河村勇輝

個人能力に焦点を当てるかチーム戦術か、狙いは様々

ドラフトで指名された有望株からNBAの契約を目指すチャレンジャーまで幅広い選手が揃い、見どころの多いサマーリーグは、ホーネッツの優勝で幕を閉じました。今年は日本人選手が3名参戦し、河村勇輝がブルズとの2ウェイ契約を手に入れるなど、日本のファンにとっても注目度の高い試合が続きました。

その中で最も熱い視線が注がれたのはドラフト1位のクーパー・フラッグです。206cm100kgの恵まれた体格に高い身体能力、ハンドリングやシューティングスキルも併せ持ったウイングですが、このサマーリーグでは不慣れなハンドラーとしての経験を積むことになりました。得点力の高さこそ見せつけたものの、プレーメークでは大苦戦し、タフショットも連発しました。

その一方でドラフト外からマーベリックスと2ウェイ契約したライアン・ネムハードは、ペイサーズで活躍する兄、アンドリュー譲りの冷静な判断力を生かし、溜めを作ってチームオフェンスを構築し、本職のポイントガードらしさを見せました。

サマーリーグでのマブスはルーキーの個人能力に焦点を当てる王道路線を採りましたが、今回のサマーリーグでは異なる路線のチームが目立ちました。セブンティシクサーズは試合開始からトップにセンターを置いた3-2ゾーンを採用し、チーム戦術への適応力を求めていたように見えました。

ブルズは2年目のマタス・ブゼリスとルーキーのノア・エセンゲをはじめ、走れるウイングやビッグを揃え、ゾーンプレスのディフェンスも用意するなど、トランジション中心のチーム戦術を試し、個々の選手がチーム戦術にマッチするかのテストをメインにしていました。速いペースからハイスコアへ持っていくバスケにおいて、河村は起点役としてのスピードがフィットして評価を勝ち取ったと言えます。

ファイナルを戦ったホーネッツとキングスはともにチームとしての完成度が光りました。一つのプレーに5人全員が絡み、個人技でこじ開けるのではなく、パスとオフボールムーブを使ってシュートチャンスを作っていきました。キングスはポジションチェンジを繰り返しながらもフロアバランスを崩さないチーム全体の流動性が機能し、ホーネッツはテンポ良くパスを繋ぎながらも焦ることなく、プレー判断の正しさでアシスト/ターンオーバー率の高さが優勝の原動力になりました。

ロスターに残れるかどうかの勝負では、個人能力を見せつけることも重要ですが、それ以上にわずか5試合程度の中でチーム戦術を高いレベルで理解し、与えられた役割をこなす重要性も目立った今年のサマーリーグでした。