桶谷大

「正直、謙虚さが足りなかったです」

琉球ゴールデンキングスは10月4日、5日に行われた開幕節、横浜ビー・コルセアーズを迎え撃ったホームゲームで痛恨の連敗を喫した。ゲーム1は75-77、ゲーム2も75-79と共に惜敗。接戦で迎えた終盤に横浜BCのエース、安藤誓哉の決定力に屈したのも2試合続けて同じだった。

しかし、内容に関しては大きな違いがある。琉球の桶谷大ヘッドコーチは2連戦を終えてこう振り返っている。

「昨日(ゲーム1)はハッスルの部分で負けたり、フロアに倒れている選手がいるのに手を貸しに行かない選手がいたりしました。キングスが4年連続でファイナルに行けたのは、そういうことをしっかりできたからです。チームメートのためにプレーする。自分がプレーを作ってもらえたらその人のために汗をかこうとする。ギブ・アンド・テイクではないですが、そういう関係性があるからチームはよくなります」

「今日(ゲーム2)はエナジーを持って戦うことはできていました。戦う姿勢は昨日よりは格段によかったです。負けはしましたが、そこはポジティブにとらえます。ホームで連敗して『何をしてるんだ』と声をかけられるかもしれませんが、水曜日のEASL(東アジアスーパーリーグ)のアウェー台湾戦で立て直して週末のアルバルク東京戦を迎えたいです」

初戦で負けた後、指揮官は強い口調で、次のようにチームへの失望を語っていた。

「正直、謙虚さが足りなかったです。スカウティングに対して真摯に取り組んでいなかった。完全にはスカウティング通りにはできないですが、今日に関しては『絶対にやられるな』と言っていた部分から得点を取られ、『何をやっているんですか』というところでした。状況判断の悪いプレーが多すぎました。相手のビッグマンがファウルトラブルになっていたのに、ジャック(クーリー)と、アレックス(カーク)がそれぞれ4本しかシュートを打っていない。申し訳ないですけど、『いつでも勝てるやろ』という雰囲気になっていました」

琉球ゴールデンキングス

「キングスだからこそ人気を得られる部分があることも忘れてほしくない」

琉球はファイナルに進出した昨シーズンの主力が揃って残留し、オフにはリーグ屈指の日本人フォワードである佐土原遼の補強に成功。今シーズンはU22契約も含めると16名の大所帯でリーグ屈指の選手層の厚さを誇る。だが、それゆえにケミストリー構築の難しさはある。桶谷ヘッドコーチはこう語る。

「みんな、それぞれプレータイムが欲しいし、アピールもしたいです。プレシーズンはみんなが気持ちよくできていて、プレータイムを気にしなくなっていましたが、レギュラーシーズンが始まると『自分がやりたい』という部分が出てきてしまう。ただ今日はそのエゴの部分をかなり抑えられたとは思います」

注目の佐土原はゲーム1で19分45秒出場したものの、ゲーム2は8分。厳しい船出となった。桶谷ヘッドコーチはこの状況を冷静にとらえている。「11番目、12番目の選手ではなくメインでローテーションに入るような選手なので、フィットするのは簡単ではありません。1つ言えるのは、どれだけ勝っても負けてもコミュニケーションをとり続けていって、時間はかかっても建設的にチームを作っていくことが大切です。そこをみんなでチャレンジしていきたいです」

今シーズン、Bリーグは10周年という節目の年となるが、桶谷ヘッドコーチのプロバスケットボールコーチキャリアは20年目。Bリーグの倍、プロバスケの最前線で戦ってきている。百戦錬磨の指揮官は当然のように長いシーズンには浮き沈みがあり、勝負に絶対はなく、いくら戦力が充実していても出だしでつまずくことがあることを十分に理解している。

だが、それでも桶谷ヘッドコーチは冒頭で紹介したようにわざわざ会見で「謙虚さが足りていなかった」と厳しい言葉を放った。そこには指揮官の譲れない信念がある。

「僕ができることは人が成長したり、チームが強くなるための環境作りです。結局、昨日はチームでなく個々がやりたいバスケをやってしまっていました。最終的には自分のためにプレーするものですが、その前に『チームのために』が大前提としてないとダメです。僕がコーチとして怒らないといけないのは、Lazy(怠慢)、Selfish(わがまま)、Careless(不注意)とあって、昨日はそのすべてに当てはまっていました。本来なら選手たちの前だけで言えば良いことかもしれませんが、僕はチームとして何を大切にしているのかを皆さんにも理解してほしいです」

この『皆さん』とは、もちろんメディアではなく、メディアが情報を伝える先にいるファンだ。

琉球は日本随一の人気バスケットボールクラブであり、各選手たちも大きな支持を受けている。そのブランド価値を利用しオフコートで積極的に活動することを、指揮官は大前提としてまったく否定していない。ただ、この人気の土台が何なのかを選手に肝に銘じてほしいと問いかけている。

「負けているのにメディアさんがたくさん来てくれて、連敗しているのにほとんどのファンが帰らずに最後までアリーナにいてくれることは、普通ではありえないことだと思っています。そういう状況で、自分たちはお金をもらってバスケットをやっています。SNSもファンクラブも全然やって良いです。ただ、本当の仕事に対して真摯に向き合って、しっかりしないといけない。SNSもファンクラブも、あくまでプレーの付属的な部分です。勝ってこそ皆さんに喜んでもらえる姿勢は忘れてほしくない。キングスだからこそ人気を得られる、見てもらえる部分があることを忘れてはいけない、と伝えました」

あわてる必要はまったくないが、プレーの質うんぬん以前にやるべきことを忘れてはいけない。この連敗を教訓に、琉球はしっかりと自分たちの原点を見つめ直すことができるのか。8日の東アジアスーパーリーグ、週末のホームA東京戦で真価が問われる。