「自分たちがこうやって勝ってきたことを表現できた」

3月15日の天皇杯決勝、琉球ゴールデンキングスは60-49でアルバルク東京に勝利し、節目となる100回目の大会で、チーム初に加え、沖縄県勢としても初の優勝を成し遂げた。

出だしから両チームとも、持ち味である強度の高いディフェンスを継続。ともにオープンシュートを決められないシュートタッチの悪さもあり、前半を終え琉球の31-24とロースコアの展開となる。後半に入っても息詰まる守り合いは続くが、第3クォーター終盤に琉球はセカンドユニットの活躍で流れを引き寄せ、ヴィック・ローの3ポイントシュートでリードを2桁に広げる。その後、A東京も意地を見せ、残り2分で4点差に迫るが、直後のポゼッションで琉球は小野寺祥太が値千金の3ポイントシュートを沈めて勝負あり。9選手が10分以上の出場とタイムシェアを徹底し、最後までインテンシティを落とさなかった琉球が頂点に立った。

琉球は1週間前、マカオで行われたEASL(東アジアスーパーリーグ)のファイナル4で2試合続けて接戦を落とし4位に終わった。さらに帰国後の水曜ゲームで西地区首位対決となった島根スサノオマジック戦もオーバータイムで敗れて痛恨の3連敗。桶谷大ヘッドコーチが、「バイウォーク明けからEASLも戦って満身創痍の中、接戦をモノにできない試合が続き、チームが崩壊してもおかしくないゲーム内容をずっとしていました」と語ったように、心身ともに厳しい状態で天皇杯決勝を迎えた。

だが、この苦境でチームが結束し、琉球らしさの象徴である泥臭い、ハードワークを徹底することで難敵を撃破。桶谷ヘッドコーチは「みんなが我慢強く、精神面で切れずに戦い続けました。やるべきことをみんなで遂行してくれ、天皇杯優勝で報われました」と総括した。

「今のやり方を続けていけば良い結果が得られる」

琉球の象徴である岸本隆一は、24分28秒出場で6得点5リバウンド2アシストを記録。代名詞の3ポイントシュートは不発に終わったが、タフなディフェンスからのターンオーバー誘発で流れを引き寄せ、残り47秒にはドライブから点差を9に広げるダメ押しの得点を挙げるなど要所での活躍が光った。

「すごくうれしいです。なかなか結果が伴わない時期を過ごしていた中、優勝を勝ち取れて自分たちにとって良いきっかけになるゲームになりました」

こう語る岸本は、今日の試合について「ベンチから見ている時は正直、楽しかったです」と、自分たちのやるべきことをコートで表現できていたと続ける。「チームメートみんながポシティブにゴールにアタックしました。それがスコアになり、良い連鎖でディフェンスのインテンシティが上がる。自分たちが、こうやって勝ってきたことを表現できました」

厳しい敗戦が続いていても、岸本は平常心を保っていた。「結果が伴っても伴わなくても、試合は続いていきます。良いところもあれば、改善しなければならないところもあって、改善を繰り返すことで、今リーグ戦では西地区1位になっています。後先を考えずに来たことが、今日は良い方向に行きました。これからも今のやり方を続けていけば、自ずと自分たちにとって良い結果が得られる感覚です」

「かかわってくれた人たちの努力なしにはあり得ない」

琉球は過去2年連続で天皇杯決勝で敗れており、天皇杯はかつてbjリーグ、NBLのリーグ分裂時代には出場する権利を与えられない、出場権はあってもスケジュールの都合で参加を見送らざるを得ない時期があった。bjリーグ時代から琉球一筋、在籍13シーズン目の岸本は、この不遇の時代も経験しており、様々な苦難を経て手にした天皇杯への思いをこう語る。

「歴史がある中、自分はこのチームで長くプレーしていて挑戦する権利すらないところから始まりました。今こういう日を迎えられたのは、これまでかかわってくれた人たちの努力なしにはあり得ないことです。もっとさかのぼると、プロができる前から沖縄のチームで日本一を目指すとなった時、天皇杯は沖縄の人にとって思い入れのある大会だと思います。昔から強い思いを持って積み重ねてきた人たちがいて今日という日を迎えた、いろいろな人が報われる大会になったと思います」

今シーズンの琉球は、一昨年の初のBリーグ制覇を達成したメンバーから複数の主力が去り、新たなサイクルを迎えた。その初年度で、天皇杯優勝という結果を出した。今の琉球はこれまで何度かコアメンバーを変えながら勝ち続けている稀有なチームだ。

それを可能とする秘訣を岸本は、「人が変わっても自分たちの理念、信念を持って前進してきた結果が今日という日に繋がったと思っています」と語る。チームとして確固たるチームカルチャーを作り上げたブレない姿勢と、その大切さを背中で伝える岸本がいる限り、琉球は強豪であり続ける。そして、いよいよシーズンの佳境を迎えるリーグ戦に向けて、4年連続のファイナル進出、王座奪還の偉業への期待が膨らむ勝利となった。