チャウンシー・ビラップス

4年連続でプレーオフ進出を逃すもチームの成長に自信

トレイルブレイザーズは36勝46敗、西カンファレンス11位でシーズンを終えた。レギュラーシーズン最終戦のレイカーズ戦を控えてロッカールームが盛り上がるシーンがあった。チャウンシー・ビラップスの契約延長というニュースが舞い込んだからだ。

メンバーを落としたレイカーズに109-81で完勝した後、選手たちは口々に今シーズンの成長とヘッドコーチへの信頼を語った。アンファニー・サイモンズは「彼は若い選手たちにバスケだけじゃなく自分の人生観や価値観を教えてくれる。チームの成長が彼の契約延長に繋がったのならうれしい」と、デニ・アブディヤは「常に全力で戦うことを求め、彼自身が率先してその姿勢を見せる。僕も同じタイプの人間だから大好きだよ」と言う。

ビラップスは現役時代に5度オールスターに選出され、2004年にはピストンズでNBA優勝とファイナルMVPを勝ち取り、2024年に殿堂入りも果たした元ポイントガード。その経験と勝者のメンタリティをチームに持ち込み、堂々たるリーダーシップを発揮している。

もっとも、2021年オフにヘッドコーチ就任が決まった時には、コート外で起こした過去のトラブルが原因でポートランドのファンから受け入れられず、試合のたびにブーイングを浴びせられた。なおかつチームも過渡期を迎えており、彼が率いた4シーズン連続でプレーオフを逃している。それでもジョー・クローニンGMは、自身の契約延長が決まると真っ先にビラップスの契約延長に動いた。

ブレイザーズは2021年にビラップスを迎え入れた時点でチームオプション付きの5年契約を結んだ。その最終年が来シーズンにあたり、ブレイザーズはそのオプションを行使するとともに新たな2年契約を結び、彼の立場を2028年まで保証した。

ナゲッツでは勝っていてもコーチとGMが対立し、ともに解任の憂き目を見たが、ブレイザーズでは逆のことが起きている。チームは勝てなくても高校時代からの友人であるGMとヘッドコーチが一致団結して、チーム作りを前進させている。「GMとコーチの関係は複雑だ。特にチームが厳しい状況にある時はね」とクローニンGMは語る。「しかし、我々は困難な時期を一緒に乗り越えた。今後もそれを強みにしていきたい」

「成長しないコーチの下で選手が成長するわけがない」

「残留できて率直にうれしい。そしてジョーに感謝している。僕たちは文字通り一体となってチームの再建に取り組んできた」とビラップスは言う。この2人のやり方は少々独特だった。再建中のチームは、クーパー・フラッグを始め逸材が揃う今年のNBAドラフトを見据えて積極的に黒星を積み重ねていったが、ブレイザーズは決してタンクにいかなかった。それがロッタリーの確率は良くなるが、それ以上にチームへの悪影響が大きいと判断したからだ。

それよりもビラップスは『正しい文化』をチームに植え付けることを優先し、レギュラーシーズン残り3試合までプレーイン進出を争った。その結果、シーズン前半の13勝28敗から後半には23勝18敗と上向いた。多くの連勝と連敗があり、好不調の波は大きかったが、現時点ではそれでいいとビラップスは考えている。

「何をすれば勝てるのかを選手たちが本当の意味で理解できていた。それはディフェンスで激しくプレッシャーをかけることであり、オフェンスリバウンドであり、チームでボールをシェアすること。その重要性をずっと説いてきたが、ようやく選手たちが『これをやれば勝てる』と本当の意味で理解するようになった。そのおかげで今までよりずっと貪欲になり、集中してプレーしている。それが今シーズン最大の収穫だ」

「どんな戦い方をするか、どれだけ本気でやるかを説く時期は終わった。もちろん今後も厳しい時期はあるだろうが、今までとは違うアプローチで向き合うことができる。文化が根付いた今、これからはスキルとバスケIQを磨く。今シーズンを振り返るとディフェンスは十分だったがシュート力が足りなかった。バスケIQは試合ごとに向上したけど、もっと大幅に改善したい。選手たちは夏の間に必死になって練習するだろうから、次に会うのが楽しみだよ」

ビラップスの要求は高いが、彼はそのレベルを自分にも課している。「私ももっと勉強する。試合終盤に相手を上回るプレーを組み立てられるコーチになりたいんだ。今シーズンはそこそこ上手くやったと思うが、やり直したい場面も多かった。そのすべてを見直し、選手たちにもっと多くの改善のアイデアを与えられるコーチになりたい。やり方そのものを変えるつもりはないが、そのレベルをもう一段階引き上げる。成長しないコーチの下で、選手が成長するわけがないんだからね」

ビラップスのブレイザーズは4シーズン連続でプレーオフを逃したが、ポジティブで意欲的な気持ちでシーズンを終えた。ビラップスは最後にこう語った。「チーム作りはジョーに一任している。私はコーチングに集中するよ。このチームは大きな飛躍のほんの少し手前まで来ていると思う。その一歩を踏み出すのが楽しみだ」