チーム戦術の進化と熟成に重要な影響を与えてきた2人

NBAファイナルはサンダーとペイサーズの顔合わせになりました。ともに2年前はプレーオフにも出ていませんでしたが、継続したチーム作りで独自の戦術を磨き上げ、一気にNBAファイナルの舞台へと駆け上がってきました。

オフェンスのペイサーズ、ディフェンスのサンダーというチームカラーに加え、アシストでチームをコントロールするタイリース・ハリバートン得点でチームを牽引するシェイ・ギルジャス・アレクサンダーという両エースのプレースタイルは対照的ですが、その一方で共通点も多くあります。

両チームにとって重要なターニングポイントとなったのは2022年のドラフトです。サンダーはドラフト2位でチェット・ホルムグレンを指名し、ペイサーズは6位でベネディクト・マサリンを指名していますが、それよりも重要だったのは12位指名のジェイレン・ウィリアムズと31位指名のアンドリュー・ネムハードで、この2人が今ではチームのセカンドハンドラーになっています。

ジェイレンが加入した時、サンダーの中心は個人技で得点を奪うシェイ、パスでオフェンスを作るジョシュ・ギディーのガードコンビでした。開幕時はベンチだったジェイレンでしたが、完成度の高いプレーでスターターへと昇格し、チームオフェンスの一部としてのロールプレイヤーの役割もこなせれば、メインハンドラーとしてオフェンスを構築する仕事も担う万能性で、チームに欠かせない存在になりました。

加えて当時はセンターを起用しないスモールラインナップをメインにしていたチーム戦術において、ガードからセンターまで守れるディフェンス能力も際立っていました。ジェイレンがコートにいれば様々なラインナップが可能になり、それが現在の強力なプレッシャーディフェンス構築へと繋がっています。

ネムハードがペイサーズへ加わった時、チームはシューターのオフボールムーブを活用したオフェンスを展開していました。良いオフェンスを構築できていたものの、その時その時のシューターの好不調に依存しており、選手の組み合わせによってはスペースを潰し合ってしまう点、何よりサイズの面で問題がありました。だからといってシューターを起用せず、ハリバートンからの展開にすべてを委ねるのには限界がありました。

ネムハードもジェイレン同様にハリバートンのサポート役としても機能すれば、メインハンドラーも務めることができ、ダブルポイントガードのオフェンスを成立させています。起点役が2つになったペイサーズはシューターを起用せず、パスカル・シアカムやオビ・トッピンといったフィニッシュ役を機能させるオフェンスを推し進めることで、サイズの問題も解決しました。

加えてネムハードはエースキラー役としてディフェンスでも重要な役割を担っています。ペイサーズは総合的なディフェンス力は高くないものの、対戦相手に応じたミッション遂行型のディフェンス構築を得意としており、ネムハードの仕事は相手のキーマンにボールを持たせないことで、オフェンスパターンを封じ込めていきます。

2022年のドラフトから3年が経ち、ジェイレンとネムハードはチームに欠かせないキーマンになっただけでなく、インテリジェンスと万能性でチーム戦術の進化と熟成に重要な影響を与えてきました。セカンドエースの働きはチーム戦術がスムーズに機能するのかを左右すると同時に、相手がやりたいことをやらせないディフェンス戦略にも左右してきます。