タイリース・マクシー

キャリアで初めてプレーオフを逃し「オフが長すぎる」

昨シーズンのセブンティシクサーズは、ポール・ジョージ獲得でジョエル・エンビードとタイリース・マクシーの『ビッグ3』体制となって優勝候補の一角と見なされたが、ケガでチームの完成度が上がらなかった。エンビードは19試合、ジョージは41試合にしか出場できず、『ビッグ3』が一緒にプレーしたのはわずか15試合、294分間。チームは彼らの復帰をうながすことなく早々に勝負をあきらめ、24勝56敗の東カンファレンス13位に終わった。

今オフもエンビードの膝の状態は思うように改善せず、ジョージも35歳のベテランとなってフル稼働できるかが怪しく、セルティックスとペイサーズがエース不在のシーズンになるにもかかわらず、シクサーズ復活を予想する声はほとんどない。

しかし、その状況を受け入れていないのがマクシーだ。26.3得点はキャリアハイの数字だが、出場試合数はキャリア最少の52試合のみ。エンビードとジョージの欠場が多い中でチームを引っ張るべく奮闘したが、3月上旬に指のケガで離脱すると、チームがタンクを選択したことでそのまま22試合を欠場してシーズンを終えた。

地域貢献のための財団を立ち上げて様々な活動を行っている彼は、そのイベントでのメディア対応でこう語った。「昨シーズンの不甲斐ない結果が、過去にないレベルのモチベーションになった。これまでのキャリアで僕は常に優勝を狙えるチームでプレーしてきた。そうじゃない状況を初めて経験して、大きな目標のためにプレーすることの意味が分かった気がする」

彼にとっては初めてプレーオフ進出を逃すシーズンとなり、「オフが長すぎるよ」と冗談を言う。「去年は契約延長の手続きがあってトレーニングが十分にできなかったけど、今年のオフは充実したものになった。ヨガやピラティスなど新しいものも取り入れて、最高のコンディションを整えた」

ケガの問題を抱えるエンビードのバックアップとなるガーション・ヤブセレは去った。若いガードの枚数が多い一方で、ケガの多いベテランのポジションの選手層は薄いままで、それが新シーズンのシクサーズの期待値が上がらない要因となっている。オフも終盤に入った今、シクサーズに打てる手はそう多くなく、優勝候補とは言えないロスターで開幕を迎えることになるだろう。

だが、マクシーはその状況も受け入れない。「このオフは映像の分析もかなりやっている。ジョエルがいる時といない時、マケインがいる時といない時、様々な状況の映像を見ながらオンボールでどうプレーすべきか、オフボールで何ができるかを確認している。僕の役割はできるだけ多くの選手を巻き込み、多様なオフェンスを仕掛けることだ。このオフを通してずっと、その方法を考えている」

エンビードとジョージのコンディションがどうであれ、クエンティン・グライムズの契約問題がどう決着するにしても、マクシーの活躍なくしてシクサーズ浮上はない。彼もそれを認識し、万全の状態で新シーズンを迎えるつもりだ。