身体能力を生かした『突破力』が周囲の理解を得て活躍
オビ・トッピンは2年前にニックスからペイサーズへとトレードされた。ニックスでは先発の選手を絶対的に信頼するトム・シボドーの下、ジュリアス・ランドルの影に隠れていた。キャリア3年目のレギュラーシーズン最終戦、彼はキャリアハイとなる32得点に加え、7リバウンド5アシストの大活躍を見せる。その時の対戦相手がペイサーズだった。
その年のオフ、ニックスは1巡目8位で指名したトッピンを、2巡目指名権2つとの交換でペイサーズへ譲渡した。このトレードを機にトッピンは先発のチャンスをつかんだが、数カ月後のパスカル・シアカム加入でベンチに逆戻り。それでも彼はチーム事情を理解し、パワーフォワードの2番手としての役割を全うしている。
同じ控えでもニックスとペイサーズでは役割の重みがまるで違う。ニックスでは先発の選手に一呼吸入れさせるために数分出るだけで、長いプレータイムを得るのは先発にケガやファウルトラブルがあった時に限られる。それに対してペイサーズでは、柔軟なプレーのできるシアカムに対し、彼の直線的なダイナミズムがアクセントとして重宝されている。
昨シーズンはレギュラーシーズンとプレーオフの全試合に出場。今シーズンもここまで欠場は3試合だけ。NBA選手の中でもとりわけ恵まれた身体能力をディフェンスとリバウンドに注ぎ込み、トランジションでは縦への突破力を最大限に生かす。好不調の波は大きいが、リック・カーライルはそれよりもトッピンの爆発力を買っている。司令塔のタイリース・ハリバートンも、セカンドユニットを組むTJ・マッコネルも、トッピンのプレーの特徴を理解し、最大限に引き出してくれる。
そうやってプレーオフを勝ち抜き、NBAファイナルに挑むという今を、トッピンは最大限に楽しんでいる。前日会見に応じたペイサーズの選手たちは少なからず緊張した表情だったが、彼はずっと笑顔で「ついにNBAファイナルだ」とワクワクを抑えられなかった。
「サンダーは超フィジカルなチームで、試合中ずっとこちらをイライラさせるようなプレーをするよね。でもウチにも相手をイラつかせる選手はいる。このアリーナには最高に騒々しいファンがいて、それはサンダーの大きな力になるけど、ウチのファンだって負けちゃいない。ああ、想像するとたまらないね。試合が待ち遠しいよ」
豪快ダンクで会場を盛り上げる「一体感が生まれる」
トッピンは脳の半分でNBAファイナルの興奮を感じてモチベーションを高め、もう半分ではいつも通り冷静に受け止めようとしている。「大前提として、ただの1試合なんだ。他の試合と同じように臨む。でも心の奥底では、これが本当の大勝負だと分かっている」
この矛盾した感情をコントロールしながら戦うことに、彼をはじめペイサーズの選手たちは慣れている。「NBAファイナルでは一つのミスも許されないから、完璧なプレーをしたい。でも、完璧な人間はいない。あちこちでミスは起きるだろう。そこから学んで次のプレーに生かし、前に進む。そういう姿を見て、子供たちが『いつかこうなりたい』と夢見てくれたらと思っている」
「僕もかつてはそんな子供だった。NBAファイナルでプレーできるなんて夢のようだ。でも同時に、これは当然の結果だとも思う。この舞台にたどり着くために僕らはずっと努力し続けてきたんだから。本当の意味でこの喜びを味わうべきは、あと4勝した時だ。それまでは日常と変わらず、ただの1試合に臨むつもりでやるよ」
おそらくトッピンは、敵地で行われる最初の2試合を文字通り「ただの1試合のつもりで」戦い、本拠地のゲインブリッジ・フィールドハウスでは熱狂的なインディアナのファンの声援を背に、NBAファイナルでプレーする喜びを全身で表現するのだろう。
ただし、ルーティーンは忘れていない。ホームでの試合、トッピンはほとんどの選手より早くウォーミングアップのためにコートに現れる。少し身体を動かした後、スタンドにいる子供を指名して、シューティングのためのパスを出してもらう。そうやってファンサービスをする選手は他にもいるが、彼のフィニッシュは特別だ。リングのあたりにロブを上げるように指示し、子供が放り上げたボールを豪快なダンクで叩き込む。
「僕の大好きなルーティーンだ。昨シーズンに何回かやって、今シーズンはずっと続けている」とトッピンは笑う。「コートに降りてきてもらい、他の選手とも少し一緒に過ごして、そしてダンクでエネルギーを爆発させるんだ。みんな大喜びしてエネルギーが高まり、アリーナに一体感が生まれる。ああ、早く始めたくてたまらないよ!」