文・写真=鈴木栄一

終盤までもつれる接戦、三河の試合巧者ぶりが光る

5月14日、チャンピオンシップのクォーターファイナルでシーホース三河が琉球ゴールデンキングスと対戦。終盤までもつれる接戦となったが、要所で相手のオフェンスをしっかり食い止めた三河が81-75で競り勝った。76-72で勝利した13日に続いて連勝を収めた三河が、セミファイナル進出を決めている。

第1クォーター、後がない琉球は渡辺竜之佑の連続得点で先手を取ると、終盤には岸本隆一、ラモント・ハミルトンのシュートで23-16とリードを奪う。

しかし、オン・ザ・コートが琉球の「2」から三河の「2」に変わった第2クォーターに三河が反撃開始。アイザック・バッツが巨体を生かし、このクォーターに8得点と奮闘する。そして8点を追う残り約5分から金丸晃輔、比江島慎のダブルエースを軸に連続12得点を挙げて逆転に成功。結局、第2クォーターを22-11と圧倒し、4点のリードを奪って前半を折り返した。

ともにオン・ザ・コート「1」で迎えた第3クォーターも、三河が良い流れをキープ。残り約3分半にはギャビン・エドワーズのオフェンスリバウンドから桜木ジェイアールが得点と、高さの優位を生かした象徴的なプレーでリードを13点差にまで広げる。だが、琉球もすぐに田代直希が3ポイントシュートを沈めると、終了間際の岸本の得点で、三河の60-54と食らい付いて最終クォーターに突入する。

第4クォーターも三河がリードを保ったまま試合は進んでいくが、琉球は徐々に追い上げていき、残り約2分半にはハミルトンの3ポイントシュートでついに2点差にまで肉薄する。しかし、三河は次のオフェンスで、再びエドワーズのオフェンスリバウンドから金丸の得点へとつなげて琉球の勢いをストップ。その後は堅いディフェンスで追加点を防ぐとともに、金丸がファウルゲームに対してのフリースローを確実に決めて逃げ切った。

接戦を勝ち切るゲームコントロールの能力に自信

レギュラーシーズンの対戦では三河の5勝1敗。そして勝ち試合も、三河が圧倒しての楽な勝ちゲームが多かった。ただ、「プレーオフは何が起こるか分からないもの」と語る三河の鈴木貴美一ヘッドコーチにとって、「沖縄さんはbjリーグで4度も優勝しています。プレーオフに対する執念は、チームの伝統としてあるんではないかと思います。苦戦も想定の範囲内でした」と、今回の激戦を予想していた。

そして勝因については次のように語る。「これこそプレーオフというゲームになりましたが、接戦を勝ち切ることができて良かったです。最後の最後で良いディフェンスができて、リバウンドが取れました」

また、昨日、今日と琉球の粘りにあったとはいえ、第4クォーターは常に僅差ではあるがしっかりリードをキープするなど、要所をしっかり押さえた試合運びの巧みさには自信を見せる。「我々は接戦のゲームを、レギュラーシーズンでたくさん勝ってきました。レギュラーシーズンのようにお互いに簡単にシュートには行けません。しっかりゲームをコントロールして、最後は自分たちのリズムに持ち込めました」

最終的に金丸が19得点、比江島が18得点をマーク。そして桜木ジェイアールも12得点と、取るべき選手がしっかり取って勝利した三河であるが、チャンピオンシップに入って何よりも重視するのはディフェンスだ。

その代表的な例として、第2クォーターには橋本竜馬に、柏木真介とダブルガードとこれまであまりない起用法を実施。その意図を指揮官は、「琉球の小さくて能力のある選手たちが機動力で動き回ってプレーしていました。そこでディフェンスでしっかり反応するには我々も小さいメンバーにしないといけない。オフェンスばかりを考えていた場合、アウトサイドのいつも入るシュートが入らないとそれで終わってしまいます。とにかく沖縄さんのオフェンスに対して防御するにはどうすべきか考えてメンバーチェンジをしました」と語る。

健闘した琉球「勝負どころでの決定力の差は確実にある」

三河はレギュラーシーズン最後の2試合をコンディション調整にあてて主力を温存した影響もあり、ホームで滋賀レイクスターズに連敗。悪い流れでのチャンピオンシップとなっていた。この点を鈴木ヘッドコーチに聞くと、「正直に言って、連敗でレギュラーシーズンを終えたことへの不安はありました」と明かした。

「本当はレギュラーシーズンを良い形で終えてプレーオフに向かうというのが、我々が毎年やっていることです。どんな状況でもそれが我々のスタイルでしたが、どうしてもコンディショニングが悪い中でプレーオフに向かいたくない。(主力をプレータイム制限させる中でも)勝ちたかったですが、悪い形で負けてしまいました。負けで終わるのは良いことではないので、今だから言えますが不安はありました。ただ、選手達は最後まで集中してやってくれました。自分たちのスタイルで最後はしのいだという形で、勝ててホッとしています」

敗れた琉球の伊佐勉ヘッドコーチは「選手は昨日今日とほぼ100%ゲームプラン通りにプレーしてくれていました。ただ、三河には隙がなく、プラン通りにプレーした我々を上回っていました。昨日の修正点はしっかり遂行してくれた。第1クォーターは良かったですが、第2クォーターでミスがあり、ボールが止まる時間があったのがもったいなかったです」と総括する。

そしてあと一歩で届かなかった差については「今、思うのは勝負どころでの決定力の差は確実にあるとレギュラーシーズンから思っていました。そこをオフシーズンから磨いていかないといけない」と語る。

これで琉球の『Bリーグ元年』が終わった。「レギュラーシーズン、自分たちが思い描く結果ではなかったです。ただ、いろいろと勝った経験、負けた経験を生かし、その集大成として昨日、今日と1年間やってきたことをすべて出し切りました。Bリーグ元年はプレーオフ一発目で負けたので、来季はそれ以上に進めるように一からクラブ一丸とやっていきたい」と振り返った。

セミファイナルに進出した三河は、アウェーで栃木ブレックスと対戦する。