トーマス・ブライアント

アンソニー・デイビスの穴を埋める活躍でレイカーズを救う

アンソニー・デイビスの長期戦線離脱が決まった時、レイカーズには「いよいよ終わり」という雰囲気が漂った。しかし、デイビスが17分出場でプレーを切り上げたナゲッツ戦から8勝6敗とチームは健闘している。正確には、年末からの5連勝でチームを取り巻く雰囲気が劇的に改善したと言うべきだろう。

レイカーズの何が変わったのか、一つはレブロン・ジェームズがデイビスの分までと奮起してオフェンスに意識を向け、得点を伸ばしていることだ。ただ、それをやっても勝てなかったのがレイカーズであり、ここに来て嫌なムードを払拭した決定的な理由にはならない。ここで挙げるべきはトーマス・ブライアントの活躍だ。

ルーキーシーズンをレイカーズでプレーした後、ウィザーズで4シーズンを過ごしたブライアントは、ケガで開幕に間に合わず、その後もローテーションになかなか食い込めずにいた。それでもデイビスの離脱を機にスタメンに抜擢されて平均30分近くプレーするようになり、直近の5連勝では21.2得点、13.6リバウンドを記録。1月7日のキングス戦では29得点14リバウンドと大活躍し、レブロンからは「ものすごく高いエネルギーを試合にもたらし、チャンスを生かしている。今のビッグマンで最もスキルのある選手の一人だ」と称賛された。

ブライアントがレイカーズにもたらすメリットは単なるスタッツではなく、レブロンも言及した「高いエネルギー」だ。ベテランの多いレイカーズは、経験がある一方で攻守両面でエネルギーを欠き、相手の勢いに押し切られることが多かった。それでもブライアントがゴール下で良いエネルギーを出し、まずはディフェンスとリバウンドで相手の勢いを押し返すことで、レイカーズにリズムを作り出している。

現地1月9日のナゲッツ戦ではレブロンが左足首のケガで欠場、109-122で敗れて連勝は5でストップしたが、この試合でもブライアントの攻守に渡るハッスルは目立ったし、そのエネルギーがチームに広がったことで、試合内容は決して悪いものではなかった。17得点10リバウンドを記録したブライアントは「ナゲッツは難しい相手だったけど、僕らはエネルギー十分で、できる限りのプレーはしたと思う。最後まで戦ったエネルギーを誇りに思う」と語っている。

このナゲッツ戦を前にしたメディア対応で、ブライアントは自身の活躍について「チームメートが僕を信頼してくれるおかげで、リラックスして自分のプレーに集中できるのが大きいと思う。だから仲間に感謝している」と語るとともに、「AD(デイビス)はサイドラインでアドバイスをくれる。ベテランたちの助けも大きい」とデイビスへの感謝も忘れなかった。

デイビスの復帰時期はまだ決まっていないが、右足の痛みは治まりつつあり、早ければ2月前半にはコートに戻って来られそうとのこと。今シーズンはデイビスをセンターに固定していたが、彼自身はより柔軟にプレーできるパワーフォワードのポジションを好んでいる。ブライアントがセンターでこれだけ活躍している以上、デイビスの復帰によりブライアントをベンチに戻すだけでなく、2人をフロントコートで組ませることが有力な選択肢になる。2人をセンターで交互に使うにしても、デイビスの負担を減らして戦うメリットは大きい。

いずれにしても、『トレードで何とかする』ことばかり考えるのは間違いで、既存戦力を上手く活用できるのが一番だ。勝てないことでパニックに陥り、進むべき方向を見失っていたレイカーズは、ブライアントのハードワークをきっかけに立ち直った。

「僕らは正しい方向に進んでいる」とブライアントは言う。「シーズン序盤は少し苦戦したけど、ひとまず良い方向に向かったと思う。まだまだやるべきことは多いけど、正しい方向を見いだせばハッピーでいられるよ」