「自分がやってきた努力に自信を持つべきだ」
アレックス・カルーソは昨年オフにブルズからサンダーへと移籍した。レギュラーシーズン54試合に出場するも、スタメンは3試合だけで、プレータイムはブルズでの前シーズンの28.7から19.3へと減少した。トレードが決まった時点ではカルーソを『サンダー優勝のためのラストピース』と見る向きもあっただけに、ロールプレーヤーとしての起用法は彼自身にとっても期待外れだったかもしれない。
しかし、彼の存在がどれだけ貴重なものかは、サンダーにかかわる誰もが理解している。
レイカーズのヤング・コアの一員として2017-18シーズンにNBAデビューを果たして以来、ディフェンスとハードワークでチームを支えるスタイルを貫き、NBAキャリア8年目を迎えて30歳となった彼は、サンダーのバスケが機能し、勝っている時には目立たない。そこでヒーローとなるのはシェイ・ギルジャス・アレクサンダーでありジェイレン・ウィリアムズであり、時にはベンチから出るケイソン・ウォレスやアイザイア・ジョーだったりするが、プレーオフになってサンダーが苦戦を強いられた時、突如としてカルーソの存在感は際立ってくる。
ナゲッツとのシリーズでは、ニコラ・ヨキッチ封じに貢献して、『GAME7』の激闘を勝ち切る要素となった。実力伯仲のNBAファイナルでは、ここまで2勝した第2戦と第4戦のいずれも、カルーソがベンチから20得点を挙げている。サンダーに加入してからの彼は、レギュラーシーズンで一度も20得点を記録していない。それにもかかわらず、プレーオフではナゲッツでの初戦とNBAファイナルの2試合で、すでに3度を20得点超えを記録した。
「プレーオフはシリーズごとに異なるパズルに挑むようなもの。今回のファイナルでは、いつもとは違う選手が得点を取ることが求められる。それなのに僕は第3戦で積極性を欠き、ペイントへの攻めが足りなかった」とカルーソは言う。
「これまでのキャリアの大半を相手のエースをマークして、ウイングでスポットアップして、ピック&ロールでダンカーにパスを出してきたけど、今回のNBAファイナルでは僕が得点を取るようにチームが動いてくれている。だから僕が点を取らなければいけない」
第4戦でのカルーソは第1クォーターにフィールドゴール3本すべてを成功させて7得点を挙げた。シェイが徹底マークで封じられる中、ジェイレン・ウィリアムズが12得点、カルーソが7得点で続いた。ビハインドの展開が長く続いた第3クォーターもカルーソは6得点で苦戦するチームを支えた。最後のクラッチタイムはシェイがMVP級のパフォーマンスを見せたが、そこまで苦しい時間を支えるのがカルーソの仕事であり、決して簡単ではない役割を見事にこなした。
カルーソはレイカーズ時代の2019-20シーズンにレブロン・ジェームズやアンソニー・デイビスとともにNBA優勝を勝ち取っているが、その後はプレーオフの舞台で大きな結果を残せておらず、直近の2シーズンはプレーオフに進むこともできなかった。
ただ、その苦難の時期に努力を怠らなかったからこそ、今の自分があると信じている。
「ここ数年はプレーオフに出場できなかったり、すぐに負けたりしてオフが長かった。そこで多くの時間を練習に費やしてきたつもりだ。その中には、相手チームがこちらのベストプレーヤーを徹底的にマークし、他の選手にボールを持たせるようなシチュエーションで、自分がやるべきプレーの練習もあった。だから自分がやってきた努力に自信を持つべきだし、そのおかげで今このチャンスが得られているんだと思う」