パスカル・シアカム

「すでにすべてを成し遂げたような気がする」

NBAファイナルは、現地6月22日の『GAME7』で決着がつく。長いシーズンのラストゲームを翌日に控え、ペイサーズのパスカル・シアカムは「僕らにとって何より大切なのは、チームであることだ」と語り、「チームとして勝つためにどうすればいいかだけを考える。自分のことは考えない。時にはディフェンス、時にはリバウンド、時には得点。チームが勝つために自分に何ができるのか、必要なことはすべてやるつもりなんだ」と続けた。

シアカムはラプターズ時代の2018-19シーズンにNBA優勝を経験している。当時も主力だったがまだキャリア3年目の若手で、31歳になった今は違った感慨でNBAファイナルに臨んでいる。

「僕は人生における様々な経験から学び、この機会を当たり前のものだと思わないようになった。ここまで来るのは本当に大変で、だからこそ感謝を忘れないように。それと同時に良い時も悪い時も興奮しすぎず、落ち込みすぎないようになれた。いろんな要素が物事を大きく見せるけど、結局はただのバスケなんだ。そう考えることでリラックスして自分のプレーに集中できる」

だからシアカムは、優勝を左右する『GAME7』に必要以上に入れ込むことなく、いつも通りの冷静さを保っている。その彼が今考えるのは、明日の試合よりもこれまでたどって来た道のりだ。

自分がどこから来たかを考えると、ここまで来れたこと自体が尋常じゃない。ある意味ではすでにすべてを成し遂げたような気がする。僕がここにいると予想できたのは、神と今は亡き父だけだと思う。僕は神を信じて毎日練習し、チームのために持てるすべてを出し尽くす。その姿を父が見守り、僕の成し遂げたことを誇りに思ってくれることを願いながらね。僕のような出自の人間がここまで来るなんてあり得ないことだ。だから僕は自分が恵まれていると思う

今回のプレーオフを戦う中で、彼が試合前にハドルを組む際に、白目をむいて神に祈るシーンがSNSで拡散されて話題となっている。「チームメートからSNSを見せられて知ったよ。僕はただ祈っていただけ。目を閉じていたつもりなのに、なぜか閉じていなかった。会話をしている時も目玉が上を向いてしまうことがあって、以前にも国歌斉唱の時にそうなっていたからエージェントに『目を閉じなきゃ失礼になる』と怒られた。でも僕にとっては自然なことで……」

そう説明する時のシアカムは心底楽しそうで、『GAME7』のプレッシャーとは無縁だ。「NBAはカメラが多すぎるよ。何をやっても撮られてしまう。次からは下を向いて撮られないようにしなきゃ。みんなが楽しんでくれるならそれで良いけど、もうちょっと遠ざけてくれてもいいんじゃないかな(笑)」