「やるべきことをやれば、あの4クォーターにはならなかった」
「こういう展開だったので、あの時の……あの時の……ってどんどん出てきて……」。勝てるはずの試合を落としたエースガードは、試合を振り返るたびに悔しさをにじませた。
群馬クレインサンダーズの藤井祐眞は、10月29日の川崎ブレイブサンダース戦でチーム最長の30分6秒コートに立ち、序盤からチームを牽引した。第1クォーターは無得点だったものの、2本のアシストを決めるなど攻守に渡り躍動し、10点のリードを築くことに貢献した。
第2クォーターも主導権を握る時間帯が長かったが、大きく点差を広げることができずに50-39で前半を折り返した。藤井は第2クォーターで試合を決めることができなかったことが1つの反省点だと振り返る。「早い段階で10点以上リードして、でも突き離せなくてそのまま前半が終わってしまい、ハーフタイムにコーチ(カイル・ミリングヘッドコーチ)からも『離せる時に離さないといけない』と言われました」
ハーフタイムでは、前半で失点に繋がった川崎オマール・ジャマレディンのドライブ対策を話し合った。しかし、それも万全ではなかった。「ガードのスクリーンからのドライブを結構やられていたので、コミュニケーションがもっと必要でした。そのセットプレーで来ると意識しすぎ、受け身になってプレッシャーをかけられなくなってしまいました」
前半で試合を決められなかった反省を生かし、群馬は後半も入りからディフェンス強度を上げて川崎に得点を許さなかった。第3クォーター残り5分14秒には藤井の3ポイントシュートが決まり20点差を築いた。
選手たちの中に慢心があったかは分からない。ただ、最高の入りができたがゆえに会場全体の緊張の糸がゆるんだようにも感じた。群馬はここから川崎の反撃を食らい、最終クォーター残り1分19秒で逆転されると、追いつくことができないまま無念の終了ブザーを聞いた。最終スコアは79-83だった。藤井は猛攻を受けた場面について「20点離しましたけど、それではまだ足りなかったです。油断ではないですが、そこで落ち着いてしまったのかもしれないです」と悔いた。
「受けに回ってしまったのかな。チームとしてやるべきことをやれば、あの4クォーターにはならなかったと思うし、クォーター途中からの悪い流れをどこかで切れたんじゃないかと思います」
「チームが成長してシーズン終盤を迎えられるのがベスト」
開幕から今節までの10試合のうち、群馬がホームで戦ったのはわずか2試合。開幕してから毎週末アウェーで戦い、先週末は沖縄でのゲームだった。さらに、ホーム2試合目となったこの試合ではトレイ・ジョーンズとコー・フリッピンが欠場。言い訳を挙げればいくらでもできる状況だが、藤井は前を向いている。
「タフなスケジュールではありますけど、そこを言い訳にしたくないので、しっかりやらなきゃなと思います。ケガ人が出てしまってロスター10人なので、それも加味してチーム一丸で戦わないといけませんね」
タフなスケジュールでも藤井のコンディションは良かった。ディフェンスではジャマレディンをタフショットに追い込む場面があり、オフェンスでは前述の20点差に広げる3ポイントシュートや、5点差に迫られた場面でタフなフェイドアウェイショットを沈めるなど、要所で相手の嫌がるプレーを見せた。
「今シーズンは特にそういうシーンで決めたいなと思っています。相手にグッとダメージを与えられるようなショットを決めていきたいです」と藤井は話し、さらにそれを伸ばしていく必要があると続ける。「今日はそれができた場面もありましたが、最後のシュートも決めたかったですし、その前にも何かできることがあったんじゃないかなと。フリーで決められそうな3ポイントを2〜3本落としてしまい悔しいので、そこは決められるように頑張っていきます」
群馬は4勝6敗と黒星先行。下馬評の高かったチームにとっては想定外の状況だ。しかし藤井は結果を結果として受け止めて、シーズン全体を見越して次に向いている。
「すごく苦しいというか、思っていたよりもうまくいってない感じがあります。でもまだ10試合、あと50試合残っているので、まだまだこれからです。最終的にチームが成長して、シーズン終盤を迎えられるのがベストなので、そこに向けて今は我慢の時期だと思ってやっていきたいです」
「群馬に来てからこういう展開は初めてな気がします。逆はありましたけど」と藤井が言う通り、20点のリードを守りきれなかったのは藤井が群馬に来てからは初めてのことだ。ショックの大きい敗戦となったが、これを経験したことが今後の糧となるだろう。さらなる高みを目指す群馬と藤井のカムバックに期待したい。

