13得点11リバウンド10アシストのトリプル・ダブル達成
10月29日、横浜ビー・コルセアーズはホームで行われた広島ドラゴンフライズ戦に79-94で敗れた。この試合、横浜BCは前半こそ激しい点の取り合いに応じることができたが、後半に入って失速。広島のトランジションを止めることができず、第3クォーターに14-31のビッグクォーターを作られ、そのまま押し切られた。
横浜BCのラッシ・トゥオビヘッドコーチは「(前節の)茨城戦で連勝したからこそ、チームとしてステップアップできるかなと思っていました。それができなかったことに少しガッカリしています」と試合を振り返る。
これで横浜BCは、4勝6敗で開幕1ヵ月を終えた。開幕節こそアウェーで琉球ゴールデンキングス相手に2試合続けて接戦を勝ち切る最高のスタートを切ったが、その後は5連敗を喫するなど浮き沈みが激しかった。連敗の大きな理由としてビッグマンの故障者が挙げられるが、指揮官は「言い訳を探すことは簡単ですが、それはチームの助けにならないです」と言い切り、矛先を自分たちに向けて危機感を語る。
「今、チームは良い状況ではないです。今日みたいに圧倒されたくはないですし、この敗戦を分析して学んでいく必要があります。そして自分たちの立場を認める。今のディフェンスは強いチームに対してうまくいっていないことを理解して、修正していかないといけないです。このままではいけないという気持ちがすごくあります」
黒星先行が示すように課題も多い横浜BCだが、ここからの反撃にポシティブな材料も少なくない。開幕直前の故障から10月25日に復帰したケーレブ・ターズースキーは、試合を重ねるごとにフィットしてきている。また、開幕から質の高いプレーを見せているビッグマンのダミアン・イングリスはこの試合でも13得点11リバウンド10アシストのトリプル・ダブルの活躍だった。
イングリスは204cmの身長とがっちりした体格を生かしたゴール下でのパワープレーに加え、ペリメーターからのミドルシュートも得意とする。また、非凡なハンドリング能力でボール運びもそつなくこなせる多彩な選手だが、特にアシストで大きなインパクトを残している。ここまで出場した9試合のうち5試合で6アシスト以上を挙げての平均5.6アシストは、ビッグマンとしてリーグ随一の成績だ。
「常に正しいプレーをすることを心がけています」
アシストだけでなく平均16.4得点、9.6リバウンド、3ポイントシュート成功率40%と質の高いプレーを見せているイングリスは、「常に正しいプレーをすることを心がけています」と語る。
「自分にアドバンテージがあれば得点を狙う。チームメートにアドバンテージがある時は、その選手を探します。そして適切なポジションでプレーし、ハードワークする。自分のパスからしっかりと得点を決めてくれるチームメートたちがいてくれてハッピーです」
彼が正しいプレーをできていることを示すデータがある。5アシスト以下に終わった4試合は、10月26日の茨城戦における31得点を筆頭に、3試合で20得点以上を記録。自分が攻めるべき時は攻め、味方に攻めさせる時はパスを供給する的確な判断を実践している。
また、イングリスは好調の要因としてチームの環境の良さを強調する。「まず、横浜は素晴らしい街で人々は親切です。家族もとても気に入っていて、それは私にとって大事なことです。もちろん、ファンの皆さんは最高です。チームも優れたスタッフがいて素晴らしいです」
激動の1ヵ月を終え、イングリスは勝ち星を増やしていくため今のチームに必要なのは、何よりも安定感と考えている。
「故障者が出るのは大変なことですし、それでも調子が良いチームとの対戦を乗り越えないといけないです。こういった困難に対処するには、自分たちでコントロールできることにフォーカスする。たとえ今日はそれができなかったとしても、続けていくことに力を注がないといけない。自分たちのリズムを保ち続けることが、とても重要です。これこそが、横浜にウイニングカルチャーを築く方法であり、今、私たちはそのために必要なことを学んでいるところです。まだまだ道半ばですけど、この取り組みを続けていくことで私たちは成長できます」
チームは苦しい状況だが、イングリス個人としては「よりプレーがしやすくなっています。システム、選手たちのことを今はよくわかっています」と在籍2シーズン目のステップアップに手応えを得ている。そして「あとはいかに僕が正しいプレーをするかです。チームメートがよりよいプレーができる手助けをしないといけない。そうすることで僕たちはもっと勝てるようになります」と、主力として大きな責任を担う覚悟を示す。
メンバーが揃ってケミストリーが高まり、プレーの継続性が高まっていくことは横浜BCの巻き返しに不可欠な要素だ。それができれば、イングリスの巧みなパスさばきによるゲームメークはさらに輝きを増していく。

