岸本隆一

桶谷ヘッドコーチ「シーズンを通して大成功だと思います」

琉球ゴールデンキングスは『Bリーグチャンピオンシップファイナル』ゲーム3で宇都宮ブレックスに71-73と惜敗。あと一歩のところで2年ぶりの王座奪還を逃した。

ゲーム1を落とした琉球だったが、ゲーム2は後半の猛攻で逆転勝ち。この勢いに乗ってゲーム3では序盤からタフなディフェンスで主導権を握り、3ポイントシュートを効果的に決め、トランジションを出すという理想的な展開で12点リードで前半を終えた。だが、後半に入るとオフェンスが停滞し、さらに第4クォーターにはここまで抑えていた3ポイントシュートを高確率で沈められ、痛恨の逆転負けを喫した。

紙一重の差であったとはいえ、琉球がチャンピオンの座を逃した事実に変わりはない。記録に残るのは優勝チームのみというのは勝負の世界の残酷な現実だ。とはいえ、琉球は4年連続ファイナル進出というリーグ史に残る偉業を達成。天皇杯優勝東アジアスーパーリーグ(EASL)ファイナル4進出という結果も残した。

忘れてならないのは、今シーズンの琉球はシーズン開幕前に複数の主力が移籍し、ルーキーの脇真大を筆頭に若手を抜擢するなど新たなサイクルの1年目でこれらの好成績を残したこと。さらに、レギュラーシーズン終盤にリーグ屈指のクラッチシューターである岸本隆一が、左第5中足骨骨折でチームを離脱した状態でファイナルにたどり着いたことだ。桶谷大ヘッドコーチが試合後「最後に結果は出てほしかったですが、シーズンを通して大成功だと思います」と語ったように、称賛されるべきシーズンを送った。

「間違いなくそれぞれが持ち味を出して役割を担ってくれ、みんなが成長するチームになってくれました。優勝するチームは1つしかなく、悔しさはありますが、本当にみんなよくやってくれました。ここまで来られたのはみんなのおかげです」

岸本隆一

「今の状況を美談にするつもりはまったくないです」

勝負にたらればは禁物だが、ゲーム3の終盤、岸本がいてくれたらと感じずにはいられない場面は何度もあった。そしてそれは、岸本本人が誰よりも感じていたことだった。岸本は次のような思いでチームメートをサポートしていたと明かす。

「わりと(自分とチームを)切り離して考えていたので、強いて言うならファンの皆さんと同じ気持ちでした。僕はコートの中で何ができるかにこだわりを持っているタイプだと思います。どうしてもプレーできないので、ファイナルはファンと同じ気持ちで、何かしらチームの力になれたらという思いで応援していました」

優勝できずに悔しさが残る最後であったが、岸本はチームの成長ぶりに確かな手応えを得たと振り返る。

「今シーズンに限らずですが、厳しいスケジュールで戦っていく中で4年連続ファイナルに来られたことはチームのスタンダードが上がっている証明になったと思います。個人的にはもちろんチャンピオンシップでプレーできなくて悔しいですが、今日も含めみんなから勇気をもらい、心に響くプレーを感じました。望んだ結果ではなかったですが、自分たちの過程は良いものだったと思います」

岸本はさらに言葉を続ける。「ケガでシーズン最後の試合に出られないのは初めてでした。ただ、チームとして例年になくいろいろな経験ができました。イタリア遠征やEASL、バスケットを頑張ることでいろいろな場所に行けるとすごく実感できたシーズンでした。みんなと過ごす時間も多く、最終的にすごく良いチームになりました」

このように岸本はチームメートの奮闘を労ったが、自身がシーズンで最も重要な時期にチームを助けることができなかったことには、悔しさしか残っていない。「本当になんとも言えない気持ちです。プレーできなかったことに対しても何もスッキリしていない。この思いを何かしらの形で今後、自分の力に変えたいです」

周囲は岸本の穴を埋めようとチーム全員がステップアップし、ファイナルまで進出したことを称賛する。だが、彼自身は「正直、今の状況を美談にするつもりはまったくないです」と言い切る。

試合後の囲み取材において、岸本は何度も「消化しきれない」と口にした。新シーズン、リベンジにかける岸本の強い思いは、琉球の王座奪還に向けた何よりの起爆剤となる。