の温度や雰囲気を作るのが仕事だと思っています」と心構えを話し、具体的な役割を次のように認識している。「ダンから求められているのは、相手のエースに最初のワンプレーやシュートを気持ちよくやらせないことです。40分間通してやり続けることは大事ですが、特に最初の1本は本当に集中してやっています」

船生誠也

「誰かがサボりたいときにサボらせない組織になる」

船生は2023-24シーズンに広島ドラゴンフライズでリーグ優勝を経験した。「優勝は選手として大きな目標です。広島で優勝して、うれしすぎて最高な気分でしたけど、次のシーズンに何を目指したいかとなった時に、もう1回優勝したいなと」

再び頂を目指して移籍したSR渋谷では、前述の通り悔しい思いをした。「優勝とか以前の問題で、あんなにプレータイムがないことは初めての経験。『まだまだ俺はできるんじゃないか』とすごく思って、自分と自分を応援してくれる人のために1分でも長くコートに立ちたい気持ちが強く生まれました」

高低差の激しいシーズンを経験して、心に残ったのは貪欲にプレーしたい気持ちだった。「もちろん優勝は狙います。ただ、現実的に優勝を狙うんだったら仙台じゃないだろうと言われるのも分かります。優勝したいですが、優先度としてはプレーしてナンボだなと思ったのは正直なところです。応援してくださる人のためにコートに立って自分を表現したいです」

出場機会を求めたのが、仙台への移籍した一番の要因だと言うが、広島でワイルドカードからの優勝を達成した船生にとって、仙台を優勝に導くことは決して非現実的なことではないだろう。

この後の21試合で求められることは、「一番は今うまくいっているディフェンスを突き詰めてやっていくこと」と船生は言う。そしてそれを成すために何が必要か、自身の経験を踏まえて次のように語る。

「人間だから、日によってキツいことから逃げたくなるじゃないですか。 僕も思いますよ、D.J・ニュービル(宇都宮)やイ・ヒョンジュン(長崎ヴェルカ)を守らないといけないのかぁ、みたいに(笑)。日程もタフですし、1試合だったら頑張れることも試合が続くと大変です。でも、誰かがサボりたいときにサボらせない組織になって、それを全員がスタンダードな考えにできるチームが最後は強いと思います」

チームの合言葉『ダンダンよくなる』の通り、シーズンを通じて成長を見せて躍進を遂げてきた仙台。船生はあらためてチャンピオンシップ進出を誓う。「仙台を応援してくださる皆さんにとって、おそらくCSに出られるかもしれない今の状況は初めてだと思うので、絶対に連れて行きたいです」